久米島紬に情熱を傾ける織子さん達の挑戦|和織物語

伝統的なツバメの絣を織り込んだ左から泥染め、夏用の薄物、ユウナ染めの久米島紬
伝統的なツバメの絣を織り込んだ左から泥染め、夏用の薄物、ユウナ染めの久米島紬

周囲48キロの小さな島、久米島。
この島には織子さん達が思いを込めて織り成す
「久米島紬」がある。

久米島紬の伝統

都会的街並に映えるシンプルな格子柄の久米島紬左:泥、藍染め右:椎木染め

染めの原料を集めることから始まり、絣括り、糸染め、織り、仕上げのきぬた打ちまでの全工程を、分業体制を取らず、たった一人でこなす久米島紬には、織子さん達の熱い思いが込められています。

久米島紬の起源は15世紀の中頃、「堂之比屋」という人物が中国に留学し、養蚕の技術を修めて帰国し、絹織物を織り始めたのがきっかけと言われ、日本の織物の発祥の地と言われています。

500年の伝統を守りながら、その伝統に甘んじることなく、次の世代にも受け入れられる久米島紬づくりに情熱を掛ける久米島の織子さん達。

1992年には島に「ユイマール館」ができ、久米島紬の技術を後世に伝え保存していこうと島全体が一丸となって後継者育成に力を注いでいます。

久米島紬の6つの特徴

1.全工程を一人で成し遂げる

久米島紬の織子さん達は図案作りから仕上げのきぬた打ちまで一人で行います。まず図案を描き、色を決めます。そして自ら山に入って染の原料となる植物を採取します。

採取した植物は砕いてチップ状にして、何時間も掛けて自宅で煮詰めます。寝ている時間以外は総てこの煮出す作業に費やします。染料となる煮汁の濃度は自らの経験が頼りです。失敗は許されないので目が離せません。

次に糸を括り、絣を作ります。ビニールと木綿の糸を使って図面のとおりに丹念に括っていく作業は、根気のいる仕事です。また、力を均等に入れて括らなければ染料が染み込んでしまい綺麗な仕上がりにならないため、指先に力を込めます。絣括りを始めると、どんなに熟練した人でも、すぐに指先が木綿糸で切れ血がにじんで来るのです。それでも織子さん達は、指にバンソウコウを貼って絣を括り続けるのです。

絣括りが終わると糸の染めに入ります。これも植物相手の仕事で、気温や湿度にも左右されるので、織子さんの熟練度合いがはっきり出る作業です。染め上がった糸は、機に掛られ織られていきます。

2.地色も絣糸も総て草木染め

伝統的な絣柄と泥染めの黒で織り上げた久米島紬

久米島紬の独特な色合いは「草木染め」ならではのもので、肌に優しく、化学染料では決して出せない色です。この染織を施すと糸に膨らみが出て、保温力と保湿力が増します。草木染めは限られた色しか出せませんが、久米島では「複合染め」に挑戦し、根気よく重ね染めをして、より深みのある多様な色を出す工夫をしています。これは久米島紬ならではの挑戦です。

3.久米島紬独特の「銀ネズ色のユウナ染」

久米島紬の中で銀ネズ色の紬をご覧になった事がありますか?あの綺麗な銀ネズ色は、久米島で取れるユウナの幹を使います。まずユウナの幹を15~20センチの輪切りにし、それを焼いて木炭化させます。その後ミキサーにかけて粉々に砕き、水に溶かして豆汁を入れ、目の細かい布でろ過して染液とします。粒子が細かければ細かいほど染着力が良くなり、水洗いが楽に行えます。

このように細部にわたって手を掛けて作られるユウナの涼しげな銀ネズ色は、久米島紬の大きな特徴のひとつです。

4.絣柄の原点は、日々の生活用具から

尚王朝の時代に「御絵図帖」と言うものが作られました。絣の柄は大体が生活用品の中から作られたもので、当時は「御絵図帖」の指定の絣柄に沿って織られていました。現在も「御絵図帖」は大事に保管され、その柄の組合せで伝統的な絣柄が作られています。

5.阿嘉の泥田の泥を使った泥染め

10月~12月の乾燥した時期に阿嘉の田んぼの泥を織子さん達が家に持ち帰り、島の水を使って薄め、ろ過して不純物を取り出した液で泥染めをします。同じ黒でも深みを出そうと思えば、染めては干し、染めては干しの作業を何度も繰り返します。この作業も織子さんが自ら行うのです。

6.仕上げは「きぬた打ち」

久米島紬の大きな特徴は「きぬた打ち」です。「きぬた打ち」を行うことによって織物全体の風合いが良くなります。
都会的街並に映える シンプルな縞柄の久米島紬 左:椎木染め 右:福木、楊梅、泥染め
都会的街並に映える
シンプルな縞柄の久米島紬
左:椎木染め
右:福木、楊梅、泥染め

織りあがった反物は、最後の糸始末を終えてから屏風だたみにして、シワが出来ないようにすばやく洗濯され、天日で自然乾燥します。八分乾きになったら地直しをし、布目を整え、綿布で包んで石の上に乗せます。

餅つきに使うような重さ4~5キロもある杵を、肩から担って大きく振り落とし、綿布で包んだ反物を音高らかに打ちまくるのです。これも織子さんの仕事です。2人がペアになり交互に力一杯たたきます。

最初は5分ほど叩き、反物をたたみ直し内側と外側の位置を3~4回取替えて、さらに30分ほど400~500回たたき続けます。このため、糸も織もしっかり出来ていないと、「きぬた打ち」に耐えることは出来ません。

「きぬた打ち」は紬の光沢と風合いを左右する重要な仕事です。「きぬた打ち」をすることによって身体に着物が馴染み易くなり、生地全体に絹織物独特の光沢が出るのです。また布面に折線が出ないような工夫と、杵の角で布を切らないように平行に打つなど細心の配慮が必要となります。織物最後の良し悪しを決める「きぬた打ち」、力だけでは出来ない大切な仕上げの工程です。

品質を守る「鬼の検査員」

「鬼の検査員」と呼ばれている久米島紬の検査員は、総て織子暦20年以上の熟練者です。基準試験に合格し、ひと目で粗悪品を見つける目を持っている人ばかりです。彼女達は、「粗悪品は絶対に島から出さない」「品質は絶対に維持する」「久米島紬の技術は保存する」と言う執念とも言える信条を持って仕事をしています。
伝統的なツバメの絣を織り込んだ夏用の薄物
伝統的なツバメの絣を織り込んだ夏用の薄物

検査員は、たった一人で全工程を成し遂る織子達の苦労が痛いほど分かっていながら、責務を果すため「鬼」となって基準を守っています。

久米島紬は「鬼の検査員」たちの努力と指導で支えられているのです。