【きものsalon 2023年秋冬号掲載】
銀座もとじから今号も多数の着物や帯を掲載いただきました。
編集者が厳選した旬のコーディネートやお品をご紹介します。
《99ページ誌面より》
落ち着いたピンクの結城紬に、独特の縞模様が印象的な小倉織の帯できりりと
「すっきりと粋な装いを目指すなら、縞や格子の帯。縞帯の代表ともいうべき小倉織は、木綿織物でありながら独特の滑らかさがあり、単衣から袷まで幅広く楽しめます。江戸時代に武士の裃や帯として人気を博した小倉織は、昭和になって復元され、女性用の帯も登場。どこかきりっとした表情を持つのも、歴史的な背景が影響しているのかもしれません。大人ピンクの結城紬に合わせると、シャープな縞もぐっと優しげな印象に。ギャラリー巡りや食事会など、秋のお出かけに最適。」
メディア掲載品は特別価格でご案内しています。ぜひこちらもご覧ください。
>>「メディア掲載品」コーナー
【遠藤聡子 作家コメント】
『小倉織 帯 蘭』
蘭園で見た蘭の種類や色の多様さ、鮮かさを想い描いて制作したものです。 色を多く使いたいが、蘭の持つ静かで穏やかな貴賓のようなものも同時に表現したかった。そこで、色相の離れた色を並べ、遠くから見ると色同士が混ざることで彩度が下がり、色が落ち着き統一感がでるのではないかと織り上げました。
染料:紫根 カリヤス ウコン タマネギ サクラ 梅 クサギ 茜など
小倉織作家 遠藤聡子
福岡県北九州市生まれ。幼い頃から伝統工芸に興味があり、学生時代に地元に伝わる「小倉織」の存在を知り、大学卒業後より小倉織の第一人者である築城則子さんに師事。中学の非常勤講師を務めながら修業を重ねられ、2015年に独立されました。
縞のみの平織が主流だった小倉織に「絣」を取り入れることで、凛とした強さの中に柔らかな印象をもたらす新たな縞模様の表現を探求されています。 築城則子さんの精神と手技を受け継ぎ、草木から丁寧に抽出された透明感のある色彩とハイセンスな色の組み合わせにより、小倉織に新たな風を吹き込まれています。
【作家産地】「遠藤聡子」ご紹介
小倉織について
小倉織(こくらおり)とは、江戸時代の豊前小倉藩(現在の福岡県北九州市)に人気を博した縦縞の柄が特徴の、良質な生綿の糸を撚り合わせて織られた大変丈夫で上質な木綿の織物です。
江戸時代に盛んに織られ、武士の袴や帯として人気を博していた小倉織は、幕末の戦乱の中で生産者たちが離散し、衰微していきました。明治26年頃になると、再び小倉織の人気が高まりはじめ、その丈夫さを活かして、学生服の布地として、再び大変な人気を得るようになりました。しかし、手間とコストのかかる手工業である小倉織は、1901年(明治34年)に起こった金融恐慌の余波などにより大正期に入ってから再び衰微し、その後、昭和初期には小倉織は途絶えてしまったのです。
築城則子さんが染織の勉強のためにあちこちの骨董屋さんに通っていた時、北九州市内の骨董店で見たこともない古い小さな布に出会いました。その布は、しっとりとした手触りをしており、縞模様で、木綿の生地でありながら絹のようにも思える光沢を放っていました。その布が“小倉織”。経糸に色の濃淡でくっきりとした縞模様が浮かび上がる小倉織のなめし革のような質感、光沢感、丈夫さ。この織をぜひ復元させたいと思い、研究を重ね、1984年(昭和59年)、築城則子さんがその復元を果たされました。