《地域貢献の取り組み特集》一本の糸から 40年の歩み ~今こそ 繋がり~ 第9回

第9回は地域貢献の取り組み特集~「白鷹天蚕紬」と「銀座の柳染」

一反のきものが、地域の風土や文化を守り、その土地に暮らす人々の誇りとなることがあります。今回は、山形県白鷹町の「天蚕紬」と「銀座の柳染」の作り手の皆さんからのメッセージをお届けします。

しらたか天蚕の会(白鷹天蚕紬)
山崎和樹さん(草木染)
丹波布技術保存会技術者協会(丹波布)
久保原由佳理さん(草木染紬織)
香月美穂子さん(草木染浮織)
西山英子さん(草木染浮織)


「しらたか天蚕の会」の皆様のメッセージ

「100%白鷹産の天蚕のきものを作る!」
2011年、山形県白鷹町の皆さんの熱意に突き動かされ、天蚕紬の完成は共通の夢となりました。
あれから9年。2020年2月には、第4作目「創業40周年記念作品」として織り上がりました。メッセージとともに「絹のダイヤモンド」と呼ばれる、眩いばかりの作品をご覧ください。

平成元年頃から始まった白鷹町の天蚕紬の取り組みは、天蚕の会が収穫した繭を町内の織物組合に買い取ってもらい、織物組合が一反に織り上げて売り出していたが、かなり高価なものでもあり、なかなか売れず、圃場(ほじょう)を縮小、生産量も激減、存続の方法を模索していた。作ったものが売れないという現実に、「必要とされていないのか」、「作る価値はあるのか」と、平成23年春、会存亡の危機を迎えていた。東日本大震災が起こった春だった。私は、その春から町の産業振興課観光交流推進係、観光と物産の担当となった。

私と銀座もとじの泉二社長との出会いは、平成23年8月、猛暑の日だった。「今まで引継いできた技術をここでなくしてよいのか。やめたくない。」という会員の本音を受け、全国の中には、天蚕紬を欲しい方が必ずいるはず、私たちはその方と出会えるすべがない、それを泉二社長にご相談に伺った。全く面識もなく、電話でお会いする約束を頂いた。現状はお話ししたものの「オール白鷹の一反を買っていただきたい」と、唐突にお願いした自分は、まったくもって未熟だったとしか言いようがない。まだ商品もできていない状態での懇願だった。

しかし、泉二社長は、「買いましょう。良いものを作ってください」と即答してくださった。あの時のことを思い出すと、安堵と緊張が蘇り今でも、涙がこぼれそうになる。
「白鷹産にこだわった商品づくりに協力したい。白鷹ならではの一反を作りましょう。売れる商品づくりをしましょう」とおっしゃった。

それまで、生産量は、2、3年で一反になる程度まで落ち込んでいたのが、翌24年度には、一反分の繭が収穫できたのである。生産量の激増の裏には会員の様々な研究、手厚い見回り、そして何より、「一反を作るぞ!泉二社長の期待に応えたい!」という会員全員の意気込みがあった。

平成25年6月、「銀座もとじ」和織店舗で白鷹天蚕紬発表展示会を開催していただき、一年がかりの一反を無事納品した。
飼育担当だけだった「しらたか天蚕の会」は、「ものづくり集団」になって初めて、織り上げた天蚕紬を見ることができた。あの光沢と色に魅了された。技術を未来に残す取り組みは、作り手だけでは到底続かない。作り手とお召し下さるお客様をつなぐ架け橋となる泉二社長との出会いが本当の再起となった。 今年早春、40周年記念展作品として4反目を納品した。

泉二社長からかけていただいた言葉の数々は、会の再起のエネルギーであった。事務局という立場の私は、非生産的な仕事しかできないが、このプロジェクトに立ち会わせていただいたことは、白鷹町役場職員人生の中でも忘れられない出来事である。
私にとって今思い出しても、熱いものがこみあげてくるほど感激した瞬間の繰り返しだった。

令和2年5月26日
一般社団法人白鷹町観光協会 専務理事兼事務局長 芳賀敦子

しらたか天蚕の会の皆様。前列右端が芳賀敦子さん。
澄んだ緑色の天蚕の繭。織り上がる反物もほんのり色づいた仕上がりに。

「しらたか天蚕の会」のご紹介ページはこちら

第4作目となる40周年記念作品はこちら


「銀座の柳染」作り手の皆様のメッセージ

銀座のシンボル・銀座の柳の歴史と文化を伝えるものづくりがしたいと、銀座もとじでは1993年より「銀座の柳染」に取り組んでいます。
銀座の柳染で作品づくりをしていただいた皆様からのメッセージをお届けします。

2016年、「銀座もとじ」で開催された「山崎青樹の染織世界」展の会期中に、多くのお客様にお会いすることができました。泉二社長や二代目の啓太様、企画の續様を始めとして、銀座もとじの皆様の着物文化の継承と発展への思いの中で、教養とセンスのあるお客様とお話したことで「和」を感じました。

「和」とは、日本人が自然と共生してきた長い歴史が育んだ文化だと思います。季節感を俊敏に捉える日本人の美意識が、着物文化に反映されていることをお客様と共感できました。着物は「和」であり、美意識の集積だと思います。草木染も四季折々に変化する色彩を糸や布に映し出すので、「和」の継承だと思います。お客様に、草木染を三代続けていることを高く評価して頂き大変ありがたく思いました。

「銀座もとじ」は、作家とお客様との繋がりの拠点であり、着物文化を基にして日本の「和」をさらに広める場と思います。このお客様との繋がりの場に、参加できたことに深く感謝しております。

令和2年4月18日
草木染研究所柿生工房主宰 山崎和樹

山崎和樹さんの工房にて。左から山崎和樹さん、外舘和子さん、店主・泉二。
40周年記念作品では、枝垂れ柳の型紙を用いて柳の枝葉を煎じた顔料等で染色。

山崎和樹さんのご紹介ページはこちら


私ども「丹波布技術保存会技術者協会」(以下、技術者協会)は、兵庫県丹波市という里山や田畑に囲まれた地域で活動しています。江戸の末期から農家の主婦の副業として作られていた「丹波布」は、近代化の波に押されて一時は衰退しますが、昭和の初期に京都の朝市で柳宗悦の目に留まったことから復興運動へとつながり、現在に至ります。

一度途絶えてしまった技術を復興させるには、多大なエネルギーや人と人の繋がりが必要だったのではないかと想像します。そして想像を超えた様々な物語があったと思います。どんな風に技術を再興し、作り手たちと布を作り上げたのか、そのときにはどんな感動があったのか、そんなことを考えると、当時はただ布を作るのではなく、次の世代に伝えていく「技術」も作り上げられたのだということに気づかされます。そんな大切な技術を伝承された私たち織り手は、先人の尽力や復興当時の景色に思いをはせながら、伝えられた技術を大切にそして現代に生きる布を制作しています。

丹波布の制作過程は、糸を紡ぐところから始まります。反物一本を織りあげるのに数か月を要する「丹波布」は量産とは程遠いところにあります。制作環境もかつての作り手と同様、日々の生活の中で制作されています。それぞれの丹波布技術認定者が織りあげた布を集め、展示会や業者の方に見ていただくという活動を細々と続けています。

そんな私たちの活動に、大きなニュースが飛び込んできたのが2年前。なんとあの銀座もとじさんで丹波布を取り上げていただけるとの事。喜びと緊張が私たちの心の中を行ったり来たりしました。もとじさんの展示会に向けて制作が始まり、納品した数はいつもの1.5倍ほど。今まででおそらく丹波布史上一番たくさんの丹波布が集まりました。

展示会場は丹波からは遠方となるため、多くの技術認定者は行けませんでしたが、トーク会への参加と付き添い者等数名が展示会場を見ることができました。あの銀座もとじさんの店内に素晴らしく丹波布がディスプレイされているのを見て、大量の写真を仲間たちに送り、喜びを共有したことを思い出します。そして、トーク会ではたくさんの方にご来場いただき、あたたかい反応をいただきました。また糸紡ぎの実演や在廊する中で、たくさんのお客様とお話ができ、興味を持って見てくださっていることを実感し、大きな喜びを感じました。

普段はそれぞれの工房で制作し、直接使い手に会う機会は少ないのですが、もとじさんでの展示会を通し、多くのお客様と直接お話しできたことは、今後の制作の大きなそして嬉しい励みになりました。

丹波の片田舎で糸や布に向き合う日々ですが、展示会の時の喜びを思い出しながら、またお客様にお会いできることを楽しみに、皆で力を合わせてより良い伝承、より良い丹波布の制作に励みたいと思っております。

令和2年6月10日
丹波布技術保存会技術者協会

ざっくりとした風合と素朴な美しさから、柳宗悦氏に「静かな渋い布」と称され愛されたと言われます。
40周年記念作品として、銀座の柳と藍で糸染めした角帯も制作。

「丹波布技術保存会技術者協会」のご紹介ページはこちら

丹波布の商品一覧はこちら


一枚の布ができるまでには、繭を育てることから始まり、たくさんの方々のたくさんの工程があります。またその布が着物や帯として仕立て上がり、装いの日までも長い道のりです。もとじ社長様がいつも仰っている、一本の糸から着る人へ。たくさんの方々のバトンリレーにより初めて身に纏うことができるのだと、改めて感じています。

私の仕事はその内の生糸から。糸を染め、布を織るところを担っており、一番着る人に近いバトンを託されています。しかし、普段は私の手元からから旅立っていった布がどのように、どんな方が纏ってくださっているのか知らずにいます。想像する他ありません。

2017年、2回目の個展の際、何人かのお客様が素敵な着こなしで帯を締めて来てくださいました。私の染め織ったあの布はこのようになるのかと。作り手にとって、布の晴れ姿を見るようで、何とも嬉しく、その後のものづくりの原動力となりました。

自分のために、誰かのために、着こなしを愉しむ文化は心に活力を与えてくれます。一日でも早くそのような生活に戻れるよう、今は祈るばかりです。

今できることを大切に。

令和2年4月19日
久保原由佳理

自然豊かな長野県・安曇野での作業風景。糸はすべて草木染料で染めています。
40周年記念作品は、銀座の柳を用いて制作。天蚕糸も入っており艶やかな表情。

久保原由佳理さんのご紹介ページはこちら

久保原由佳理さんの商品はこちら


皆様、いかがお過ごしでしょうか。

私は普段からSNSを活用しており、お客様との繋がりを実感した出来事を一つ。インスタグラムやフェイスブックの中に、私の制作した作品を身に纏って素敵に登場してくださった方がいらっしゃいました。

身近な方以外に拝見すると嬉しさが倍増です。それもご主人様がお一人でお買い物をしてくださったとか。こんな時代だからこそ大変嬉しい出来事でした。素敵に身に着けてくださっているな、良かった!また頑張ろう!と思います。

もう一つは「柳染めについて」です。

銀座もとじさまとの出会いは、某婦人雑誌に掲載されていた「柳染め」の記事を拝見して、出張帰りにお店を覗いた時がはじまりでした。地元の小学校で柳染めの授業を20年近く続けていらっしゃる、なんて素敵なことでしょう!と驚いたものです。

昨春、40周年記念作品展に出品の依頼を受け、「銀座の柳」をお送り頂き、糸を染め帯を織らせていただきましたが、その時の私は夢にも思っていませんでした。しみじみと御社との繋がりを実感し感謝申し上げます。何方のへお嫁入りしたのでしょう。

外出自粛の日々、今も織り続けています。素敵な出会いがありますように。

令和2年5月24日
香月美穂子

銀座の柳を用いた40周年記念作品。
媒染材を変化させることで、銀座の柳から様々な色を染め出しています。

香月美穂子さんのご紹介ページはこちら


私が初めて泉二様のお店に伺ったのは、日本伝統工芸染織展、初入選の際に上京した時です。あの時は上京するのも十数年ぶり、初の憧れの訪店は感動と感動以上の緊張感でいっぱいだった事を思い出します。

しかし、不思議と私には敷居の高い銀座のお店が温かく感じられ、泉二社長様とスタッフ皆様のあたたかな心遣いのお陰だったと思います。翌日、もう一度、染織展を見て帰ろうと思い会場に行った時、偶然にも泉二社長様にお会いして、私の作品を見ていただくことができました。私の作品が銀座の店頭でご紹介される、夢のような出来事、こつこつと織り続けてきて良かったと思いました。更にお客様へと繋げていただき、ご縁に感慨深い思いです。初訪店のあの年は飛躍の忘れられない年となりました。

40周年記念展制作の染料として銀座の柳を我が家へ届けていただきました。九州で銀座の柳を染めるなんて なかなか機会の無い事です。柳の緑葉染は、淡い黄みと灰みを含んだ薄緑色、鉄媒染のグレーとそれに白い色で織ると、染め色から透明感を感じる織り色へと変化、柳染めはとても新鮮でした。
人と人、心と心の繋がり、感謝申し上げます。

令和2年4月17日
西山英子

銀座の柳を用いた40周年記念作品。糸染めは、香月美穂子さんと一緒に行われたそう。
グラデーションの上に浮き織が繊細な光を放ちます。

西山英子さんのご紹介ページはこちら


これまでに届いたメッセージはこちら

それぞれの作り手のお名前をクリックしていただくと、メッセージをご覧いただけます。

第8回
切畑健さん(京都国立博物館名誉館員)>>
福本潮子さん(藍染)>>
上原美智子さん(あけずば織)>>
築城則子さん(小倉織)>>
樹田紅陽さん(京繍
)>>
坂田康太郎さん(オペラサロン講師)>>

第7回
岡本隆志さん(型絵染)>>
服部綴工房さん(綴れ織)>>
四ツ井健さん(友禅)>>
滋賀喜織物さん(西陣織)>>
下井伸彦さん(下井紬)>>

第6回
吉村紅花さん(文化学園大学)>>
菊池宏美さん(江戸小紋)>>
益田勇吉さん(大島紬)>>
石川浩さん、谷田部尅詮さん、増田康治さん(養蚕農家)>>
碓氷製糸株式会社・蚕絲館・南久ちりめん株式会社(製糸・製織)>>
田中敦子さん(工芸ライター)>>

第5回
髙橋寛さん(東京友禅)>>             
平山八重子さん(草木染紬織)>> 
生駒暉夫さん(友禅)>> 
松原伸生さん(長板中形)>> 
大髙美由紀さん(紬織)>>       
藍田愛郎さん(江戸小紋)>> 

第4回
森康次さん(日本刺繍)>>
湯本エリ子さん(友禅)>>
矢野まり子さん(草木染紬織)>>
犬飼千賀子さん(友禅)>>
前田紬工芸さん(大島紬)>>
奥順株式会社さん(結城紬)>>

第3回
荒川眞理子さん(型絵染)>>
松浦弘美さん(ほら絽織)>>
須賀恭子さん(草木染紬織)>>
澤田麻衣子さん(型絵染)>>
中野史朗さん(和更紗)>>
和小物さくらさん(小物)>>
清水晶子さん(帽子デザイナー) >>

第2回
五代 田畑喜八さん(友禅)>>
海老ヶ瀬順子さん(穀織)>>
織楽浅野 浅野裕尚さん(西陣織)>>
藤山千春さん・藤山優子さん(吉野間道)>>
ATENARI角元弥子さん(蒔絵) >>

第1回
外舘和子さん(多摩美術大学教授)>>
小倉淳史さん(絞り染め/辻が花)>>
山岸幸一さん(草木染紬織)>>
久米島紬事業協同組合さん(久米島紬)>>
伊藤裕子さん(組紐師)>>

第8回目までのメッセージ一覧はこちら

メッセージを寄せていただいた作り手の皆様の作品はこちらから