Vol.35 江戸小紋・武家の裃から発展した技術の粋~男の着物 商品紹介~のまとめ|男のきものWEB講座

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江戸小紋 ~武家の裃から発展した技術の粋~

染めの着物である江戸小紋は、男性にもおしゃれ着として人気の高い着物です。紋を入れれば、準礼装としても着用できますので、広く活用できる着物でもあります。

「江戸小紋(えどこもん)」という名称は、1955(昭和30)年に技術継承者である小宮康助氏(1882~1961)が重要無形文化財保持者(人間国宝)の指定を受けた際に命名されたもので、比較的最近生まれた言葉ですが、これは、当時の文化財保護委員会が名づけた名称で、他の小紋(色差しによる型友禅小紋など)と区別するために命名したものでしたが、現在は広く一般的な名称として使用されています。なお、「江戸小紋」の名称で、その技法についても1978(昭和53)年に重要無形文化財に認定されています。

江戸小紋の歴史は、室町時代あたりに起源を持つと言われていますが、当時のもので現存する最古のものは、山形県米沢市の上杉神社に所蔵されている、上杉謙信のものと伝えられている紋付小紋帷子とされています。その後、江戸時代になって、武士の裃の柄に取り入れられ、「裃小紋」として発展を遂げました。これらは、将軍家をはじめ、各藩ごとに特定の小紋柄を定め、誰が見てもどこの藩の者かがわかるという制服的な機能も果たしました。これを「定め小紋」あるいは「留柄(とめがら)」ともいい、他での使用を禁じていました。以下は代表的な定め小紋です。

徳川将軍家の御召十
徳川将軍家の御召十
五代将軍綱吉の松葉
五代将軍綱吉の松葉
紀州大納言の極鮫
紀州大納言の極鮫
肥後細川家の梅鉢
肥後細川家の梅鉢
加賀前田家の菊菱
加賀前田家の菊菱
肥前鍋島家の胡麻(鍋島小紋)
肥前鍋島家の胡麻(鍋島小紋)
土佐山内家の青海波
土佐山内家の青海波
薩摩島津家の鮫(にたり大小島津)
薩摩島津家の鮫(にたり大小島津)
信濃戸田家の通し
信濃戸田家の通し
備後浅野家の霰小紋
備後浅野家の霰小紋
甲斐武田家の武田菱
甲斐武田家の武田菱
出雲佐々木高綱家の宇治川小紋
出雲佐々木高綱家の宇治川小紋

ちなみに、「小紋(こもん)」という名称は、広義においては「大紋(だいもん)」や「中形(ちゅうがた)」に分類される文様に対して、細かく小さな文様のものをいいます。その製造技法は、型紙を使って非常に細かな模様を生地一面に単色で染めた型染めで、その技術は精緻を極める手仕事の集大成といえます。型紙には、伊勢で生産された「伊勢型紙」が古くから使われて来ましたが、定め小紋などの定着によって裃の小紋需要が急増したことによって、伊勢型紙も発達して行ったのです。

このようにして生まれた江戸小紋は、江戸時代中期以降には庶民の間でも流行し、男女とも広く着るようになりました。裃柄のみならず、町人たちのおしゃれ志向が動植物や道具類などのみならず、縁起ものや語呂合わせといった多彩な図案を生み、数千種類にも登る型紙が作られています。これらは現代にも伝統柄として広く愛されているものが数多くあります。そうした江戸小紋の代表的な文様に、「鮫」「角通し」「行儀」があり、これらは「江戸小紋三役」と呼ばれています。

「江戸小紋三役」 左から「鮫」「角通し」「行儀」
「江戸小紋三役」 左から「鮫」「角通し」「行儀」