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「日本の上布」展より 『越後上布 実演』レポート

2008年5月30日(金)〜6月8日(日)まで、ぎゃらりー泉にて「日本の上布 〜稀少の織物 北から南〜」展が開催されています。 期間中、5月31日(土)〜6月1日(日)には「越後上布 地機の実演」が催されています。 越後上布の歴史は古く、1200年前から織られている日本最古の織物です。「北越雪譜」には、「雪中に糸となし、雪中に織り、雪水に濯ぎ、雪上に晒す。」 と詠まれているほどで「雪の中から生まれる織物」とも言われています。昭和30年5月、国の重要無形文化財、第一号の指定産地としても認定されました。 現在の年間の生産反数は40反程。それも原料となる苧麻(ちょま)糸を績む(うむ)人が激減しどんどん生産反数は減っていて、近い将来には「幻の布」になると言われている本当に稀少な織物です。
実演にご協力いただいたのは高波明美さん。織歴は5年。いつもは新潟県南魚沼市のご自宅で織られています。 ぎゃらりー泉の窓際のスペースに織機を置いたので、通りすがりの方も 「なにをやってるのかな?」とガラスをのぞきながら興味深深。 お声をかけてご一緒に、高波さんを囲むようにしてお話を聞きました。
越後上布 地機の実演
越後上布の特徴である「地機」はその名の通り地面に座って織り進める技法です。 座布団を敷き、上にぺたりと座り、たて糸を自分の腰にまわしたベルトで調節して織ります。 上糸と下糸の移動も足先にかけたベルトをたぐりよせたり、遠ざけたりすることで行います。 全身をフルに使って織るという、本当に大変な力と根気のいる作業なのです。
糸は乾燥するととても切れやすくなる
「織るときには湿度に心がけています。」良く見ると、織口が3cmほど水で濡らされていました。 麻の糸は乾燥するととても切れやすくなるので、織口を濡らしたり、加湿器を当てたりして気を配るそう。 「これからの梅雨の時季は織りやすいので嬉しい。」一日の作業はだいだい〜時間くらい。
織り続けると 今回のようなやや太目の糸だと15cmくらい、もっと細い糸だとなんと1寸(3.8cm)ほどしか生地が出来上がらないそう。 それが、晴天の日や乾燥した日だとさらに糸がプチプチ切れて、それを結ぶだけで時間が取られてしまい、 なかなか進まないといいます。
「それでも、いつもあっという間に時間が経つんです。」高波さんは満面の笑顔。この仕事が好きで好きでしょうがない そうです。 「今日は特にたくさん織れた。お客様とお話をする機会は少ないので嬉しくて。いっぱい織ってしまいました。」 手元を見ると、なるほど。午後4時、開店から5時間経った現在でもうすでに15cmほど出来上がっています。
地機で織る様子
これからあと3時間。どれくらい織り上がるのでしょう。 そうこうしているうちにどんどんお客様に囲まれていく高波さん。 ご覧になられた方もとても嬉しそう。 「気の遠くなるような作業。本当に1本1本糸が重なって布になっていくんですね。 もちろん知ってはいたけれど、実際目にすると驚きの手仕事。」「大切に着たい。織手の方の想いが いっぱい詰まった宝物です。」 会場には越後上布をはじめ、全国各地の上布が集いました。 植物から糸を作り、人の手で織り上げる。そうして生まれた上布はまさに自然からいただいた宝物です。

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