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三世・樹田紅陽さんの刺繍美が特別である理由とは

10月20日(金)〜22日(日) 開催される「刺繍美 三世・樹田紅陽の世界」。

出会いを導いてくださった※藍染作家・福本潮子さん、さらに京都国立博物館名誉館員・切畑健先生のご推薦のもと2019年に初個展、今回は待望の2回目の展示会となります。

伝統を仰ぎながら革新性を宿す、樹田紅陽さんの刺繍美がなぜ特別であるかを、復元された祇園祭「保昌山」胴掛類の実際の作品写真と共にご紹介いたします。

※福本潮子さんは樹田紅陽さんの実姉である截金(きりかね)の人間国宝、故・江里佐代子さんとご親友の間柄。

円山応挙が原画を手掛けた
祇園祭の「保昌山」胴掛類を
当時の繍技を紐解き復元


祇園祭の山鉾巡行の様子(参考資料)

樹田紅陽さんは39歳で三世を襲名された後、42歳より祇園祭保昌山胴掛類の復元刺繍制作に携わってこられました。「動く美術館」と称される山鉾巡行は、一か月続く祇園祭の最大の見どころと言っても過言ではありません。

復元を託された大作の原画は江戸時代の人気絵師・円山応挙が手掛けたもので、当時の高度な手技を持つ職人達が心血を注ぎ制作した美術品です。
復元(専門的には復原と書く)するということは、その綻びや欠損と過去の修理の痕跡を調査し、当時の色彩や技法を研究し、再現するということであり、現代に伝えられていない技法についても地道に調べ研究しながら一針一針を重ねていく途方もない作業です。


祇園祭保昌山前掛「蘇武牧羊図刺繍」(約250cm×約140cm)面積が大きい部分は主に太い糸が使われるが、香炉からたなびく白い煙には極細の糸が使われ香り立つような表現になっている。


祇園祭保昌山胴掛「巨霊人図刺繍」 前掛以外の三面の波はそれぞれ別の繍技が組み合わされているとのこと。


祇園祭保昌山胴掛「張騫図刺繍」


祇園祭保昌山後掛「波涛図刺繍」

一人目の師・美村元一氏には「かけつぎ業」に必要な織組織や、細い糸で「染めたように」繍う緻密な仕事を学び、二人目の師・間所素基氏には「撚り糸づかい」や糸の太細で緩急をつける表現を学ばれました。体得された技術をいかんなく発揮され、1990年より約8年の月日をかけて完成。

250年の時空を超え、応挙や当時の繍人達の仕事と向き合い再現された刺繍を見た時の感想を、切畑先生は
「そこに『現代』が存在していると、胸のときめきを感じた」
と、述べられ(2019年『和織物語』)、またこの仕事は、その後の樹田さんの刺繍人生において大きな契機になったと仰っています。

※切畑健先生は、10月21日(土)のぎゃらりートークに登壇くださいます。

袋帯「折線文ビロード繍 濃鼠錦地」
樹田さんが好きなクレーの絵画を彷彿とさせる軽やかな意匠を、祇園祭の幕にも用いられている伝統技法・天鵞絨(ビロード)繍いで表現。針金を覆うように繍った後で上辺を切り起毛させるという手間のかかる技法で、現代ではほとんど見られない大変希少な作品。


八寸名古屋帯「結城紬 縦縞文」
地厚な結城紬の帯地にこれほど繊細な刺繍が表現できるのは、生地の組織についての知識があるからこそ。三世・樹田紅陽さんでなければ創作できない逸品。


刺繍の魅力は、自由であること
立体的な糸の輝きがあること
想いと時間の蓄積があること

刺繍の魅力は何であるか――
京都国立博物館に27年間勤められ、日本の染織史や伝統服飾の研究をされてきた切畑先生から見た刺繍の魅力をひとことで・・と、前回のぎゃらりートークでご質問した際、次のように答えてくださいました。

「刺繍とは、繍い手が感動のおもむくままに、自由な世界を表現できるという美の世界なのです。ここには、樹田の感動が生きてんのや、と見ていただきたい。」

「染めにもない、織りにもない、光の当たり具合によって立体感が出る、ちょっとした角度でガラリと印象が変わる、感動が別のものになる。無限の可能性を秘めているのが刺繍なのです。」

九寸名古屋帯「流線文駒繍 栗皮茶地」


九寸名古屋帯「曲文様」

訪問着「切箔丸文様刺繍」

樹田紅陽さんは、どんなに忙しくても祇園祭に出向き、エネルギーをもらってくるそうです。山鉾を装飾する刺繍からエネルギーを感じる、それは刺繍には人の想い・願いと時間の蓄積があるからではないかと仰います。

日本における刺繍の歴史は、仏教と共に伝来した「繍仏(ぬいぼとけ・しゅうぶつ)」が起源とされます。美しい刺繍に人が心奪われるのは、繍いに蓄積されたエネルギーを無意識に感じ取るからかもしれません。

店頭およびオンラインショップでは、一足早く作品をご紹介しております。
三世・樹田紅陽さんの世界、伝統と革新性が同居する時空を超えた刺繍美とエネルギーを感じていただけましたら幸いです。


刺繍美 三世・樹田紅陽の世界

京都で繍を司る樹田家。初世・紅陽(樹田国太郎氏)の孫として生まれ、京都市立芸術大学西洋画科卒業後、二人の師より繍表現を学び、39歳で三世・樹田紅陽を襲名。
祇園祭の山鉾「保昌山」胴懸類の復元や国立京都迎賓館内の几帳刺繍制作など、文化財修復にも携わり、深淵なる伝統を仰ぎながらも、現代に生きる刺繍美として革新性を宿した作品を手掛けています。
一針、一針の集積が軌跡となる樹田氏の世界をぜひ、ご高覧ください。

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