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《動画公開中・和訳あり》NHK WORLD「FRONTRUNNERS」が五代 田畑喜八さんを特集|メディア

各分野の第一線で活躍するプロフェッショナルが、現在に果敢に挑戦するヒューマン・ドキュメンタリー『FRONTRUNNERS』にて、五代 田畑喜八さん特集が放送されました。放送後、期間限定で公式サイトで動画が一般公開されています。ぜひご覧ください。

動画はこちら(公式サイト)
※外部サイトに移動します


全編和訳

田畑喜八 都をどり

「都をどり」は、京都の春を彩る伝統的な催しです。毎年4月には若い舞妓さんの踊りを見ることができます。みんなお揃いで、水色地に春らしい桜柄の着物を着ています。

都をどりを見守る 五代田畑喜八さん

そして、その踊りを誇らしげに見守っているのが、染色家の五代田畑喜八氏。50年以上前からこの舞台衣装を任されています。

田畑氏「最後のシーンは春らしく桜の背景になるから、着物はあの色(水色)が良いかなと思ったんです」

観客「本当に素晴らしい。踊りも衣装もとても素敵でした。色鮮やかで美しかった」

毎年、田畑氏が衣装の企画デザインをされ、
一枚一枚の着物の身頃から袖まで魅力的な柄を考えます。
田畑氏「抽象的な柄ではなく、古典的でありながら、少しモダンなひねりを加えたものにしています」

田畑喜八 都をどり 井上八千代さん

都をどりの舞台を監督されているのは、井上八千代さん。日本舞踊の人間国宝として知られています。毎年、都をどりの振付けをし舞妓さん達に教え、衣装は田畑先生に依頼されています。

井上八千代さん「舞台に立った時に舞妓さんが生きるデザインを、88才になった今でも先生が全て考えてくださっている、こんな嬉しいことはございません」

田畑喜八氏は、200年以上の歴史を持つ友禅染の田畑家の五代目です。筆で一本一本の線を描き、図案から創作の全てを田畑喜八氏が自らの手で行っています。


35歳で家業に入り田畑家の技術を学び、数多くの素晴らしい作品が生まれました。


こちらの婚礼衣装では、金色や温かい色調で扇や太鼓などの縁起の良い柄がたっぷりと表現されています。


こちらの着物は、藍色の繊細な濃淡で川辺の風景が染められています。


こちらは若い女性向けの着物で、黒地を背景にカラフルな貝が並び遊び心を感じます。


こちらの着物は、写実的な二羽の鶴と松が表現されています。
田畑氏にとって着物は一枚のキャンバスであり、その上に数多の異なる世界が繰り広げられるのです。

先日、田畑氏の新プロジェクトが始動するということで同行しました。泉二啓太は東京・銀座にある呉服店の二代目。彼は、夏に展示する予定の特別な着物について相談しに来ました。


泉二「今回は『実り』というテーマで
先生は88才『米寿』ということで、実っていくものを・・」
田畑氏「全て植物はすべて実りというかな、『水』によって生かされているので・・」
泉二「どんなのがいいですかね」
田畑氏「うまく『水』を使って。例えば・・」

この写真集には、田畑家が所有する江戸時代の着物コレクションが載っています。
田畑氏「松竹梅、松皮に竹に梅ですけどね、こういうおめでたい柄をうまく水と組み合わせたら・・」
田畑氏は、この着物を手掛かりにして新しい作品を作ることを決めました。


書籍の中で紹介されていた17世紀に作られた着物の実物を蔵から出して飾ってみます。

着物の右下に松皮の柄があり、その上に梅の花の刺繍が連なっています。松皮の上の金色の刺繍は竹の節をイメージしています。

田畑氏「日本の芸術の良さというのは、はっきりと直接的に表現するのではなく、余韻を感じさせるところにあります。この作品では、そのままの形であるのは梅の花だけで、松と竹は比喩的に表現されています。古典を基調にしながらも新しさがある、素晴らしいものにしていきたい。」

2023年春に88歳の米寿を祝う会が催され、日本中のファンが集まりました。


大勢のお客様が、それぞれお気に入りの田畑デザインを纏って参加されています。近年着物を着る人は減少しているものの、「田畑喜八」の名前は強大なセリングポイントになります。


お客様「この着物は今日のような晴れの日に着るのが好きです。代々続く藍の染料は田畑家の家宝だと先生はいつも仰っています。」

こちらの母娘のお客様も田畑喜八作品をお召しになっています。
お客様「年を重ねるごとに、似合い方が変わるというか・・若い頃は着物の力で輝かせてくれましたし、年をとっても今の自分に馴染むので、魔法のようだと思っております」

「この着物は20代から着ているので、もう50年以上になります。」
「彼女の母親もファンでした」
「私が着させていただいて、今では娘も着る。着物は三世代でも着られます。お洋服はサイズが違うと着られないですが、着物なら大丈夫ですので。着物って良いですよね」

「一生懸命作った着物を皆さんが着ているのを見るととても嬉しいです。」


泉二啓太さんと新デザインについての打ち合わせをしてから1ヶ月が経ちました。
「皆、波と組み合わせてやってみました。こういう感じもいいかと」

今日は、最終的なデザインを決める日です。
「すごく素敵ですね、わかります」
「これを元にブラッシュアップしましょう」


こちらが田畑氏の最終デザインスケッチです。右側にはダイナミックな水の滝が描かれ、一方左側には竹、松、梅の古典的な要素が配されます。

次のステップは、このデザインを実物大の着物で再現することです。糸目糊による下書きの輪郭は、最終的な色挿しの後で洗い流すことができます。


流水文様がこの着物のデザインの中心要素となります。

田畑氏にとって「水」とはどういう存在でしょうか・・

田畑氏「水というのは、この世で一番恐ろしく、一番大切なものだと思います。暑い中では水蒸気になり、寒ければ固体、氷になる。それ自体は形がない。水は私にとって憧れ、尊敬するものです。インスピレーションの源であり、デザインのほとんどに取り入れています。」

田畑氏「こっちです」
基本のデザインを描き終わった後、
田畑氏は着物を持ってどこへ行くのでしょう
田畑氏「糸目糊置きの駒井さんのところへ行きます。」


「糸目糊置き」の輪郭は、生地を染色する準備において重要なステップです。

駒井達夫氏はこの道40年のベテランです。厳選した特別な糊筒を、デザインの個々の線ごとに使い分けます。この米から作られる糊は、色がはみ出すのを防ぎます。
駒井氏は長年にわたり、田畑家の数多くの着物制作に携わってきました。
一つ一つの細かい部分を丁寧に仕上げていきます。

駒井氏「水の勢いを感じさせる線を見せなければなりません。その激しさを失わないように細心の注意が必要です。何年も一緒に仕事をしてきたので、彼が何を望んでいるのかは大体わかっています。」


田畑氏の工房は毎日12 時に昼食の休憩となります。毎日、工房のアシスタントと共に食事をとります。
田畑氏は、この歴史ある田畑家の五代目であり今年88歳を迎えながら、後継者がいないのです。
田畑氏にはご子息がいらっしゃいますが家業には入らないことを選びました。

田畑氏「当初は大学卒業後に家業へ入る予定でしたが、結局、興味が持てなかったのでしょう。この仕事に未来はない、やらないと。それに私はちょっと厳しすぎたかもしれません。息子はあらゆる理由をあげて、家業を継ぐことを避けました。」

田畑氏「私の父は私に何をすべきか決して教えてくれませんでした。もし父親が私に継ぐように言っていたら、おそらく断っていたと思います。

父はすべてを私に委ねました。そして最終的に、私はこの仕事がこの家の長男としての私の義務であることに気づき、それをもとに学校などを選びました。この仕事は自​​発性がなければできません。」

自身が田畑家の最後かもしれないと悟り、田畑氏は新たな取り組みを始めました。
工房の前に人が集まっています。京都の小学校に通う子どもたちです。


田畑氏「ここで行うものは京友禅と呼ばれます。友禅染の一種です。そこに着物がかかっているのが見えますか?あれには6か月くらいかかりました。」

このワークショップは、京都を拠点とするNPOとのコラボレーションにより、子どもたちに友禅染の世界を知ってもらうことを目的として開催しています。

田畑氏「花から液体を搾り、それを綿に染み込ませます。それを水に溶かして下絵に使います。」

子どもたちが見ているのは、200年も前に田畑家で使用されていた当時のデザイン画集です。

田畑氏「これを見てください。この模様は全て筆で描いています。とても細かいですね。このデザインです。見えますか?」
子供達「すごい!」


次に、田畑氏は彼らを地元の別の工房に連れて行きます。

子供達「今、何歳なんですか?」
田畑氏「88歳、なんで?」
子供達「もっと若いかと思った!70かと思った」
田畑氏「88歳だよ!」
子供達「75歳くらいかと思ってた!」
田畑氏「75?(笑)それは中途半端だな」


着物の生地を染める場所です。
糸目糊を置いた細長い布地に、大きな筆で色を伸ばして染めていきます。


染め師「だいたい上、中、手前、と、同じ回数で色を染めるように意識を持って進んでいくときれいに染まります。」
田畑氏は、伝統的な京友禅のあらゆる側面を子供たちに見せようと努めています。

子供達「伝統文化についてたくさん学ぶことができて楽しかったです。」
子供達「この作業は初めて見ました」
子供達「今度は私も作ってみたいと思います。」
子供達「今のサングラス姿カッコ良いです。」
田畑氏「だって70歳に見えるって言ってたもんね。私は88歳、君は何歳?」
子供達「私は9歳です。」
田畑氏「9歳か、まだ80年近くあるね」

田畑氏「彼らはとても熱心に聞いてくれます。もちろん興味を持ったからといって、子供たちがその工芸を始めるわけではありません。しかし心の中には残るので、今学ばせることが重要です。」


田畑氏「これは色見本です。」

田畑氏の銀座での個展用の作品は、ほぼ彩色が完了しています。彼は長年使い続けてきた色見本から色合いを選択します。

田畑氏「たとえば都をどりの着物の色について話し合う時、具体的な色の参考が必要です。」

田畑氏「これは 2009 年に使用された色です。すべてを保存しておかなければなりません」

田畑氏「『藍』だけでも色は無限にありますから、頭の中にイメージする色を表現できなければなりません。色を口頭で他の人に説明することはできません。人は色を『聞く』ことができません。だからこそ、イメージする色を伝えるためにこのような色見本が必要です。」

私たちは田畑氏と一緒に京都の市街へリサーチに出かけました。さらなる色のインスピレーションを得るために田畑氏は大きなデパートの化粧品売り場へ向かいました。


彼は何を見にここに来たのでしょうか?

田畑氏「ここにある口紅はこれだけですか?」
販売員「はい、そうです。」
田畑氏「どれくらいの色があるの?」
販売員「たくさん・・100色近くございます。毎年、セレクションは変わります。」

田畑氏は販売員に現在のカラートレンドを尋ねます。

田畑氏「若い方、年配の方で好みは変わりますか?」
販売員「はい。若い人は艶のあるものを好みます。」


田畑氏「女性の着物や衣装に関して言えば、それを引き立てるのは口紅の色です。それはケーキの上のさくらんぼと同じくらい重要です。そのことについて聞きに来たんです。」

作業場に戻ると、田畑氏は銀座での個展に向けて着物の色挿しを始めました。

友禅衣装に命を吹き込む工程です。生地を下から温めることで乾燥を早めます。
田畑氏「私はこの小さな七輪を使っています。」


電気を使う人もいますが、田畑氏は竹炭を使うことにこだわっています。炭火で焼いた方が鶏肉や魚が美味しいのと同じ理屈です。

五代 田畑喜八作品の特徴は、さまざまな色合いの藍で彩られることです。「田畑家の藍」という言葉が生まれたほどです。

田畑氏「藍というのは、すべての女性に似合う色です。どの色がどこでどのように機能するかを決定するのがとても重要です。」

2か月後、完成した作品が展覧会のために東京へ到着。


泉二「田畑喜八さんの小袖が届きました。開けてみましょうか。」

泉二「おおすごい!刺繍もかなり贅沢に入っていますね」


作品名は「波に松竹梅」。江戸時代の寛文小袖が現代に甦りました。
左下には梅の花が描かれており、鮮やかな珊瑚色と金色の刺繍、そして微妙に変化する藍色の背景。
右側には大胆でダイナミックな波のモチーフが描かれています。全体的には色味を抑え、洗練された表現になっています。

展覧会のオープニングにあたり、田畑氏自ら東京へ。大勢の熱心なファンが迎えます。


田畑氏「この様式は寛文小袖として知られています。」
インスピレーションの元となった江戸時代の寛文小袖も展示されました。


田畑氏「前から見るか後ろから見るかでかなり印象が変わります。」
参加された方の中には、田畑氏の新作を試着される方も。そのまばゆいばかりの魅力を存分に味わうことができます。

正面から見ると梅の花が描かれていますが、後ろには流水のデザインが施されています。

お客様「色が綺麗です。柄もたくさん入っていますが、うるさくないんです」

お客様「今の時代に合ったダイナミックさを感じて、それでいて古典的な雰囲気もあって、素晴らしいです。」

泉二「着ると違いますね!」
田畑氏「もちろん!着てみないと!」

田畑氏「飾ってあった時は似合わないと思ったのですが、着てみると意外と似合いますよね」

染匠 五代田畑喜八氏を駆り立てるものは何なのでしょうか?友禅染を代表する「フロントランナー」として・・


田畑氏「自分のすべてを捧げることに本当に誇りを持たなければなりません。『これで十分』と満足することなく、続けなければなりません。今いるところは常に途中、単なる停留所です。」


田畑氏「すべてのことに、最後の瞬間まで魂を込めなければなりません。それはどんな仕事でも、あなたの今やっている仕事でも同じです。何事にも魂を込めることです。」

 

NHK WORLD「FRONTRUNNERS」が五代 田畑喜八さんを特集

副題
・英語タイトル:Kyoto Kimono Dyer - Tabata Kihachi
・日本語タイトル:京友禅師・五代 田畑喜八 着る人を輝かせるために

放送日

NHK WORLD 全4回放送 30分番組
2023年9月27日(水)
①11:30~ ②16:30~ ③22:30~ 
2023年9月28日(木)④早朝4:30~

※9/28以降は動画配信サービス(VOD)でご覧になれます。

NHK BS1
2023年10月1日(日) 早朝4:30~4:58(英語)


〈お問い合わせ〉
銀座もとじ和織・和染 03-3538-7878
銀座もとじ男のきもの 03-5524-7472

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五代 田畑喜八 米寿記念展「実り」|12月催事

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