第1回:「藤壺」
「藤壺」をテーマにしてATENARIさんに特別制作いただいた限定品を、オンラインショップにて1/31(水)に販売開始いたします。
『源氏物語』の作者・紫式部の生涯を描くNHK大河ドラマ「光る君へ」(主演:吉高由里子さん)が話題となっています。銀座もとじでは、雅な装いの文化が花開いた平安時代や『源氏物語』の世界観をより楽しんでいただけるマンスリーコラムを展開。『源氏物語』の主要人物をひとりずつピックアップし、各キャラクターと繋がりが深い色彩との関係性や、人物像の背景をご紹介してまいります。また各月ごとに、コラムの内容と連動した限定作品(※)の販売もご案内しますので、ぜひページの最後までお楽しみくださいませ。
※)ジュエリーデザイナー・角元弥子氏が手がける「ATENARI(アテナリ)」による銀座もとじ限定の特別作品です。『源氏物語』の各人物のエピソードにまつわる“愛の和歌”を同封した特別な仕上がりとなっています。
12月のプロローグに続く第1回目となる今回は、『源氏物語』の重要ヒロインのひとり「藤壺」をフィーチャー。『源氏物語』の主人公・光源氏の恋物語の中でも、最もセンセーショナルな関係性を持った藤壺について解説していきます。
『源氏物語』は光源氏が
“紫のヒロイン”に魅せられる物語
染織史家・染色家の吉岡幸雄氏が、著書『源氏物語の色辞典』内で、「『源氏物語』は“紫”のものがたり」と綴られたように、作品内で最も重要な色彩に位置付けられている“紫”。当時最も高貴な色だといわれたこの色彩は、『源氏物語』の著者・紫式部の名の由来となっているだけでなく、作品内における重要なヒロインとの関連性も非常に高い色として知られています。
具体的に挙げるならば、紫に因んだ名前を持つ桐壷更衣、藤壺、紫の上の3人。それぞれの生き様は三者三様ですが、ひとつ共通していえる事は、主人公・光源氏が“深く愛した女性たち”であったということです。今回取り上げる藤壺は、そんな“紫のヒロイン”の中でも、光源氏の初恋相手となる重要人物。一体どんな女性だったのか、より深く追ってみましょう。
亡き母「桐壺」の面影を求めて
光源氏が慕い続けた継母「藤壺」
天皇の皇子として生まれ、美貌と才知を合わせ持った『源氏物語』の主人公・光源氏。次々と出会う女人たちと、恋愛を重ねていくラブストーリーが展開されていきますが、その生い立ちはやや複雑で、物語は幼い光源氏が母・桐壷更衣を亡くすことから、繰り広げられていきます。桐壷更衣の亡き後、帝に迎えられたのが、桐壷更衣と瓜二つの美貌を持つ藤壺。教養と、奥ゆかしさも兼ね備えた藤壺は、作品の中でも“太陽”に例えられるほど、完璧な女性像を持つ人物でした。
亡き母を恋しく思う光源氏は、そんな藤壺を慕って成長していくのですが、いつしか理想の女性として恋心を抱くようになり、ついには密通。藤壺は、罪の子(後の冷泉帝)を身籠もり出産することになりますが、最終的には光源氏との関係を断つ決意で出家の道を選ぶのでした。実母の面影を残した藤壺は、光源氏にとって永遠の理想の女性であり、忘れ難き初恋の人。光源氏が多くの女人たちと逢瀬を重ねていく背景には、そんな愛する藤壺の代わりを探し求めるような心理的背景も深く関係しているのです。
《1/31(水)販売開始》
「藤壺」をイメージした
限定制作の作品のご紹介
そんな藤壺をイメージして、ATENARIさんが特別に制作くださった1月の限定アイテムは、帯留1点とかんざし4点。藤壺にまつわる“愛の和歌”として、過ちを光源氏からの想いに応えることができず、胸のうちの苦しさを綴った和歌も添えさせていただきます。
藤壺 “愛の和歌”
世語りに人や伝へむたぐひなく
憂き身を覚めぬ夢になしても
現代語訳:
後々の世まで語り草にされないかしら
またとはないわたしの辛い身を
たとい永久に覚めない夢の中に消してしまっても
(瀬戸内寂聴訳/講談社文庫「源氏物語 巻一『若紫』」より )
■ATENARI 帯留「憧憬」
(銀、漆塗りの白蝶貝、水晶) 66,000円(税込)
※4分紐が通ります。
“藤壺”をイメージした帯留「憧憬」は、見ることのないものへの思慕と憧憬を、紫の雲と水晶の輝きで表現。水晶の底には、伏せ彩色(※1)で仕上げた紫色の繧繝(※2)の雲が見え隠れし、奥ゆかしく神秘的な雰囲気です。
※1)伏せ彩色:透ける素材に裏側から彩色する技法。正倉院宝物にも貝や琥珀、べっ甲、ガラスなどに施されたものがみられる。
※2)繧繝(うんげん):ぼかさずに段々に着色されたグラデーション。唐から伝わり日本でも奈良時代にはポピュラーになった。
特に記載のない場合、銀地金にはロジウムコーティング加工済み 。
■ATENARI かんざし各種 38,500円〜63,800円 (税込)
“藤壺”を着想源に、黒水牛角をベースに制作したかんざしシリーズ。藤壺を連想させる藤の花や、可憐な蝶を描いた気品溢れる仕上がりとなっています。
(写真左上から時計回り)
「藤に胡蝶」63,800円(税込)
「胡蝶」48,400円 (税込)
「白梅」38,500円(税込)
「雲に胡蝶」55,000円 (税込)
〜プロローグ〜
『源氏物語』の誕生秘話
2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」がいよいよ放送開始!平安時代、世界最古の長編小説といわれる『源氏物語』の作者・紫式部にフィーチャーした、一人の女性の美しき物語が幕を明けました。
銀座もとじでは、そんなNHK大河ドラマ「光る君へ」の放送にちなんで、作品の核を担う『源氏物語』にまつわる特別なコンテンツを用意いたしました。銀座もとじならではの着物の視点も織り交ぜながら、『源氏物語』の恋愛模様でも大切な要素を担う”色彩”の豆知識や、登場人物の背景など、作品の世界観をより一層楽しめるコラムを約一年に渡り発信していきます。
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