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澤田麻衣子さんの工房見学レポート

2024年3月22日(金)~24日(日)の「型絵染 澤田麻衣子展 ~花の香るとき~」を前に、京都にあるご自宅兼工房を訪問。季節の花に彩られたお庭を前に、個展へ向けての思いをお伺いしました。

着物好きな少女から染色家に

澤田麻衣子さんは、新潟県新津市出身。和裁ができたおばあ様と美容師で着付けもこなすお母様の影響で、小さい頃から着物を見るのが好きで、早く自分も着物が着たい。着物が欲しいと憧れていたそうです。

地元の高校卒業後、短大の美術コースへ進学。その後、文化女子大学に編入学し、3、4年次、テキスタイルコースでシルクスクリーンを学ばれます。当時は、隣のクラスの手彩色による染色の授業が気になって仕方なかったようです。
卒業後は、一旦帰省し、地元でやってみたかった染色の教室に通い始めます。それが、想像以上に楽しく、どんどんのめり込んで行きます。上達の早い澤田さんに先生から京紅型工房を紹介され、迷うことなく京都へ移住。以来、20年に渡り職人として勤務し、2017年に独立。現在も京都にて、自宅兼工房を構え、制作活動をされています。

京紅型工房では「彩色」一筋20年

当時、工房では20名ほどが勤務。入社後、最初の一か月は地入れ、彩色、糊伏せ、水元などの準備を手伝いつつ、工程を学びます。当時は反数も多く、職人さんの作業の下準備や補助をする感じで、水元(糊や余分な染料を落とすために反物を水洗いする工程)も浸かるのは男性でしたが、洗い終わった反物を乾燥室に運ぶ、干すなどは新人の仕事だったようです。その後澤田さんは「彩色」担当に。以来、工房では「彩色」一筋で20年に渡り、仕事を続けてこられました。

自分がどの工程の担当になるかは、会社の辞令によって決まるそうですが、水元は、水に浸かって体が冷えるため、男性の仕事とするなど、女性への配慮も手厚く、非常に働きやすい環境だったようです。
また、先輩たちも休み時間を利用して、それぞれの工程を教えてくれるなど、学ぶ環境も整っており、工房時代は、正社員として月〜金は仕事に従事しながら、工房が開放される土日を使って自身の作品制作する日々を送られます。

染織大賞が独立のきっかけに

型絵染 澤田麻衣子さん 2015年『「きものSalon 」と「銀座もとじ」が選ぶ染織大賞』「銀座大賞」

染織大賞詳細はこちら

2015年に「きものSalon」誌上で公募した『「きものSalon 」と「銀座もとじ」が選ぶ染織大賞』にて、最高賞である「銀座大賞」を受賞。それがきっかけとなり、独立を果たします。
また、独立を機に出品した作品・型絵染着物「夏霞」が、第51回日本伝統工芸染織展にて初出品・初入選の快挙を遂げられました。

作家への弟子入りを経てではなく、澤田さんのように工房から作家の道を歩むというケースは珍しいそうです。職人として着実に積み重ねた20年があるからこそ、その確かな技術と培われた配色バランスが澤田さんの礎になっています。

限られたスペースを工夫してのものづくり

自宅兼工房では、限られたスペースを工夫し、生活と隣り合わせでものづくりをされています。

糊置きする板場はキッチン前にあり、約5.1mの一枚板を支える土台は、カラーボックスを利用し、資料や新聞紙、タオルなど使用する道具を収納。

彩色する際には、どこでも作業できるようにと、工房の社長が手作りしてくださった「枠場」と呼ばれる装置を使用。(枠場は、ベルトコンベアーのように生地の両端を繋ぎ合わせ、張り伸ばして、彩色が終わると反物をクルクル回転させる装置。椅子に腰かけて彩色でき、また作業を連続的にできる利点がある。)こちらは、帯一本がちょうど張れるサイズになっているとのことでした。

「枠場」

着物を彩色する際には、ドアと窓枠に取り付けられた突っ張り棒に生地を張り、クルクル回転させる装置(お太鼓)を装着し、作業されます。

ドアと窓枠に取り付けられた突っ張り棒に生地を張り、クルクル回転させる装置

地染めや反物を干す際も、ドアと窓枠に生地を張り、縦長のリビングをフル活用。
多いときは、部屋をフル活用して、同時進行で4~5反制作されるそうです。

自然への愛があふれる図案

澤田さんご自身が植物好きなことと、ものづくりに於いて、季節の色彩を感じてもらいたいとの思いで、草花は澤田さんの作品にとって、非常に重要なモチーフです。

図案

図案を考える際に必要な素材集めとして、近所の京都府立の植物園(年間パスポートも持っているそうです)に頻繁に通い、その場でデッザンする場合もあれば、色々な構図で写真に撮り、家でゆっくりデッサンされるとのこと。特に多くの草花が芽吹き花咲く春は大忙しで、週2で植物園に通うことも。
また、お花の開花情報をご友人とSNS上で情報交換し、旬の時期に素材集めをされ、それらを組み合わせて図案を考えるそうです。
ご自宅前には素敵なお庭があり、梅の花をモチーフにした作品はご自宅の梅を見て制作されています。

 プラチナボーイ 型絵染 九寸名古屋帯「梅香る」

プラチナボーイ 型絵染 九寸名古屋帯「梅香る」
故郷ではまだ雪深い頃に咲き出します。 庭の紅梅と雪の白さの対比が美しく香りと共に楽しみました。

型彫りが一番好きな工程

澤田さんは「型彫り」が一番好きな工程と仰います。

使用する彫刻刀などの道具も、使いやすい様に刃を2丁にしたりとご自身で工夫し、自作されています。

彫刻刀

型紙は地白と地付の2種類があり、特に地白は、紗張り時にずれたりよれたりするため大変とのことですが、地白の型によって、澤田さんの作品の魅力の一つでもある、“白場を活かす余白”が生まれます。

型紙

一つの型は、2日間程度で彫り上げるそうです。
今までに制作した型紙は150点程度。そのすべては、折り曲がらないよう厚紙にしっかりと挟み大切に管理し、尚且つ、型紙をリスト化し、一目でわかるように管理されています。

型紙をリスト化

複数回、重ねる糊置き

制作工程の中でも一番神経を使うのが「糊置き」です。
糊置きに時間が掛かると、型紙が目詰まりしてしまうので、作業も手早く行います。

防染糊は、もち糊(炊いたもち米と糠・塩に、染まりつかない色粉を混ぜたもの)を使用します。
※染まりつかない色粉とは、青花に似せた化学的に合成したもの。

「糊置き」

通常、紅型などの糊置きは1回ですが、彩色の際に使用する酸性染料は粒子が細かく、色を通しやすいので糊置きを3回程度、重ねて置いています。
1回目は、柄付けするため。2~3回目は、糊の厚みを出すため。
(他の作家さんは、一回置きの方も多いそうです。)

帯の場合、タレ先の無地場の際の生地目を起点として、糊置きを始められるそうです。

糊は乾燥が大敵のため、季節に応じて、気温・湿度調整が欠かせません。糊が割れると彩色の際に染料が滲んだりと、作品の仕上がりを左右する非常に重要な工程のため、最優先で行います。

彩色は目立つ色から

使用する染料は、酸性染料。粉で購入し、色は表現したい作品に合せて感覚で調合されます。
彩色する際には、目立つ色からはじめ、同じ色はその日中に挿し終えます。

彩色

澤田さんの作品の魅力の一つは、瑞々しい感性で表現される色彩です。多色使いの作品は、纏うだけで気持ちを明るくし、大人の女性の可愛らしさを引き出してくれます。

着る人に喜んでもらいたい

「作ったものがお客様に喜ばれることが一番嬉しいです。作品とお客様は赤い糸で繋がっていて、私はそのお手伝いをしています。」と語る澤田さん。

ご自身が着物好きだからこそ、着る方の視点に立ったものづくりは、纏うだけで気持ちを明るくし、大人の女性の可愛らしさを引き出してくれます。

ご自身でデザイン、型彫り、糊置き、彩色、地染めとすべての工程を手がけられ、職人として20年間磨き上げた確かな手技と色彩感覚で作り上げる瑞々しい作品群をぜひ、この機会にご覧ください。


型絵染 澤田麻衣子展 ~花の香るとき~|3月催事

型絵染 澤田麻衣子展 ~花の香るとき~

季節の花を愛でるように、装いにも喜び、出会い、自分らしさを。
2019年2回目個展より5年、澤田さんの心に芽生えた新たな草木の息吹が花開きます。
「お召しになる貴女と赤い糸でつながっていることを想いながら」染め上げた帯の数々。是非、この機会に御覧ください。

 

 

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