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帽子作家・清水晶子さん|泉二の一口対談

第28回:帽子作家 清水晶子さん(SHIMIZUAKIKO)

清水晶子さん

<清水晶子さんプロフィール>

フランスで、オートクチュールの帽子デザインと製作技術を習得した帽子デザイナー。フラワーアレンジメントの仕事を経て、27歳の時「生涯出来る仕事」として母親が手掛けていた「帽子製作」を選ぶ。予備知識もないまま単身渡仏。語学学校に通いながら1年間フランス中の帽子店を巡り情報を集める。帽子職人のほぼ全員が薦めたMod’Art International deParisに入学(当時は帽子製作の専門学校)。そこでオートクチュール帽のデザインと製作技術を学ぶ。2004年「フランス職業適性証」を取得する。帽子アトリエ「マリーメルシェ」にて研修開始。カジュアル帽子から正装用帽子まで幅広く作製を手掛ける。2005年パリ国立オペラ座内のアトリエにて研修開始。15年間専属でバレエの帽子製作をしていた第一人者コリーヌの元で最高の技術とデザインを学ぶ。この年、世界で3代帽子のコンクールの一つと言われる仏ファッション誌「マダム・フィガロ」主催の帽子コンクールにて2位受賞(日本人初)。同年、コンクールオクターフォイユ(フランス)主催の帽子コンクール2005で1位獲得。2006年フランスの老舗帽子店アトリエ「MICHEL」にて研修開始。シャネル専属の帽子製作の傍ら「ルイ・ヴィトン」「エルメス」「バレンシアガ」の帽子も製作。2006年帰国、自己ブランド「SHIMIZUAKIKO」を立ち上げ現在に至る。

2010年秋冬男性用お洒落な帽子が出来ました

泉二:

今回は帽子デザイナーの清水さんとお話をさせていただきたいと思います。本日はご足労頂きありがとうございます。清水さんとは、息子の啓太が友人を介してお目に掛かったのがご縁でしたね。その後2008年に私どものお店にお越しいただき私も初めてお目に掛かりました。とっても良い帽子を作っていらっしゃるから「是非、男のお洒落アイテムとして」と製作をお願いをして、2009年の秋冬のソフト帽から入れていただきました。もう1年になりますね。

清水:

そうですね。早いです。こちらこそいつもお世話になりありがとうございます。
清水晶子さん(右)と店主 泉二(左) 清水晶子さん(右)と店主 泉二(左)

泉二:

清水さんが製作する帽子はとっても被り易くてお洒落で形が綺麗だから私も愛用しています。帽子は「和のダンディズム」。だからこそ粋にカッコよく被りたいなと思っていた所に、清水さんの帽子と出会いました。
清水さんのは手縫いの手作りで、一点一点しっかり作ってくださっているから頭を締め付けず被り易い。形も綺麗で被ると最高にお洒落ですよね。

清水:

ありがとうございます。そう言って頂けると手作りしている甲斐があります。

泉二:

初夏にお願いした和のアイテムにぴったりの「パナマ帽」は天然の草独特の編み目が清涼感を演出するし、通気性も耐水性も良い。特に清水さんの作る「パナマ帽」は和のダンディズムを演出するアイテムとして最高でした。お客様の反応もとっても良くて素晴らしかったです。そして今秋は、秋の装いにぴったりの「ソフト帽」を2種色違いの6点製作してくださるとのことで大変楽しみにしていました。

清水:

今回は19世紀前半には絶滅寸前だったというビーバーを手に入れる事が出来たのでそれを使って色違いで3点、ウサギを使ったものを色違いで3点の6点のソフト帽を製作しています。出来上がり次第各種1点ずつ納品しています。ビーバーで作る帽子は現在では貴重ですね。本当に軽くて被り易いんで皆さんが欲しがるのも分かります。私も久しぶりに手掛けられて嬉しかったです。

泉二:

先日出来上がったばかりのビーバーのソフト帽を見せて頂きましたが、おっしゃる通り実に軽いのでビックリしました。評判がいいですね。

清水:

今回はビーバーのソフト帽にはシルクのリボンを、ウサギのソフト帽にはコットンのリボンを共色でつけてみました。帽子の内側についている皮のリボンは両方とも全て手縫いです。ここを丁寧に縫わないと「頭が痛い」とか「きつい」と言う状況になってしまうんですね。日本人の頭は西洋人に比べると丸いので日本人用の型で作ってしまうと全体的に丸い印象になってしまうので私は敢えてフランスで使っていた縦長の楕円の型で作るようにしています。と言うのもその方が被った時に横に広がっても納まりが良いですし、何と言っても素敵なのです。
清水晶子さんの作品 清水晶子さんの作品

泉二:

私も近年は「着物と帽子を合わせるのはお洒落だ」と思い奨励してきました。大正から昭和の初頭は日本人の97%が帽子を被っていたという記録があるんですよね。昔の人は西洋のカッコイイものを取り入れて自分達流に着こなしていくというのがとっても上手だったんですね。戦後は無帽の時代となり被らないのが当たり前になって来ましたが、私は昔の写真とかを見て「やっぱり! お洒落な男性こそ帽子だな」と思っていました。 自分のセンスや体形にぴったり合う帽子を作っていただいたら、帽子の魅力にハマってしまってしまいましたね。今では帽子のない生活なんて考えられなくなっています。身体の一部みたいなもので、被らないではいられないし、被るとお洒落度が増してよりお洒落が完成された気がします。

清水:

ありがとうございます。現代の男性の間では帽子を被るという習慣がなかなか根付かなかったので是非この機会に被る方が増えてくださったら嬉しいです。

SHIMIZUAKIKOブランドの帽子の特徴は

泉二:

ここで是非清水さんの帽子の特徴を教えて貰えますか? 細かい所まで気配り目配りしていらっしゃいますよね。

清水:

はい。まずは今お話しした縦長に作って被った時にカッコよく見えるようにしています。そして全て手縫いですね。デザインは日本人の顔立ちに合わせて少しツバは小さめにしています。また男性の場合、真っ直ぐに被っていただく事が多いので、敢えて左右非対称に作って動きが出るようにしています。左右を比較して見ていただくと「つばの大きさ」とか「カーブの具合」が違っているのがお分かりになると思います。

泉二:

なるほど! ! だからすっと被っただけでなんとなく雰囲気があってお洒落なんですね。私も最初はそうでしたが、男性はシャイだから敢えて傾けて被るのはちょっと恥ずかしいというか、抵抗がありますね。

清水:

そうですね。フランスでは、幼少の頃から帽子と共に生活しているので男性もそれぞれの顔立ちに合わせて被り方を変えています。でも私は日本人の方には普通に被ってお洒落に見えるのが良いなと思います。泉二さんが先程おっしゃった大正や昭和初期の方々は当時の写真からみると殆ど真っ直ぐ被ってカッコいいんですよね。

泉二:

そうですよね。

扱い方のコツは?

泉二:

ところで被り方のコツはありますか?

清水:

はい、あります。男性の場合は普通に真っ直ぐ被っていただきます。顔側は眉毛の上から始まり、横は耳の付け根より1センチから1.5センチ上を基準に平らに被ります。この状態で人差し指が一本入れば理想のサイズです。私が手掛ける帽子は先程もお話ししたように左右非対称なので真っ直ぐ被っているだけで、ちょっと傾けて被ったような動きが演出出来ます。 あと注意していただきたいのが着脱時の扱い方ですね。必ず両手を使って帽子の左右のツバを軽く持つか、帽子の前後を押さえるようにして持つか、の二通りで扱っていただけると嬉しいです。ツバを片手で引っ張ったり、帽子のクラウン正面の凹凸部分(山形の三角形部分)を指で摘まむことはしないで頂きたいですね。形が崩れていきますし、特にクラウン正面前部は帽子で一番目立つ所ですから、そこをつかんで着脱しているとデザインも壊れますし、生地自体がヘタって擦り切れてします。これは帽子製作者としては絶対に避けていただきたい事です。
(左)着脱は必ず両手を使って (中央)挨拶の時は帽子を胸元に (右)動きのある帽子のライン (左)着脱は必ず両手を使って (中央)挨拶の時は帽子を胸元に (右)動きのある帽子のライン

泉二:

なるほど・・・映画などでたまに三角凹凸部分を持っているシーンがあるのでそこを摘むのが当然と思ってしまいがちですが違うんですね。

清水:

はい。

泉二:

お手入れはどうですか?
保管は帽子専用の箱で 保管は帽子専用の箱で

清水:

汗をかいたらすぐにぬるま湯に浸し固く絞った布で内側の皮リボン部分を拭いてください。その後、通気性の良いところに帽子を置いて乾燥させます。この場合、帽子全体で帽子の重量を支えられるように置く事をお薦めします。外側は柔らかいブラシでさっと払って汚れを取ります。季節の代わり目にはブラシで埃を払った後、内側のリボン部分を布でしっかり拭き、良く乾燥させて防虫剤を入れ、買った時の帽子専用の箱に入れて保管してください。帽子専用箱はツバの所で全体を支え帽子の頭頂部が絶対に潰れないようになっていますので、是非この箱は捨てずに取っておいて欲しいです。
あと内側の皮のリボンは取り替えが出来ますので痛んできたら私に戻していただけたら外して新しい皮を縫いつけます。 丁寧に扱えば、何年もそれこそ2代、3代に亘って使えるのが帽子です。

泉二:

着物も帽子も丁寧に扱えば長い間使える・・・ECOの時代に良いものですよね。

これからも一生懸命・・・

清水:

銀座もとじさんとお付き合いさせていただき本当に色々刺激を受けています。もとじさんにいらっしゃるお客様はお洒落な男性ばかりなので目も厳しい。作る時も納品する時も緊張しています。なので、お店の方から「追加できますか? 」なんて連絡頂けると本当に嬉しいですね。フランスにいた時は女性物が大半だったのですが、やはり現地で沢山の帽子を見て来た事が今の男性物製作に生きていますね。
清水晶子さん 清水晶子さん

泉二:

着物を始めて40年になりますがいつも「習うより慣れろです」って私は言うんですね。帽子も色々と被ってみて自分に似合うものを見つけていくんじゃないでしょうかね。帽子を被る事で男のきもののお洒落も更に完成され、ランクアップして行くなと思うんです。 ところで、製作出来る帽子のサイズはどのくらいまでですか?

清水:

手作りなのであまり大きくは展開できないんですが、「57センチ~60センチ」位までは製作可能です。今お納めしている帽子は全て「58センチ」で作っています。帽体(帽子を作るフェルトなど)さえあればサイズのオーダーも受けますのでご相談いただければと思います。

泉二:

ちなみに私の帽子はオーダーでしたが、作っていただく時に何か工夫とかありましたか。

清水:

あります! ! (笑) 両方のこめかみから上に一直線に上がった線上に帽子のクラウン部分が揃うと綺麗なんですね。そしてクラウンの高さはその方の身長や体格で変えます。あとは、肩幅やお顔の丸み、全体の骨格などに合わせてツバの広さやカーブの仕方を微妙に調整します。泉二さんの帽子も様々な工夫が入っています。

泉二:

凄いですね。それこそオーダーメイドですね。

清水:

ありがとうございます。オーダーとまではいけませんが「パターンオーダー」です。今作っている縦長型の58センチは一番ポピュラーで日本人の頭の形や体形に合います。あと1センチ前後大きさを変える場合はデザインは殆ど変わりませんのでそのまま作ります。60センチをご注文いただく場合は、その方の身長や骨格、肩幅、肩の厚み、お顔の形に合わせてクラウン(帽子の高さ)を変えツバの広さも微妙に調整しますので直接お目に掛る事もあります。

泉二:

次に考えているのが、ハンチングですね。

清水:

はい。カジュアル過ぎずお着物の風合いに合うハンチングが作れたら良いなと思っています。今日お持ちしたのは仕掛っているものです。紬のお着物にインバネスコートやマフラーをされた時に合うものを作りたいなと思っています。帽子の裏地にもこだわって作れたらと思っています。チャレンジしますので是非見てください。
店主 泉二 店主 泉二

泉二:

はい。私も「毎日がチャレンジ」の人間ですから、是非是非新しいものを作って男のダンディズムに新しいエッセンスを加えてください。フォーマルからカジュアルまで帽子は装いの最後の決め手ですからね。 そうそう、清水さんは女性物のお帽子製作も得意なんですよね。

清水:

はい。フランスにいた時は女性物を作る方が多かったです。

泉二:

では・・・いつか「SHIMIZUAKIKO」の個展をしたいですね。

清水:

ありがとうございます。そう言っていただくととっても嬉しいです。張り合いになります。頑張りますね。

泉二:

はい! ぜひ! 繰り返しになりますが、「男のお洒落の最後の決め手は帽子」だと思っていますから、是非男性諸氏が「お! ! かっこいいな」「おれも被ってみようかな」と思う付け心地のいい素敵な帽子を作り続けてください。 今日はありがとうございました。

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