男の着物ウエーブ
ここ数年、「男の着物ウエーブ」が徐々に大きくなっていることを感じます。わたしが銀座の地で呉服業を始めて24年になりますが、以前は、男の着物というと、「年間5~10反売れれば精一杯」という状態でした。置いていても売れないのですから、店の片隅に申し訳程度にしかありません。 ところが7~8年ぐらい前からでしょうか、「着物を着たいのだけれど、どこで買ったらいいのでしょうか?」「どんな着物があるのでしょうか?」「仕立ての相談には乗ってくれないのですか?」という声をちらほら聞き始めたのです。 そのおかげで、「もしかしたら男性のほうがより着物の着方、コーディネート、仕立て方法について、親身になって相談に乗ってくれる店を探しているのではないか?」と気付き、男の着物を専門に扱いたいと思うようになりました。男の本音
日本人の半分は男性です。ポツポツ聞かれるようになったこうした声は、実は男性の本音ではないかとも考えたのです。 そこで、男の着物の売り場を徐々に増やしました。洋服のお店のように、反物たんものは柄を見やすくするために広げ、コーディネートのイメージが持てるようなディスプレイを心掛けました。 ちょうど、塙(はなわ)ちとさんが書かれた『男のきもの雑学ノート』(ダイヤモンド社)も、男性の着物ファンが増えるきっかけになりました。彼女の本によって、「男の着物の敷居は高くない」と知れ渡ったのです。インターネットで広がる輪
そして、世の中はインターネット社会になりました。一人では着物の世界に足を踏み入れにくいと感じていた男性たちが、ネット上で仲間をどんどん見つけていったのです。「男のきもの大全」というサイトを立ち上げ、その後『男、はじめて和服を着る』(光文社新書)を執筆された早坂伊織さんもその一人です。彼は着物を心底愛し、街中へもどんどん着ていこうとアピールしました。 それを見た潜在的着物愛好者の方々が、「よし、自分も!」と歩みを始め、ここ2年ぐらいで、男の着物を取り巻く環境が一気に変わってきたのです。 雑誌や新聞、テレビなどで「男の着物」を取り上げていただく機会も、考えられないほど多くなりました。 今や男の着物は、流行の最先端を行く、男の究極のおしゃれだと言えるのです。男の着物人生、始めませんか 一覧