こちらは【第59回日本伝統工芸染織展(令和7年度) 入選作品】です。
工芸展出品作品は、作家の思い入れが別格です。菊池宏美さんの入魂の逸品、独特の世界観を存分にご堪能いただける作品です。
>>日本工芸会ホームページでも入選作品として掲載されています(外部リンク)
江戸小紋師 菊池宏美さんの江戸小紋作品、さらに入選作の極希少なお品でございます。
江戸小紋の第一人者・故・藍田正雄氏に師事後、独立。現在は個人工房「よし菊」にて新たな江戸小紋の世界を広げ、伝統工芸展で数々の入選を重ねる実力派。藍田氏の「今のものを作れ」「平成の江戸小紋を」という言葉を胸に、 今の時代に映える江戸小紋の創作に果敢に取り組んでいらっしゃいます。 大学を卒業後、大手電機メーカーに入社し第一線で活躍していたある日、藍田正雄氏の作品に出会って運命を感じ、すべてを投げ打って弟子入りを願いました。約13年間の修行の後に師の言葉に後押しされて独立、5年後の2016年には銀座もとじでの初個展を開催。型紙の選び方や扱い方、染のトーンと色使い、生地との組み合わせなど、昔ながらの伊勢型紙の紋様をベースにしながらも、創造性あふれる新しい江戸小紋を作られています。
こちらのお柄は「藤華縞」と題された意匠。藤の花房を細やかに連ね、少し間隔をあけて表現することで縞が浮かぶ、静かな華やぎのある本当に美しい柄行です。お色目は上品なグレーで、端正な美しさを引き立てます。
工芸展出品用に選ばれた、菊池宏美さんにとっても特別な想いのあられる柄行です。入選作となられた特別な一枚を、ぜひこの機会にご堪能ください。
菊池宏美さんについてはぜひこちらをご覧ください
群馬県伊勢崎市にある菊池さんの工房「よし菊」を訪問。師・藍田正雄さんから譲り受けた宝物であるモミの木の長板や、制作の様子をご紹介しています。
>>工房見学に行ってきました
【作家産地】「菊池宏美」記事/作品一覧
江戸小紋について
江戸小紋は江戸時代に武士の礼装である裃(かみしも)から発達したものです。参勤交代で江戸に集まる各藩の武士たちが自分たちの藩を象徴するため特定の柄を定めて各藩の「定め柄」としました。
江戸幕府が細かい柄の小紋を武士の公服としたこと、また華美な着物を禁止した「奢侈禁止令」が断続的に発令されたこともあり、各藩が競って微細な柄を求めるようになり、伊勢型紙の彫師、染める小紋師ともに、職人たちの手技は限界への挑戦ともいえるほど高度で卓越したものとなりました。微細な小紋柄を他の小紋と区別して、1955年に重要無形文化財保持者として小紋師・小宮康助氏を指定する際に、 他の小紋と区別をするために「江戸小紋」と呼ばれるようになりました。
【作家産地】「江戸小紋」
彫刻技法4種類について
「突彫り/錐彫り/道具彫り/引(縞)彫り」
【店主・泉二啓太の産地めぐり】伊勢型紙のふるさと、三重県・白子町へ
江戸時代 各藩ごとの「定め小紋」について
【男のきものWEB講座】Vol.35 江戸小紋・武家の裃から発展した技術の粋