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からむしの名産地、福島県昭和村を訪問いたしました|読みもの

福島県昭和村へ ― 越後上布・小千谷縮を支える「からむし」を学ぶ

開催中の「夏の極み 越後上布展」にあわせ、越後上布・小千谷縮の原料となる「からむし」について学ぶため、福島県昭和村を訪れました。

昭和村では、二十四節気の一つ「小満」の頃に「からむし焼き」が行われます。今回はその時期にあわせ、からむしの栽培から苧引きまで、越後上布・小千谷縮を支える原料づくりについて、保存協会の方よりお話を伺いました。

越後上布や小千谷縮の涼やかな美しさは、織り手の技だけでなく、その前にある原料づくりによって支えられています。原料があってこそ糸となり、糸があってこそ織り手へつながっていく。その始まりの地を訪ねる機会となりました。

越後上布・小千谷縮を支える「からむし」

からむしはイラクサ科の多年草。一般には「苧(からむし)」「苧麻(ちょま)」とも呼ばれますが、昭和村では古くから「からむし」と呼ばれています。

うっすらと青みを帯び、真珠のような光沢を持つことから、「青苧(あおそ)」と呼ばれる地域もあります。

昭和村のからむしは、古くから越後上布・小千谷縮の原料として供給されてきました。栽培と苧引きの技術は、長い年月にわたり途絶えることなく受け継がれ、現在では国選定保存技術にも選定されています。

ユネスコ無形文化遺産に登録されている越後上布・小千谷縮。その美しい布を根底から支えているのが、昭和村のからむしです。

小満の頃に行われる「からむし焼き」

からむし焼きは、先に出た芽を一度焼き払い、根を刺激して発芽を揃えるために行われます。同時に、害虫を防ぎ、焼いた後の灰を肥料とする役割もあります。

焼き終えた後には、畑にたっぷりと水をかけ、有機質肥料を撒き、藁を敷きます。その後、畑の周囲には茅による垣を作ります。

この垣は、風によってからむし同士が擦れて傷つくことや、小動物が入り込むことを防ぐためのもの。畑全体にからむしが均一に育つよう、程よい厚さに整えられます。

保存協会の方のお話では、本来は「小満」の日に行うのが通例とのこと。しかし今年は雨予報のため、農家の皆さんは天気を見ながら、数日前から火入れを始めていたそうです。

自然を相手にしながら、長年の経験と肌感覚で最適な時を見極める。その判断の積み重ねが、上質な原料づくりにつながっていることを感じました。

御年85歳、旧会長の畑へ

今回見せていただいたのは、御年85歳の旧会長さんの畑です。

「18時頃に火入れをします」と伺って向かったのですが、到着した時には、ちょうど焼き終えた畑にたっぷりと水を撒いているところでした。

この後、雨が降りそうだったため、予定より少し早めたとのこと。あと少し早ければという絶妙なタイミングでしたが、それもまた自然相手の営みです。

決められた時間通りではなく、その日の空気や湿度、風を見ながら、最もよい時を判断する。そこには、長年からむしと向き合ってきた農家さんならではの感覚がありました。

生産から苧引きまで

からむしは、七月の土用から八月のお盆前頃にかけて刈り取られます。二メートル近くまで成長したからむしを、早朝、その日に苧引きできる分だけ一本一本刈り取ります。

刈り取ったからむしは、すぐにきれいな水へ浸します。乾燥を防ぎ、皮を剥ぎやすくするためです。この時、水温の低い山水が品質の低下を防ぐと伺いました。

数時間水に浸した後、一本の茎から皮を剥ぎます。きれいに二枚に皮を剥ぐには、熟練の技術が必要です。

剥いだ表皮から繊維を取り出す作業が「苧引き」です。繊維以外の余分な青みを丁寧にこそぎ落とし、「キラ」と呼ばれる光沢を引き出していきます。

博物館では、ほかの産地の苧麻にも触れさせていただきました。昭和村のからむしは、見るだけでも違いがわかるほど、細く、均一で、まっすぐで、やわらかいものでした。

この品質が、土地の水や気候、そして人から人へ受け継がれてきた技術によって支えられていることを、改めて実感しました。

特上品は、ほんのわずか

10月末には品評会が開催され、「かげ苧」と呼ばれる細く長い美しい繊維の中から、「特上」「上」「並」に選別されます。

その中でも、特上品のみが新潟県へ送られ、越後上布・小千谷縮の原料となるとのことです。

1アールの畑からできる量は、わずか7反分ほど。さらに「親苧」と「かげ苧」がある中で、特上となるかげ苧ができることは本当に稀なのだそうです。

織物として完成した姿からは見えにくい部分ですが、その背景には、想像を超える手間と時間、自然との向き合い、そして人の技があります。

原料から、織り手へ

今回、昭和村を訪れ、畑や水、空気、そして人の営みに触れたことで、越後上布・小千谷縮という織物の見え方が変わりました。

原料があってこそ、糸が生まれ、織り手へとつながっていく。

からむしを育て、苧引きをし、選び抜かれた繊維が新潟へ渡り、そこでようやく糸となり、布となっていきます。

完成した反物の涼やかな美しさの奥には、昭和村のからむし畑から始まる、長い時間と多くの手仕事があります。

開催中「夏の極み 越後上布展」

銀座もとじでは現在、「夏の極み 越後上布展」を開催しております。

希少な原料から生まれ、織り手の技によって形となった越後上布の数々を、ぜひ店頭にてご覧くださいませ。

6月6日(土)14時からは作品解説、6月7日(日)10時からはぎゃらりートークを開催いたします。新潟より織り手の方をお迎えし、越後上布のものづくりについて直接お話を伺います。

昭和村のからむしから、新潟の織り手へ。
原料と織り、その両方を知ることで、越後上布の魅力をより深く感じていただける機会となれば幸いです。

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