ご注文・お問い合わせはこちら(11:00〜19:00) 03-5524-3222
銀座もとじ
EN

読みもの

  • 型絵染・遠藤あけみさん 工房レポート

型絵染・遠藤あけみさん 工房レポート

(写真 塩川雄也)

型絵染・遠藤あけみさんの工房に伺いました

2026年の幕開けとなる1月催事は、型絵染・遠藤あけみさんの初個展。
美術大学で日本画を学ばれた後、岩井香楠子氏に師事され、工芸展では数々の受賞を重ねてこられました。
心動かされた自然や動植物の心象を独創的な線や形に描き出し、型絵染として表現する遠藤さん。図案から型彫り、糊置き、彩色まで、すべての工程を一貫して手がけられています。その制作の源を訪ね、神奈川県横浜市にある工房を訪問しました。

遠藤あけみさんのトークイベント
お申込みはこちら

「型絵染(かたえぞめ)」とは
「型染(かたぞめ)」との違い

遠藤あけみさんの作品技法である「型絵染」は、民藝運動の一翼を担った芹沢銈介氏が、沖縄の染物・紅型(びんがた)に着想を得て創始したものです。
芹沢氏が人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定される際、「型染(紅型や江戸小紋は型染の一種)」と区別するために作られた言葉でもあります。

「型の絵」を描くことから始まる型絵染は、より作家の感性や美意識が色濃く反映される技法。遠藤あけみさんの恩師・岩井香楠子さんは、型絵染の人間国宝・鎌倉芳太郎氏に師事されていました。型染を源流とし、戦後に確立された型絵染の系譜は、令和の今、遠藤あけみさんの作品へと静かに受け継がれています。

「あなたは『線』が面白いね」
その言葉を道しるべに
心象風景を線の形で表現

長板が三枚並ぶ作業部屋で、遠藤あけみさんは今回の個展に向けた新作「ある日の庭」の型紙を見せてくださいました。
三角や直線、くるりと丸まった線。彫られた型紙は、それ自体がひとつの作品のようで、モチーフたちの賑やかなおしゃべりが聞こえてくるかのように、生き生きとしています。

「型紙のデザインは白黒で考えます。白黒の形で見たときに綺麗かどうかが後まで響いてきますから。」

空間が少なすぎても多すぎてもつまらない。モチーフに切り取られた「白」の形が美しいかどうかを何より大切にされているといいます。

型絵染 九寸名古屋帯「ある日の庭」

遠藤あけみさんの型絵染は、空間構成の美しさに加え、無数の「線」そのものが饒舌に語りかけてきます。線は単なる輪郭ではなく、感情や記憶を運ぶ存在として、布の上に息づいているのです。

「工芸展に出品し始めた頃、人間国宝の鈴田滋人先生に『あなたは“線”が面白いね』と言っていただいたんです。その言葉で、私の進む道が定まりました。」

直線を用いて植物を表現する試行錯誤を重ね、2006年の初入選から間もない2008年には、日本伝統工芸染織展にて日本工芸会会長賞を受賞。
遠藤さんの「線」は、確かな評価を得ていきました。

第42回日本伝統工芸染織展(平成20年度)/日本工芸会会長賞
型絵染 絵羽着物 紬「春野万華鏡」

遠藤あけみさんの型絵染
制作工程

①デザイン
――写生を経て、心象へ


(この写真のみスタッフ撮影)

アイデアの出発点は写生。対象を正確に捉えることからすべてが始まる、と遠藤さんは仰います。例えば植物なら茎と花の繋ぎ目の特徴など、細かい部分こそ間違えてはいけない。一度きちんと向き合い描き切ることで、形や規則性が身体にインプットされるとのこと。

「最初にしっかり描いていないと、写真を見ただけではデザインにできないんです」

写実を経たうえで、あえてそこから離れていく。花だけを並べる、丸を連続させてみる、縞に展開してみる――。アイデア帳には、そんな思考の痕跡が連なっています。

「写実なら友禅でいい。型絵染として私がやる意味は、写実から少し離れたところにあると思っています。その動植物がある風景がもたらす心象を表現したいですね。」

散歩や森の散策を日常とする遠藤さん。
植物、動物、鳥、昆虫——生きもの全般への尽きない関心が、作品の源となっています。

第71回日本伝統工芸展(令和6年度) 入選作品/東京都知事賞 受賞

型絵染 絵羽着物「あすなろの森」

②型紙づくり
――紙に刀(とう)で描く

型紙づくりは、紙に刀で線を描くような感覚の作業です。
一度に彫る型紙は、基本的に一枚のみ。

渋紙にロウを引き、下図を墨入れした薄美濃紙を貼り、その上から刃を進めていきます。
下図はあくまで目印。刃先の動きに身を委ねながら、一期一会の線を刻みます。

「きれいすぎると、味わいがないように思うんです。」

丸い形の連続も、完全な均一にはしない。時には楕円に近いものがあるくらいの揺らぎが、幾何学的な形に人肌の温もりを与えます。

型紙を彫る様子。下図はあくまで目印、刃先の赴くままに。

彫刻刀。型によって数種類の刀を使い分ける。

③糊置き(型付け)と染色
――布の上で、完成していく景色

糊置きと染色に用いる長板は、江戸小紋の工房から譲り受けたもの。
使いやすい長さに整え、制作の要となっています。

江戸小紋では一反(約13m)を6.5mの長板をフルに使って二度に分けて染めますが、遠藤さんの絵羽着物では、右身頃・左身頃・袖・衿衽の四つに分けて作業を進めます。

糯米を原料とする防染糊。

糊置きの様子。長板に生地を貼って固定し、型紙を置いて専用のヘラで糊を塗布。

糊置きし終えた反物。乾燥したら糊のない部分に彩色し、蒸して色定着後、水洗いで糊を落とします。柄によって「糊置き→彩色→蒸し→水洗い→糊置き→・・」を繰り返す。

染料と筆。液体の顔料や藍の色素を固めた藍棒など。

3枚の型紙を用いて、冷たい雨の中で密やかに花を咲かせたヤツデを表現。
第60回東日本伝統工芸展(令和2年度) 入選作品
型絵染 絵羽着物「春待雨」

遠藤あけみさんの
銀座もとじ初個展では
全29点が一堂に

「楽しい模様にできそうな植物に出会うとアドレナリンが出る」(和織物語『遠藤あけみの型絵染ー線で捉える自然の豊穣』より)という遠藤あけみさん。

「恋するように仕事をせよ」恩師・岩井香楠子さんの言葉を胸に、惚れ込んだものと向き合い制作をしてこられました。
良い色や形の着想が浮かぶと、布団の中でも思考が止まらないことがあるそうです。

「楽しい時間はほんの少し。でも、つらさの中に一割か二割のワクワクがあるから、続けてこられたのだと思います。」

遠藤あけみさんならではの、線と心象が織りなす世界。
1月の催事では、その作品群を一堂にご覧いただけます。

ぜひお越しいただき、実物ならではの息づかいをご体感ください。


遠藤あけみさんの集大成となる初個展
工芸展入選作も多数展示いたします

日々の暮らしの中で出会う草花や昆虫を丹念に観察し、図案を考え、型を彫り、染め上げる、遠藤あけみさんの型絵染。
染色家・岩井香楠子氏のもとで研鑽を積まれ、日本画で培った確かな描写力を礎に、線を主体とした構造やリズムが楽しく美しい模様の世界へ誘います。
工芸展受賞作品をはじめ、絵羽着物、名古屋帯、角帯まで一堂に展示いたします。

作品一覧はこちら

イベントへのお申込みはこちら

「和織物語」はこちら

このたび店舗やオンラインショップでご紹介させていただく受賞作・入選作は、日本工芸会ウェブサイトにも掲載されています。
https://www.nihonkogeikai.or.jp/works/8770/
※外部サイトに移動します。

会期:2026年1月16日(金)~18日(日)
場所:銀座もとじ 和染、男のきもの、オンラインショップ
〈お問い合わせ〉
銀座もとじ 和織・和染(女性のきもの) 03-3538-7878
銀座もとじ 男のきもの 03-5524-7472
(電話受付時間 11:00~19:00)

フォームからのお問い合わせ

ぎゃらりートーク

日 時:2026年1月17日(土)10時~11時【受付中】
登壇者:遠藤あけみ氏、外館和子先生(多摩美術大学教授・工芸史家)
会 場:銀座もとじ 和織
定 員:40名様(無料・要予約)

お申込みはこちら

作品解説

日 時:2026年1月18日(日)14時~14時半【受付中】
会 場:銀座もとじ 和織
定 員:10名様(無料・要予約)

お申込みはこちら

在廊

2026年1月16日(金)~18日(日)11時~18時


遠藤あけみさんのご紹介

動植物のかたちを線で捉え
抑制の効いた色使いで型絵染に昇華

神奈川県川崎市生まれ。多摩美術大学絵画科日本画専攻を卒業後、染色家・岩井香楠子氏に師事し、型紙による防染を用いた型絵染の技法を学ばれました。日本画で培われた確かな描写力を礎に、線を主体とした表現によって自然のかたちを捉え、植物や生きものが持つ構造やリズムを、独自の図案として丁寧に昇華されています。
日々の暮らしの中で出会う草花や昆虫を丹念に観察し、線の強弱や反復、余白を生かした構成により、着物や帯という立体性を意識した意匠を生み出されています。抑制の効いた色使いと凛とした線描が織りなす型絵染により、遠藤あけみさんならではの模様の世界を築かれています。

作家ページはこちら

遠藤あけみさん 年譜

1956年 神奈川県川崎市生まれ
1978年 多摩美術大学絵画科日本画専攻卒業
    岩井香楠子氏に師事し型絵染めを学ぶ
2000年 第16回シルク博物館全国染織作品展にて佳賞
2002年 第57回新匠工芸展にて 新人賞
2006年~ 第53回日本伝統工芸展に出品 初出品 初入選
2008年 第42回日本伝統工芸染織展にて工芸会会長賞
2009年 日本工芸会正会員に認定される
2015年 第49回日本伝統工芸染織展にて京都新聞賞
2016年 第50回日本伝統工芸染織展にて京都新聞賞
2022年 銀座和光 型染作家4名による「型一会」展
2023年 第57回日本伝統工芸染織展にて日本経済新聞社賞
2024年 第71回日本伝統工芸展にて東京都知事賞
2024年 シルク博物館 型絵染8人展

遠藤あけみの型絵染 ― 線で捉える自然の豊穣|和織物語

多摩美術大学教授の外舘和子先生に取材執筆いただきました。全文公開しておりますので、ぜひご覧ください。

遠藤あけみの型絵染 ― 線で捉える自然の豊穣|和織物語

和織物語を読む

 

商品を探す Search
Products