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「究極の合作」誕生秘話~二大巨匠展へ向けて 店主と二代目による新春対談

展示会へ向けて
銀座もとじ店主 泉二弘明 二代目 泉二啓太

2022年2月19日(土)〜27日(日)、銀座もとじにて「二大巨匠展
競演する織と染―北村武資と森口邦彦」を開催します。

2年前、北村武資先生からの「君の次の夢は?」という問いに、「お二人の二人展を開催することです」と即答したあの日のやりとりが、今こうして現実となり、作品をご覧いただく日を待つばかりとなりました。
まさに「夢の実現」となる本展示会へ向けて、語り尽くせない思いをこの場をお借りしてお話させていただきました。

北村武資 作品一覧はこちら

人間国宝・北村武資が織った布に
人間国宝・森口邦彦が染める
「究極の合作」誕生秘話

店主 泉二弘明(以下 泉二):いよいよですね。今でも、夢じゃないかという気持ちです。

二代目 泉二啓太(以下 啓太):きっかけは2年ほど前でしたよね。森口先生の初個展開催中に、北村先生が泊りがけで応援にいらして、皆で会食をした時に・・

泉二:北村先生に「君の次の夢は?」と聞かれて「お二人の二人展を開催することです」と答えたら、「そういえば二人でやったことはないね」と盛り上がって、なんと北村先生が「自分が織って森口さんが染めるのはどうか」と仰られた。

啓太:社長はすかさず「ありがとうございます!」と頭を下げていました。

泉二:そのような畏れ多いことは私からはとてもお願いできませんから。このチャンスを逃しては!!と思ったんです。
銀座もとじ 男のきものは、今年20年の節目を迎えます。和装の新たな世界を広げていこうとする中で、北村先生には初めて男の角帯を制作いただいたり、広幅の着尺を織っていただいたり、数々の挑戦をしていただきましたが、今回のこの前人未踏のコラボレーションにはいちばん度肝を抜かれました。


店主泉二が手にしているのが羅の角帯

それからほどなくして、北村先生の京都の工房へ伺った時に「こういう風に織ってみようと思う」と、今回の作品の試作を見せてくださいました。それは、経錦の技法を用いて織られた、見たこともない美しい織り生地でした。どうすれば森口先生の友禅が映えるか、毎日悩んで考え抜かれたのだろう、きっと京都に戻られてすぐに動いてくださったのだろう、と思い感激しました。

啓太:初めて目にする経錦の試作を拝見し、社長は感極まっていました。

泉二:その後しばらくして、北村先生から「織りあがったから、森口さんに見せてほしい」とご連絡があり、反物というよりも、森口先生への「思い」を託されたように感じました。経錦の反物を受け取った森口先生もまた、「どうしたらこの美しい織りを活かせるのか」ととても苦悩されたそうです。染め上がった作品は、「北村先生の織り」を大事にしたいという森口先生の敬愛の念が満ちていましたね。

啓太:僕はこの2年間、森口先生とたくさんの時間を過ごさせていただいて、ちょっと平常心では見ることができなかったかもしれません。京都国立近代美術館※で見た膨大な量のスケッチや友禅作品、アートピース、先生の佇まい、言葉の一つひとつが蘇りました。

※「人間国宝 森口邦彦 友禅/デザイン―交差する自由へのまなざし」展(2020年10月)

泉二:この着物には、お二人が切磋琢磨してこられた54年間が詰まっています。日本染織史のひとつの到達点として、日本中の方に見ていただかなければ、という使命感を感じています。

北村武資先生と歩んだ18年と男物の創作

北村武資先生と銀座もとじ店主泉二弘明
2017年トーク会にて。左から店主・泉二、北村武資先生、多摩美術大学教授・外舘和子先生。

啓太:僕がヨーロッパから戻り銀座もとじの一員になった時は、すでに北村先生の個展は数回開催させていただいていました。

泉二:北村先生の初個展は2004年、今までに5回の個展を開催させていただきました。毎回ぎゃらりートークでお話いただいて、何度目かには「もう、そろそろいいでしょう」と仰るところを「いえいえ、お客様は“今の”北村先生のお話が聞きたいのです」と頼み込んで来ていただきました。
最初は女性の帯のみの取り扱いだったのですが、徐々に男性ものも作っていただくようになりました。

啓太:北村先生の角帯は、ありがたいことに銀座もとじで制作いただいたのがはじまりでした。羅の角帯はお客様の声から誕生して、夏の逸品として人気を集めています。

泉二:お洒落な男性のお客様が、女性の羅の八寸帯を三つ折りにして角帯に仕立てられたんです。そこで先生に、羅の角帯を作っていただけないかとお願いしたんですが、すぐには「できる」とは仰らない。でもしばらくして「できたよ」と、織りあがった角帯を見せてくださって、美しさも締め心地も、それは素晴らしい仕上がりなんです。経錦の角帯の時もそうでした。

北村武資作 上品羅 八寸名古屋帯


啓太:必ず挑戦して、完璧な機能美を備えたものを仕上げてくださる。

泉二:北村先生が角帯を作ってくださるようになったことの影響力は大きかったですよ。他の作家の方も追随して、男性の角帯のお洒落が加速していきました。

啓太:今では北村先生には男物のきもの、経錦や羅文帛の広幅着尺もお作りいただいています。

北村武資作 経錦着尺


泉二:「銀座もとじ 男のきもの」は今年で20周年を迎えますが、男物の進化を北村先生がリードしてくださったと思います。

森口邦彦先生の胸に飛び込んで開催した初個展

「銀座もとじ 四十周年特別展 視覚の冒険―森口邦彦の錯視的抽象の友禅」
2019年に開催した初個展「視覚の冒険―森口邦彦の錯視的抽象の友禅」にて。

泉二:2年前に開催した森口先生の個展も、北村先生のお口添えがなければ決して実現できなかったことです。

啓太:あの森口先生の個展、しかも北村先生が繋いでくださった展示会。「一人でも多くのお客様に魅力をお伝えしなくては!」と、社長も僕もスタッフも凄まじい気迫だったと思います。森口先生が工房に招いてくださり、難しいことも何とか理解したいと食らいつく僕たちに、一生懸命に説明してくださった。オープンマインドで、先生の胸に飛び込むのを許してくださったのが、本当にありがたかったです。

森口邦彦作 友禅訪問着


泉二:普通の気持ちでは「工房を見せてください」なんて、とても言えません。もう「嫌われてもいい」という覚悟の上ですよ(笑)。私たちは「伝える職人」です。先生の作品世界や精神性を理解しないことには、お客様に作品の魅力をお伝えできないと思ったんです。

啓太:それは本当に思います。先生のプロフィールや作品の美しさだけを語ったところで真価を伝えきることはできません。森口先生とお話していて、着物という文化は世界に誇る芸術だとあらためて感じましたし、お客様に魅力をお伝えする立場である自分たちは、芸術や文化という文脈で作品を語れるよう、真剣に学ばなくてはならないと強く思います。

泉二:作品をお客様にお召しいただいて、森口先生に披露する機会もあって、先生は本当に嬉しそうでした。作り手にとって、自分の作品をお客様に美しく着こなしていただいた姿を見ることほど幸せなことはないかもしれません。個展が終わった後は、フランスで森口先生とお会いする機会がありましたね?

森口邦彦作 友禅訪問着


啓太:はい。日本の人間国宝制度に倣って、フランスでもその制度をとり入れたのが1994年。25周年記念イベントに森口先生が招待され、作品が展示されていました。パリのサンジェルマンデプレの会場まで見に行ったんです。展示品や歴史などを説明していただいている最中に、何人もの作り手が「自分の作品を見てくれ」と集まってくるんです。一人ひとりに真摯にフランス語で対応されている様子は、本当に格好よかったですね。
これほど海外で評価され求められる森口先生が、一切ぶれずに友禅染というアウトプットを続けられていること、新しい作品を拝見する機会があることが奇跡だと感じます。

二大巨匠が切磋琢磨した54年の到達点
歴史的瞬間に立ち会っていただきたい

啓太:今回の展示会を、「二人の人間国宝の作品を展示する会」と、単にそう捉えられてはいけないと思っています。お二人の歴史と新しいものを生み出す創造力、精神性を作品に重ね合わせてご覧いただけるようにしなければ。

泉二:そうですね、お二人の魂の交流のようなものをお伝えしなければいけませんね。
北村先生は15歳から西陣で修業され、森口邦彦先生のお父様である人間国宝の故・森口華弘氏をお慕いになり、「いつか華弘先生の友禅の着物に合う帯を織りたい」という目標を胸に技術を高められたそうです。華弘先生への思いも重なって、北村先生にとって森口邦彦先生はかけがえのない存在なのだと思います。

銀座もとじ40周年記念展にて。人間国宝・森口邦彦さんの作品と、ご本人の手から型をとったオブジェ。防染糊の筒を持たれています。
人間国宝・北村武資さんの作品と、ご本人の手から型をとったオブジェ。手にしているのは機の「杼」。

啓太:森口邦彦先生にとっても北村先生の存在は、友禅で新たな創作を追求し続けるモチベーションになっていると伺ったことがあります。1960年代にパリに留学されて、新たなアートやカルチャーが絶えず生まれる場所で過ごされた森口先生は、帰国後に友禅の道へ進まれるも、このまま日本工芸会という枠の中で作品発表をして良いのか迷いがあったそうです。その迷いを払拭したのが、北村武資さんの作品(日本伝統工芸展 第15回 NHK会長賞受賞作)だったと仰っていました。「北村さんのような素晴らしい作品を作る方がいるなら、頑張って友禅を出品し続けてみよう」と思われたそうです。

泉二:織・染と分野が違いながら、また育った環境も全く違いながらも、互いが認め合い刺激し合って、同じ高みを目指してこられた。北村先生は織りの専門であるのに染めを理解され、森口先生は染めの専門でありながら織りを理解されていらっしゃる。だからこそ、自分の仕事がどうあれば相手の仕事を活かせるかの緻密な計算が働いて、この究極の合作が誕生できたのでしょう。

啓太:京都国立近代美術館での展示会では、アートを学ぶ若い学生や海外の方もたくさんいらっしゃっていました。今回の展示会も、伝統工芸という枠を超えて、様々な方にお越しいただきたいですね。本当に見ないと「もったいない!」と思います。

泉二:こんな時代だからこそ、未来への希望や新しい光を感じてほしい。一人でも多くの方にご覧いただきたいですね。


20世紀が生んだ日本染織界における二大巨匠 北村武資氏と森口邦彦氏による初の二人展を開催いたします。北村氏作品100点、森口氏作品10点の新作はじめ、人間国宝同士よる世紀の「合作」を展示!
また開催へ向けて、お二人の歴史や作品世界を紐解くコンテンツを毎週公開してまいります。ぜひご期待ください。

催事概要

二大巨匠展  競演する織と染―北村武資と森口邦彦
会期:2022年2月19日(土)~27日(日)
会場:銀座もとじ和織・和染
〈お問い合わせ〉
銀座もとじ女性のきもの 03-3538-7878
銀座もとじ男のきもの 03-5524-7472

催事詳細

【新春特別企画】
北村武資氏×森口邦彦氏 プレ座談会
ファシリテーター 外舘和子氏

新春1月2日より連載開始!
12月某日、京都の北村武資氏宅にて二大巨匠が語り合われ、進行役を務められた多摩美術大学教授・外舘和子氏が書き起こしてくださった「プレ座談会」。
北村・森口両氏の闊達な京言葉が生かされた楽しいやり取りの中に、互いの仕事への敬意と、染織や日本文化への深い愛情が感じられる素晴らしい内容です。毎週、メールマガジンで配信いたします。

第1部 出会いと衝撃-北村武資の構造美
第2部 日本伝統工芸展が果たしてきた役割と「他流試合」
第3部 染織の研究会で学ぶ
第4部 コラボレーションの創造性

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北村武資(きたむら・たけし)氏について

人間国宝 北村武資
2017年の個展にて。写真中央が北村武資氏、右は外舘和子氏。

(手前)北村武資作 羅金袋帯「七宝花丸文」(奥)袋帯「四ツ目菱文羅」(右)羅文帛着尺
(手前)北村武資作 羅金袋帯「七宝花丸文」(奥)袋帯「四ツ目菱文羅」(右)羅文帛着尺

<年譜>
1935年 京都市生まれ
1965年 日本伝統工芸染織展 日本工芸会会長賞受賞
1968年 日本伝統工芸展 NHK会長賞受賞
1990年 京都府無形文化財保持者に認定
    MOA美術館 岡田茂吉賞工芸部門大賞 
1995年 「羅」の技法にて重要無形文化財保持者に認定される
1996年 紫綬褒章受賞
1999年 京都府文化功労者賞受賞
2000年 「経錦」の技法にて二度目の重要無形文化財保持者に認定される
2001年 「人間国宝北村武資-織の美-展」(群馬県立近代美術館)
2005年 旭日中綬章受賞
2011年 「『織』を極める 人間国宝 北村武資展」(京都国立近代美術館)

和織物語(2017年の個展)

作家紹介ページ

森口邦彦(もりぐち・くにひこ)氏について

人間国宝 森口邦彦
2019年の個展にて。写真左から2人目が森口邦彦氏。

人間国宝 森口邦彦
森口邦彦作 訪問着「雪の回廊」

<年譜>
1941年 京都市生まれ
1963年 京都市立美術大学日本画科卒業、フランス政府給費留学生として渡仏
1966年 パリ国立高等装飾美術学校卒業
1967年 父・森口華弘のもとで友禅に従事し始める
1969年 第6回日本染織展にて文化庁長官賞
第16回日本伝統工芸展にてNHK会長賞
2001年 紫綬褒章受章
2007年 重要無形文化財「友禅」保持者に認定
2009年 「森口華弘・邦彦展-父子人間国宝―」(滋賀県立近代美術館・読売新聞東京本社)
2013年 旭日中綬章受賞
2016年 「森口邦彦-隠された秩序」展(パリ日本文化会館)
2020年 「人間国宝 森口邦彦 友禅/デザイン―交差する自由へのまなざし」(京都国立近代美術館)
2020年 文化功労者に選定
2021年 フランス共和国 レジオン・ドヌール勲章コマンドゥール章受賞

<パブリックコレクション>
文化庁、京都国立近代美術館、東京国立近代美術館、広島県立美術館、群馬県立近代美術館、ローザンヌ市立装飾美術館、ポンピドウセンター、デンマーク工芸博物館、ヴィクトリア&アルバート博物館、ロサンゼルスカウンティー美術館、ニューヨークメトロポリタン美術館

和織物語(2019年の個展)

作家紹介ページ

ファシリテーター 外舘和子(とだてかずこ)

 1964年東京都生まれ。美術館学芸員を経て現在、多摩美術大学教授、工芸評論家、工芸史家。英国テート・セント・アイブスを皮切りに、海外巡回展『手仕事のかたち』、米スミス・カレッジ、独フランクフルト工芸美術館など、国内外の美術館、大学等で展覧会監修、図録執筆、講演を行う。また韓国・清州工芸ビエンナーレ、金沢世界工芸トリエンナーレ、日展、日本伝統工芸展など、数々の公募展の審査員を務める。著書に『中村勝馬と東京友禅の系譜』(染織と生活社) 、『Fired Earth, Woven Bamboo: Contemporary Japanese Ceramics and Bamboo Art』(米ボストン美術館)など。毎日新聞(奇数月第2日曜朝刊)に「KOGEI!」連載中。

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