日本刺繍 坂野慶子 初個展
会期:2026年10月23日(金)~25日(日)
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この度は、十二年にわたる歩みの中で生まれた作品を発表する機会を賜り、深く感謝しております。容易ではないからこそ、一針一針を丁寧に、美しく刺す大切さを学びました。先生方へのご恩を胸に、技法を探り、さまざまな歴史や文化にふれながら培った感性を重ね、心に響く「繍」を求めて制作しています。絹糸の豊かな色彩と、一針ごとに生まれる趣を感じていただけましたら幸いです。
坂野慶子
日本刺繍作家 坂野慶子さんの九寸帯作品のご紹介です。
坂野慶子さんは、1975年石川県加賀市生まれ、滋賀県育ち。京都市立芸術大学にて「織」を専攻し、卒業後はアパレルのコレクションブランドなどで洋装の刺繍デザインと制作に12年間従事。その後金沢へ移住。2015年より加賀刺繍の工房で8年間修行。2024年に日本刺繍作家として独立されました。
モードの世界で培われた感性と、日本刺繍の伝統技法。
その両方を自らの経験として深く体得した坂野さんだからこそ生まれる日本刺繍は、伝統を受け継ぎながら、現代の感覚が息づいています。
工房名は「蘂工房(しべこうぼう)」。その由来は、花の中心の「蘂(しべ)を入れる」という行為の時にあらわれる一針に集中する心を常にもち制作したいというもので、ご自身でもいつもこのことを意識するようにと名付けられました。
坂野さんの刺繍の魅力は、配色への熱い想い。そして一針一針が大変美しく均一であること。今の色彩感覚、時代感覚を世の中から感じとるのが若い時から特技で、地色とそれにぴったりと合う刺繍色のバランスを何色も見比べながら納得するまで追及し、最も共鳴する配色で表現されています。
図案のインスピレーションは、旅先や自然、クラシカルなものは古裂など、強く感動したものから。その中でも、きっとよくなると感じられたものだけを、さらにはご自身でも着物をお召しになる坂野さんだからこそ自分が着たいと思える境地のものだけを図案として選び、作品へと導かれています。
2026年9月半ば、初個展に向けて坂野さんの工房「蘂工房」を訪ね、お話を伺いました。
刺繍との出会いから、モードの世界で培った美意識、加賀刺繍での8年間の修行、そして一針に込める思い。これまでの歩みと、ものづくりへの思いについて、ぜひこちらをお読みください。
>>【インタビュー】坂野慶子さんに聞く 刺繍との出会い、伝統との出会い、そしてこれから
こちらは【令和8年度 第66回石川の伝統工芸展 入選作品】、さらには【新人賞】を受賞された特別な作品でございます。
工芸展出品作品は、作家の思い入れが別格です。坂野慶子さん入魂の逸品、独特の世界観を存分にご堪能いただける作品です。
>>日本工芸会ホームページでも入選作品として掲載されています(外部リンク)
【坂野慶子さんからのコメント】
■九寸名古屋帯「イタリア壁画文」「西ノ淡景」
2026年石川の伝統工芸展で新人賞を受賞した作品。イタリアの古都アッシジのフレスコ壁画を題材に、遠く離れた異国への旅で心に沁みた景色などを後になり朧げになりながら回想するイメージでつくりました。紬地の「イタリア壁画文」(別作品)よりもモチーフを増やし、糸の太細や色暈しの工夫を多く凝らすことで心情風景を表現しています。フレスコは漆喰の壁面に描くもの、漆喰は石灰ということから本当は「石の花」というタイトルがぴったりだと思いましたが、説明がないと理解されないので「西ノ淡景」というタイトルで出品しました。
繍技:まついぬい、ぬいきり、刺しぬい、暈しぬい、菅ぬい
配色:青濃淡、薄ねず、極わずかに銀糸
素材:塩瀬