第3回:「葵の上」
「葵の上」をテーマに、ATENARIさんに特別制作いただいた限定品を、オンラインショップにて3/31(日)に販売開始いたします。
『源氏物語』の作者・紫式部の生涯を描く、話題のNHK大河ドラマ「光る君へ」(主演:吉高由里子さん)。銀座もとじでは、そんな「光る君へ」の放送を祝して、雅な装いの文化が花開いた平安時代や『源氏物語』の世界観をより楽しんでいただけるマンスリーコラム(※1)をお届けしています。
また各月ごとには、マンスリーコラムの内容と連動した、「ATENARI(アテナリ)」による「銀座もとじ」限定作品の販売も、2024年1月より本格スタート。ジュエリーデザイナーならではの洗練されたデザインによる、着物アクセサリーを展開しています。
※1)マンスリーコラムの中では、各月ごとに、『源氏物語』の主要人物をひとりずつピックアップし、各キャラクターと繋がりが深い色彩との関係性や、人物像の背景をご紹介します。
『源氏物語』光源氏の最初の正妻“葵の上”
第3回目となる今回は、『源氏物語』の主人公・光源氏にとって“最初の正妻”として迎えられる「葵の上(あおいのうえ)」をご紹介。父は左大臣、母は桐壺帝(光源氏の父)の妹という非常に高貴な身分の姫君であり、子供の頃から天皇の妻となるための英才教育を受けて育ったお姫様として描かれています。
そんな葵の上と光源氏の夫婦生活といえば、実に冷えきったものでした。光源氏は、桐壷帝の第2皇子として生まれながらも、源氏という臣下の地位へと落とされているため、将来は皇后となるために育てられた葵の上にとって、この結婚は不本意な出来事。さらに、実の兄の頭中将と一緒になって、次々と他の女性と色恋沙汰を繰り広げる光源氏を、そのプライドが許さず、結婚当初から打ち解け合うことはありませんでした。
やがて10年の月日の末、葵の上が妊娠。かつては冷え切った夫婦仲の二人でしたが、この出来事を契機にして、はじめて情の通った夫婦となるのでした。
葵の上を襲う“悲劇の結末”
けれど、そんな和やかな二人の時間は束の間で、葵の上は悲劇の結末を迎えることになります。その事の発端となったのは、下鴨神社の伝統行事となる葵祭。晴れ姿を披露することになった光源氏を見に出かけた葵の上と、人目を忍んで来た光源氏の愛人・六条御息所の牛車が鉢合わせとなり、小競り合いをはじめてしまうのです。
結果として、六条御息所の牛車を傷つけただけでなく、従者を制することもなかった葵の上は、六条御息所の深い恨みを買ってしまいます。それは生霊となって現れるほどで、葵の上の出産の際にも取り憑き、我が子の誕生後に、命を落としてしまう悲劇を辿るのでした。
ようやく夫婦の間に絆が芽生えはじめたものの、一度も歌を送り合うことがなかった光源氏と葵の上。この突然の妻の喪に服した光源氏は、哀悼の意を表す鈍色(にびいろ)の衣裳をまとい、葵の上を失った悲しみの歌を残しています。
「鈍(にば)める御衣(ぞ)奉れるも、夢の心地して、我先立たましかば、深くぞ染めたまはまし、と思すさへ、限りあれば薄墨ごろも浅けれど涙ぞそでをふちとなしける」
現代語訳:
鈍色の喪服を身に纏うことも、夢のような気持ちがして、もし自分のほうが先立ったのなら、あの方はもっと深く衣をお染めになるだろうと、思われるのさえ悲しくて
“葵の葉”の色彩
そんな葵の上の名前は、実は後世の読者がつけた便宜上のネーミングで、彼女が主役級の扱いをうける「葵」の帖からつけられたと伝えられています。上述したエピソード内の葵祭が、葵の葉が青々と色づく季節であったことから、その凛として、どこか儚い色彩そのものも、葵の上のイメージに相応しいものですね。
<参考図書>
吉岡幸雄著/「源氏物語」の色辞典 紫紅社
《3/31(日)販売開始》
「葵の上」をイメージした
限定制作の作品のご紹介
そんな「葵の上」をイメージして、ATENARIさんが特別に制作くださった3月の限定アイテムが登場。淡い薄緑に輝く翡翠の石を主役にした、爽やかなデザインの羽織紐2種が展開されます。水晶とコンビネーションしたモデルは、添付のアジャスターを使用することで、ブレスレットとしても使用可能です。
※ これまでのシリーズ内では、各登場人物にまつわる“愛の和歌”を添えてまいりましたが、二人の関係の中で和歌のやりとりがなかった為、今回の同封は省略させていただきます。
■羽織紐「逢ふ日」(翡翠、水晶、金具は銀)66,000円(税込)
※アジャスター(銀・水晶)付き
■羽織紐「逢ふ日」(翡翠、金具は銀)48,400円(税込)
〜プロローグ〜
『源氏物語』の誕生秘話
2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」がいよいよ放送開始!平安時代、世界最古の長編小説といわれる『源氏物語』の作者・紫式部にフィーチャーした、一人の女性の美しき物語が幕を明けました。
銀座もとじでは、そんなNHK大河ドラマ「光る君へ」の放送にちなんで、作品の核を担う『源氏物語』にまつわる特別なコンテンツを用意いたしました。銀座もとじならではの着物の視点も織り交ぜながら、『源氏物語』の恋愛模様でも大切な要素を担う”色彩”の豆知識や、登場人物の背景など、作品の世界観をより一層楽しめるコラムを約一年に渡り発信していきます。
第1回:「藤壺」
第2回:「若紫」
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