二代目・泉二啓太の産地めぐり~一枚の風呂敷ができるまで、馬場染工場さんを訪ねて~

私たちは「伝える職人」として、 産地の空気を伝えたいという思いから、 自分の目で見て、自分の耳で聞き、自分の手で触れて感じたことを、自分の言葉でお客様にご紹介をする、ということを大切にしています。
今回は、銀座もとじ40周年記念の風呂敷を染めてくださった、京都・伏見にある馬場染工場さんを訪ねました。

馬場染工場さんは大正2年に創業され、今年で創業107年目を迎えます。
木造の合掌造りの工場は今も尚変わらず、職人さんが作業されていらっしゃいます。昔ながらの材料や染め方を守りながら、一つ一つ手作業で丁寧に仕上げていきます。

もともとは小紋など着物を染めていた工場でした。
シルクスクリーンは戦後から始められて、某有名ブランドの服地をはじめ、ストールなど洋装地も制作されてきました。
現在では、国内の風呂敷の大半を染められているそうです。風呂敷だけでなく、一点一点を手染めする丁寧な仕事に裏付けされた品質の高さから、多くのブランドからの信頼を得られていらっしゃいます。

今回のレポートでは、皆様にその制作工程をご紹介いたします。

<制作工程>

1.製版(シルクスクリーン)

型紙の数は、色数によって枚数が決まります。
今回使用した型紙は3型でした。

2.染色 -色合わせ

希望の色になるよう、グラム単位で染料を計算しながら調合していきます。
生地にしっかり出来上がった染料をくっつけるために、米ぬかでできた「染色糊」を混ぜ合わせます。
※糊の硬さにも種類があり、柄によって使い分けていらっしゃるそうです。

今回の風呂敷に使われている色は、デザインをしてくださったカンタ・デロッシュさんと何度も打ち合わせを重ねたこだわりの色です。馬場染工場はこちらからの要望にも親身になって相談に乗ってくださりました。ミリ単位で色の調合をして、2回にわたり色見本を制作いただき、理想の色を出していただきました。

3.地貼り

工場内にある、実際染色を行う場所である板場には、全長26.5mもある傾斜した台が置いてあります。
この大きさの台がある板場は、現在はもうほとんどないそうです。
この台に薄く糊を引き、ロール状の白生地が皺にならないように手際よく貼っていきます。

生地を貼る際には、地の目をしっかりと通し、特に生地の耳を真っすぐにすることが大切です。この際に生地が歪んでしまうと、仕上がりに影響し商品にならなくなるため非常に集中力を要する作業です。
特に今回の丹後の鬼シボ縮緬は伸縮性が高いため、地貼りが非常に難しいそうです。

白生地の上に版をセットし染料を流し込み、「スキージー」と言われる掻きベラで一気に染め上げていきます。
※スキージはゴム製のヘラのこと。スキージは柄のサイズによって大きさを使い分けます。

途中で掻きベラの動きを止めるとムラになるので一気に染めることが大切です。
無地場が多いとムラになりやすいので、職人の熟練した技術が必要となります。
職人さんが1柄ずつ丁寧に、手捺染していきます。

台は温かくなっていて(人肌ぐらいの温度)、天井から風を出し乾燥を促します。

1型目

2型目

※瑠璃色は生地の白を活かしたデザインのため、2型のみ使用。

4.蒸し

染め終わった反物は、色の発色と定着をさせるために蒸します。
蒸す日の季節、天候、温度、湿度や生地の種類によって、蒸し加減を調整していきます。

5.水洗い

蒸しあがった生地は、糊や不純物を取り除くために、水槽の中で丁寧に手洗いしていきます。
美しい仕上がりのためには、洗いすぎてもだめ、洗いたりなくてもだめという職人さんの長年の勘と経験が頼りの重要な工程です。

6.湯のし

洗い終わった生地のシワや縮みを直すために、蒸気をあてながら、1反1反丁寧に手で広げて元の生地巾に戻します。

7.裁断+縫製、そして完成!

馬場染工場さんが長年お付き合いされている職人さんに依頼し、上下の端や角がしっかり出るように丁寧に縫製し、仕上げます。

一点一点手仕事で染め上げられる風呂敷、その裏には職人さんの存在は不可欠です。
柄行きを見ながらヘラのサイズや染める向きを変えるなど、そこには圧倒的な経験と技術が必要になってきます。
また、着物を染める板場とは違ったスケール感がとても刺激的で、あらためて手捺染による日本のものづくりの丁寧さ、そしてクオリティの高さに感銘を受けました。

お忙しい中、ご協力くださった馬場染工場さんの皆様、本当にありがとうございました。

制作工程でご紹介した瑠璃色のほかに2種類染めていただきました。

Bleu Nuit(ブルー・ニュイ/瑠璃 るり)

Rouge Capucine(ルージュ・カプシーヌ/紅 くれない)
Jaune Aurore(ジョーヌ・オロール/琥珀 こはく)

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