こちらは、久留米絣の産地組合が合格品として世に出されている久留米絣作品です。
久留米絣共同組合の合格証紙、久留米絣技術保存会の検査之証、重要無形文化財の証紙が貼られています。
「城」と題された、大変個性的なモチーフの作品です。城柄に見られる鮮やかな白と、深い藍のコントラストが美しく、久留米絣ならではの彩りの世界観を存分にご堪能いただけます。藍染は故・松枝哲也さん、手括りと織りは奥様の松枝小夜子さんによる、共同制作の大変希少な作品となっています。
作品名:「城」
手括:松枝小夜子
藍染:松枝哲也
手織:松枝小夜子
※組合からの作品は本名の「松枝哲也」、組合からではない作家作品は「松枝哲哉」の名で出されています
久留米絣は1957 年に、木綿では初めて、国の重要無形文化財として指定されました。
<指定条件>
1、手括りによる絣糸を使用すること。
2、純正天然藍で染めること。
3、なげひの手織り織機で織ること。
この方法で製作し、検査に合格したものが、「重要無形文化財」の証紙を貼られ、市場に出ます。厳しい条件を満たして作られる久留米絣は、非常に限られた数しか織られない、貴重なものです。
「松枝家」について
「松枝家」は、150年間にわたって絵絣の技を継承する久留米絣の名家。
久留米絣は、八女地方の小柄な男絣と、久留米市南部の大柄な絵絣の2種に大別されますが、松枝家に伝わるのは後者の「大柄な絵絣」です。
筑後の自然風景、風や雨や光や影、そして宇宙にまで思いを馳せ、絣紋様に意匠化して写し取ります。豊かな詩情あふれる世界観を藍と白のコントラストや藍の濃淡染めで美しい諧調を表現した作品は、見る者に深い感動を呼び覚ます力強さがあります。
「松枝家の久留米絣」につきましてはぜひこちらをお読みください。
著者:外舘和子(多摩美術大学教授)
>>【和織物語】「松枝家の久留米絣―藍と光の探求と展開」
松枝小夜子さんについて
1956年、熊本市生まれ。芸術大学卒業後、重要無形文化財「紬縞織・絣織」保持者の宗廣力三氏の作品に出会い染織の道に進むことを決意。宗廣氏が主催する郡上工芸研究所での修行を経て、1985年、松枝家の5代目当主・松枝哲哉さんとの結婚を機に久留米絣の道へ。久留米絣の世界に「女性作家」という在り方を示してきた先駆的な一人です。1988年には日本伝統工芸展初入選を果たされ、1997年に日本工芸会正会員に認定。
2020年に哲哉さんが永眠された後、ご子息・松枝崇弘さんとともに、工房「藍生庵(らんせいあん)」にて制作活動を続けられています。
哲哉さんと同様、作品のテーマは「光」と仰いますが、哲哉さんが宇宙や夜空の光をイメージさせるのに対し、小夜子さんは昼間の日差しの光や、風がそよぐリズムを着物に映す傾向があり、大らかな構成を感じさせます。
現在、小夜子さんは「重要無形文化財久留米絣技術保持者会」の副会長であり、後進の指導も精力的にされています。
松枝哲哉(哲也)さんについて
1955年、福岡県生まれ。久留米絣の名家・松枝家の5代目当主。人間国宝であった祖父の松枝玉記さんに中学時代より藍染めを習い、後に手織り・手括りを学び、24歳の時には重要無形文化財久留米絣技術伝承者(手括り・藍染め・手織)に認定。詩情あふれる絵絣模様を得意とされ、29歳の時に日本伝統工芸展初入選、以降多数入選。2020年、第67回日本伝統工芸展で文部科学大臣賞を受賞、同年7月にご逝去。
《着用季節について》
久留米絣は単衣仕立てで楽しまれることが一般的です。着用季節は、帯次第で幅広く、暖かさのある袷から単衣の季節、4-6月、9-11月頃を中心に長くお召しいただけます。
【作家産地】「松枝哲哉」ご紹介
【記事一覧】「松枝家と銀座もとじ 出会いからの歩み」
《3分で解説》「松枝家の久留米絣」5つの見どころ
【和織物語】「松枝家の久留米絣 - 継承と展開」
【メッセージ】2020年 弊店40周年へ向けて
【メッセージ】2022年「今、父との記憶に立ち返り」松枝崇弘
【YouTube動画公開中】松枝家の久留米絣の魅力