10月16日(土)には 浅野裕尚さんを迎え、「我が唯一の望みに」にこめた想いを伺う 「ぎゃらりートーク」をしていただきました。

今回のテーマは「A mon seul desir ―我が唯一の望みに―」。 企画展のDMには浅野裕尚さんからのメッセージとしてこう綴られました。
『A mon seul desir ―我が唯一の望みに―』

わずかな光に浮かび上がる6枚のタピスリーに囲まれて過ごす時間は 止まったように感じ、謎めいた深く静かな刺激を私に与えてくれました。 五感を研ぎ澄ましイマジネーションを解き放ち、作品を作り上げる。 それが私にとっての「我が唯一の望みに」。
織楽浅野 浅野裕尚
ぎゃらりートークの会場には、大きなタピスリーを飾らせていただきました。 これは浅野さんの所蔵品で、15世紀に作られたフランス製ゴブラン織の貴重なタピスリー。さらに浅野さんはスクリーンに貴婦人と一角獣をモチーフとした連作を映し出し、 6枚それぞれの意味について語ってくださいました。
「この6枚のタピスリーは円形のホールの1室にまとめられています。出会いは10年以上前ですが、 また昨年訪れた際、今までにない強い何かを感じたんです。時が止まったんです。 特にこの6枚目にあたる『我が唯一の望みに』のタピスリーを目にした時、「あなたの唯一の望みは何?」 と問いかけられた気がしました。
五感の次に来るものが『我が唯一の望み』なら、自分の作るものが 「五感を超えて感動していただけるものでありたい」と考えました。

この貴婦人と一角獣のタピスリー連作の“意匠”をモチーフとして創作されたのは、すべての意匠の足元にほどこされた 花草があふれる「千花模様」、そして「聴覚」のタピスリーの絨毯のデザインである「タルキッシュ」。 また、浅野さん自身の『我が唯一の望み』を形にした作品として最も納得できたと仰るのが「アールデコ七宝」です。

そして帯と着物とが互いに生み出す「あや」に美しさを見出したい。 それが織楽浅野のものづくりであり、目指す世界、『我が唯一の望み』なんです。 「アールデコ七宝」では七宝の中に細かな光沢を放つ織模様を綾なすことで、 これまでにないほどの美しい“奥行き”を表現できたと思っています。
会場のお客様には三つの和紙が配られました。楮、三椏、雁皮。 それぞれの質感を指で触れ、目で楽しむ。

織楽浅野の『我が唯一の望み』から生まれた最高に美しい“奥行き”のある織物。 ぜひ細部までじっくりと、その光沢の変化を目にし、指で触れ、『陰翳礼讃』の美学をご堪能ください。