京都市北部に工房を構える、日本工芸会正会員 大村幸太郎さんの蝋吹雪の染着尺のご紹介です。
熱い蝋(ロウ)を生地に吹き付けて、まるで雪がパラパラと舞い降りた跡のように仕上がる染色技法「蝋吹雪染」。
通常は生地の表側に蝋を付け、表側から染色しますが、それですとはっきりとした表情になるため、
こちらの着尺は、生地の裏側に蝋を吹きつけて、染色は表側からほどこすことで、奥行深い、品の良い濃淡を表現されたそうです。
独特の陰影のあるニュアンスは、蝋の温度差と、三段階による染め重ねによるもの。
溶けた熱い蝋を生地に吹き付ける時に、落ちるまでに冷えたり、暖かいままだったりする、その温度差によって自然に粒が大小となり布に表れます。
染める時は三段階。白生地に蝋を吹き付け、薄水色を染めた後に再び蝋を吹き付け、濃青色を染めて、最後に蝋を落として完成させることで、この美しい佇まいが生み出されています。
また、生地も大変凝っていて、菱に十字の紋意匠地を使用しています。紋意匠と蝋吹雪の妙がなんともお洒落で、ドレープに浮かぶ立体性が美しく、高級感のある着姿を楽しめます。
無地でも、柄でもない、その中間となるニュアンスほどの柄行は、コーディネート力も抜群です。独特の陰影にムードがあり、大人の色気を感じさせます。
普段使いはもちろんのこと、観劇や会食、茶席、家族のお祝い、夜のバーなど、紬やお召よりもドレッシーに着こなしたいシーンにもおすすめです。
羽織にも最適です。
一瞬が生み出す、一粒の軌跡。
蝋吹雪染ならではの上質な奥行きをご堪能ください。