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男が惚れる男-山岸幸一先生のものづくり 泉二弘明ロングインタビュー

山岸幸一先生は、会長・泉二弘明が作品はもとよりその生き方、思想すべてに惚れ込み、人生の師と仰ぐ大きな存在です。1995年の日本伝統工芸展での衝撃的な出会いに始まり、2002年には初個展を開催、2021年までに15回を数えるまでになりました。
そんな「男が惚れる男」、山岸幸一先生について、男店スタッフが改めて会長・泉二弘明にお話を聞きました。

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衝撃的な出会いから

まずは山岸先生との出会いについて教えてください。
会長・泉二弘明(以下泉二):あれはもう忘れられません。伝統工芸展で山岸先生の作品を見たのが始まりです。紅花染めの美しさに惹き込まれて作品の前に思わず立ち止まりました。このような紬は見たことがない、何だろうこれは!と、作品が持つ力強さに衝撃を受け、どんな方が作られたんだろうと思ったのが始まりです。

そこから、実際にお取扱いさせて頂くまではどういう経緯を辿ったのでしょうか。
泉二:伝統工芸展で作品を見てから、すぐに工房へ伺ったのですが、ちょうど先生は紅花畑でお仕事をされていて、私はそこに着物を着て行ったんです。すると先生は、何者が来たんだろうっていう顔をされている。
特に東北の方は慎重なところがあるのかもしれませんね。はじめは山岸先生も、着物姿で突然現れた私をだいぶ警戒されていたと思います。
何とかしてこの素晴らしい作品を取扱わせていただきたいと、何回も何回も通いました。それでようやく取扱いさせて頂けることになった時、山岸先生は「一番苦しい時も長年支えてくれている問屋さんがあるので、そこをむげには出来ない。そちらに話を通してくれ」と仰るんです。人を大切にする、筋を通す義理人情に厚い方ですよね。その話を伺って、この方は生き方、人間性も素晴らしいなと改めて惚れ直しました。

紅花畑。2018年撮影

作品から始まり、人間性にもとても惹かれたのですね。
泉二:初個展が実現するまで、実に7年かかりました。そうして、いよいよ2002年に第1回 山岸幸一展が実現します。その時のギャラリートークで、恥ずかしながら私は男泣きしてしまったんです。
やっとここまでできるようになった嬉しさ、理解してくれるお客様が沢山いらっしゃったということに感極まり涙が止まらなかったのです。

今でもこの時の話は伝説になってますね。
泉二:それからはもう、この方を一人でも多くの方に知ってもらいたいという一心で、当時私が案内役を務めていた連載等、たくさんの雑誌で取材させて頂きました。
夜中から朝方にかけて行う「寒染」は、制作工程の中でも最も神聖なところです。当時お弟子さんですら入れなかった場所に、初めて先生から招き入れて頂いて。真冬の早朝4時は、外はマイナス16度にもなります。
張り詰めた緊張感、取材班と息をのんで見守る中、白い糸が紅色をぐーっと吸い上げる、そして「ぽちゃ、ぽちゃ」という音だけが響く。先生は糸をまるでお姫様の髪の毛に触れるように大切に大切に染めていく。カメラのシャッター音だけが「カシャ、カシャ」と響いて、印象的な光景でしたね。

雑誌の写真からも緊張感と紅の美しさが伝わってきます。とても神秘的でした。


寒染めの様子。2017年撮影

男が惚れる男、山岸幸一の姿とは

会長は人としても山岸さんからとても学ばせてもらったといつも言っていますね。
泉二:山岸先生は、素材本来の魅力を大切にする方だと思います。私も全国色々な産地、作家さんを見てきましたが、ここまでとことんやる方がいるのかと。
畑を耕し、紅花を育て、蚕を育て糸を紡ぎ、染めから織まで全てご自身でされる。
でも、ご本人はあくまで「俺はこだわってるんじゃない」と。それは糸が欲しているからやっているのであって、あくまで自然のリズムにこちらが合わせるというスタンスです。
結局、本当に良いものは、一朝一夕には出来ないんです。先生は、一反の着物に最低4、5年以上の時間をかけてものを作っていく。「糸を何年も染め重ねる」ということも初めて先生から教えて頂きました。染めた糸を1年置き、染め重ねて2年目、さらに3年目・・ということで「1年生」「2年生」・・と糸を溜めながら染め重ねる。4~5年染め重ねていくと糸が「そろそろ織ってくれ」と語りかけてくるんです。糸の中の芯まで色素が浸透するには時間がかかるんですね。
私は山岸先生と出会う前、今から28年ほど前から、養蚕農家と契約し糸からのものづくりをしたいと考えていたのですが、山岸先生のものづくりの姿勢を目の当たりにして、大切なことは時間をかけてでもやっていかなければと背中を押されました。それが純国産絹プラチナボーイのプロデュースへと繋がっていくのです。やはりものづくりは時間がかかる、1年、2年じゃできないというのを学ばせて頂きました。

山岸幸一 染糸写真

先生は28歳の頃に、人生の全てをものづくりに捧げる覚悟をされて山奥へ引っ越し、いわば俗世の暮らしを捨てるんです。28歳というと、みんな遊びたい盛りですよね。飲みにも行きたいし、女の子とデートもしたいしね(笑)。元々は米沢市内に住まわれていたのですが、風と水と太陽が最高の条件で揃うところを求めて30箇所くらい探し回り、ついに赤崩という山奥の地に小さな家を建てられます。ご両親は心配だったと思いますね。組合等との関係もなくなるわけですから。そんな中でも根気強く、芯の強さを持ってやり続ける。

それは、銀座もとじがやっていることもそうだと思います。
銀座の柳染めは約30年、プラチナボーイももう20年。誰もやっていないことを始めた時は、最初は周囲から色々言われるかもしれませんが、ぶれない芯を持つことと積み重ねなんです。結果に繋がるまでには時間がかかります。多分どんな仕事にも通じると思いますね。

山岸先生の作品を着てくださる方は、一言で言えば「違いのわかる方」です。特に男性は山岸先生の志や精神性に共感して身に纏い、見た目の格好良さはもちろんのこと、内側からも男磨きをされている方に支持されています。この着物にふさわしい男になりたいと、纏うたびにそう思わせてくれる、自分を高めてくれる着物なんです。

銀座もとじの今やってることにも、山岸さんから学んだことが繋がっているわけですね。
泉二:仕事の仕方、人への接し方もそうです。その人のために何ができるかということ。感謝というのは形にしていかなきゃならない。この人が喜ぶことはなんだろうと考え続けることが大切なんです。

山岸先生の40周年パーティーもそのひとつでしたね。
泉二:先生が赤崩に工房を移されて40周年を迎えられるにあたって、何をすれば山岸先生に一番喜んで頂けるのかと考えて、「ドレスコードは山岸幸一」のパーティーを企画することにしたんです。

2017年に赤崩草木染研究所40周年を記念したパーティーを開催。

写真を拝見しましたが、自然光が綺麗な日比谷松本楼の会場が、山岸さんの草木染の綺麗な色で溢れた光景は圧巻でした。
泉二:約80名ものお客様が集まってくださいました。奥様やご子息の大典さんもお越しくださいました。
先生は亡くなったご両親の写真を胸に入れていらっしゃいました。元々機屋さんをされていたご両親は、本当にご心配されていたと思います。山岸先生の作品を愛するたくさんのお客様に囲まれて、先生はとても喜んでくださいましたし、ご両親も安心してくださったのではないかと。こういったことが出来て感無量でした。

男性のお客様も沢山いらっしゃっていたようですね。きれいな色のお着物もとてもお似合いで印象的でした。
泉二:2002年に日本で初めて男のきものを立ち上げてしばらくして、先生にお願いして男ものも作って頂くようになりました。
男性のお客様で紅のお着物をお召しになっていた方もいらしていたのですが、本当に素敵でした。

山岸幸一さんの着物を
纏うと力が湧いてくる
自信が持てる

山岸幸一 泉二弘明

会長は、冬になると山岸先生の着物をよく着ていますが、実際着てみてどうですか?
泉二:山岸先生の着物は、「究極の普段着」。本当に暖かいのと、先生の想いやストーリーに包まれると力が出てきますし、自信が持てます。やっぱり本物というのは着れば着るほど良くなってきますね。柔らかくなって、本当にふんわりとなってきます。
山岸先生の反物には「手を触れる所」って書いてありますよね。あれは、沢山の人に着こまれた後にこういった風合いになりますよ、という証明なんですね。実際は皆様がたくさん触れる前に販売になることが多いですが……。
あとは自分でたくさん着倒して自分の体に馴染ませることです。いわゆる「血のし」(自分の体温で柔らかくしていく)を楽しんで頂きたいのです。それが着れば着る程良くなってくるということです。

山岸幸一 紅花紬 柳染着尺 証紙
反物の証紙には、山岸幸一さん直筆で作品名や草木染料が書かれている。「手で触れる箇所」の文字も。

おすすめの着こなし方

山岸さんの着こなし方を教えて下さい。
泉二:いくつかコーディネートでご紹介します。まず一つ目は、銀座もとじが繭からプロデュースしている純国産蚕品種「プラチナボーイ」の極上の絹糸を「銀座の柳染」で制作いただいた、特別な着物を用いたコーディネートです。遊び心のある結城紬の角帯を合わせて、羽織はグレーで上品にまとめました。

《泉二弘明おすすめ①》
「銀座の柳染」の紬で、春の気分を先取り

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泉二:二つ目は、クリスマスを意識した組み合わせです。
一見コントラストの強い組み合わせでも、山岸幸一さんの紬は非常に細やかに色が組み合わされており、不思議と馴染みます。多彩が織り込まれている山岸幸一さんの紬は、包容力のある織物。合わせる帯や小物によって、さまざまな色味が引き出され、自然となじみの良い装いになる力があります。
藍染の着物に、籠絞り染の青緑系の羽織が抑揚のある着姿に。
シックにも着こなせる組み合わせですが。今回は、角帯と羽織紐で赤と緑を添えてクリスマスシーズンのコーディネートにしました。

《泉二弘明おすすめ②》
藍染の紬に赤と緑を添えて、クリスマスの集まりへ

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泉二:三つ目は、山岸幸一さんの着物に山岸幸一さんの羽織という最高の組み合わせです。強撚糸入りの少しさらりとした風合いの着尺を着物に、きりっと格好良い雰囲気の紫根染の着尺を羽織に重ねた、極上の大人のカジュアルですね。
土佐手縞の木綿の角帯がおだやかで味わい深く、山岸幸一さんの真綿糸のふっくらとしたぬくもりと相性よく楽しめます。全体に紫を効かせて、大人の色気を漂わせました。

《泉二弘明おすすめ③》
着物も羽織も赤崩紬で、極上のカジュアルスタイル

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山岸幸一 喜寿記念展
~植物染め 祈りの織物~

山岸幸一 喜寿記念展 ~植物染め 祈りの織物~|11月催事

会期:2023年11月24日(金)~26日(日)
場所:銀座もとじ 和織、男のきもの
〈お問い合わせ〉
銀座もとじ和織 03-3538-7878
銀座もとじ男のきもの 03-5524-7472
(電話受付時間 11:00~19:00)

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山岸幸一さんの作品の魅力‐お客様の声

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