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今、父との記憶に立ち返り 松枝崇弘さん

写真左より松枝崇弘さん、師と仰ぐ森口邦彦先生。 2022年2月に開催された「二大巨匠展」に来場され、合作「雪景」を前に記念撮影。

2022年3月18日(金)~21日(祝・月)に開催される「松枝家の久留米絣 ~伝統と伝承の道~」展に向けて、松枝崇弘さんが現在の思いを届けてくださいました。

今、父との記憶に立ち返り

 2020年1月、父の病状を知り、数年中にはと思っていた「久留米絣の道」へ入るには今しかないと決意し、4月、いたたまれない思いでこの道に入りました。父は限られた面会時間のすべてと病室からのビデオ通話で、亡くなるまでの4か月間、決してつらい表情を見せることなく、その命いっぱいに技術・思いを伝えてくれました。家業に戻ってからのこの2年間は毎日が新しい学び。藍の管理や染めに悩む日々ですが、小さい頃から父とともに遊びの中で実体験してきたものは大きく、迷ったときには常に小さい頃の父との記憶に立ち返ります。

試行錯誤の2年間は、西部伝統工芸展での初入選、第68回日本伝統工芸展で初の奨励賞受賞となりました。また、もとじ様から繋いで頂いた森口邦彦先生との出会いには、とても濃密な学びの時間を頂戴しています。私自身、大学では経済学部に所属し、美術系の勉強は家業につくまで、具体的に学んだことはありませんでした。しかし、森口邦彦先生から「デザインとは何か?」といった基礎からご指導を戴いておりますことは、デザインの真に広く深い意味の学びであり、日々の制作へのエネルギーを戴いているように感じます。

松枝家ではこれまで、作り手それぞれの人柄が感じられるデザインや色合いといった絣への飽くなき追及を重ねてまいりました。私も、技術とデザインの研鑽に努め、松枝玉記・哲哉・小夜子と5代にわたって守り継がれてきた久留米絣への顕彰と、先人への敬意を払い、常に夢を描き、久留米絣のデザインの基本にも学びつつ、定石に捕らわれることなく挑戦して参りたいと願っております。皆様方のお力添えを賜りますと幸甚です。

2022年3月 松枝崇弘

 

松枝家の久留米絣~伝統と伝承の道~

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