消えゆく灯を消さない。若き養蚕農家が描くシルクの未来
プラチナボーイの作品は、織や染の現場だけで完成するものではありません。
そのはじまりは、桑を育て、蚕を育て、繭をつくる養蚕の現場にあります。
銀座もとじが大切にしているのは、トレーサビリティ=「どこで、誰が、どんな思いでつくったのか」が見えるものづくり。
プラチナボーイ20周年記念展では、作品そのものの魅力に加えて、この“出発点”にも光を当てたいと考えています。
そして今回、会長から店主へと歩みが引き継がれてきたように、養蚕の現場でも、次の世代へとバトンが渡されています。
プラチナボーイを支えるのは、店主と同世代の養蚕農家——浅井広大さんと高橋直矢さんです。
海外の経験から「養蚕」へ。浅井さんの視点
浅井さんの歩みは、少し意外なところから始まります。大学卒業後、JICA協力隊としてネパールへ。現地では養蚕ではなく、きのこ栽培の技術普及に携わっていました。
現地が大きな被害に見舞われた時期には、浅井さん自身も募金を集め、屋根や食料の手配など、復興支援に携わりました。
そのなかで目の当たりにしたのは、失われた日常を少しずつ取り戻していく人々の強さと、暮らしを立て直していく底力。そうした姿に背中を押されるように、「自分も農として生きる」という覚悟が固まっていったといいます。
帰国後、富岡との縁をたどりながら養蚕へ。新規就農として現場に入り、いまは研修や見学を受け入れる拠点づくりにも関わっています。
浅井さんの面白さは、養蚕を“内側”だけで語らず、外の世界で得た視野で捉えているところ。数値や記録も大切にしつつ、最後に頼るのは五感。音、匂い、手触り──生き物と向き合う感覚を言葉にできる方です。

養蚕農家 浅井広大さん
100年続く家業の4代目。高橋さんの誠実さ
高橋さんは、富岡で100年近く続く養蚕農家の4代目。家業として農業を継ぎ、養蚕を軸にしながら原木しいたけや玉ねぎなども手がけ、暮らしを成り立たせています。
繭づくりの理想を尋ねると、「大きくて揃っていて、白くて締まった繭」と、まっすぐな答えが返ってきました。そこにあるのは、派手さではなく、積み重ねの仕事への誇りです。
プラチナボーイについては、名前の印象とは裏腹に「飼いやすく、白い繭ができる」と語ります。
養蚕の未来には不安も隠さず、それでも“きれいな白い繭ができた瞬間”にやりがいを感じる。その率直さが、聞く人の心を動かします。

左から店主 泉二啓太、養蚕農家 高橋純一さん、直矢さん
プラチナボーイが“作品”になるまでの、最初のバトン
浅井さんと高橋さんは、それぞれ違う道から養蚕へ辿り着きました。
一人は海外の経験から、もう一人は家業の歴史から。入口は違っても、共通しているのは「毎年が勝負」であることを知っていることです。
気候の揺らぎ、日々の微差、そして生き物の繊細さ。だからこそ、手を抜けない。油断できない。そこに、絹の品質が宿ります。
プラチナボーイ20周年記念展の作品は、そうした日々の積み重ねの先にあります。
“誰が育てた繭なのか”が分かることは、安心のためだけではなく、作品をより深く味わうための入り口でもあります。
3月14日「蚕糸の日」ぎゃらりートークへ
会期中の3月14日(蚕糸の日)は、養蚕農家さんをお招きし、ぎゃらりートークを開催いたします。作品の前で、育てた人の声を直接聞ける機会は、そう多くありません。
浅井さんは、繭が糸となり作品へと姿を変え、やがてお客様の肌にまとわれていく——その道のりを「うまく伝えられたら」と話していました。
高橋さんも、養蚕は「繭を出したらおしまい」になりがちな仕事だと言いながら、今回はその“先”に触れられることを楽しみにされています。自分たちの繭が着物や帯となり、実際に身につけられる場に立ち会えることが、何よりの喜びだと語ってくださいました。
当日は、ここでお伝えした内容からもう一歩踏み込んだ“現場の話”も交えながら、プラチナボーイの原点をたどります。作り手の言葉を聞いたあとに作品を見ると、見え方がきっと変わってくるはずです。ぜひこの機会にお越しください。
プラチナボーイ20周年記念展「源」
会期:2026年3月13日(金)~3月22日(日)
場所:銀座もとじ 和織・和染、男のきもの、オンラインショップ
ぎゃらりートーク
①「お蚕さん―繭からのものづくり」
日 時:3月14日(土)10:00~11:00【開催終了】
登壇者:養蚕農家 高橋直矢氏、浅井広大氏
碓氷製糸株式会社 代表取締役社長 安藤俊幸氏
一般社団法人富岡シルク推進機構
専務理事兼事務局長 長谷川直純氏
銀座もとじ 会長 泉二弘明、社長 泉二啓太
会 場:銀座もとじ 和織・和染
(定員40名様/無料・要予約)
②「纏う喜びをお客様へ」
日 時:3月22日(日)10:00~11:00【開催終了】
登壇者:髙橋寛氏(友禅)、生駒暉夫氏(友禅)
荒川眞理子氏(型絵染)、菊池宏美氏(江戸小紋)
平山八重子氏(紬織)、大髙美由紀氏(紬織)
柳晋哉氏(紬織)
銀座もとじ 会長 泉二弘明、社長 泉二啓太
会 場:銀座もとじ 和織・和染
(定員40名様/無料・要予約)
【お問い合わせ】
銀座もとじ女性のきもの 03-3538-7878
銀座もとじ男のきもの 03-5524-7472

プラチナボーイの作品をすでに愛用中のスタッフより、出会いから感想までをご紹介いたします。
2026(令和8)年度
プラチナボーイ物語 春繭ツアー

プラチナボーイの糸による、あなただけの一枚を。完成までの一年間、自ら餌やりをした蚕の繭が糸となり、生地へと織り上がる過程を感動とともに体験できます。各地の風土に触れ、作り手と交流しながら、純国産の上質な絹への理解を深め、着物文化の魅力を体感する、あなただけの物語です。
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