「ゆかた」は湯帷子(ゆかたびら)の略称で、はじまりは貴人が沐浴の時に着用した麻の単衣でした。室町時代末期から江戸時代初期にかけて、盆踊りや風流踊りが流行したことで庶民の間でも着られるようになり、今では夏のおしゃれ着として花火大会や納涼会など、幅広いシーンで気軽に楽しまれています。
しかし、浴衣といっても種類も価格帯も幅広く「自分が本当に着たいものがわからない」という方も多いのではないでしょうか。
自分のイメージに合った浴衣を選ぶ一番のコツは
「たくさんの選択肢を知ること」
今年も新作の浴衣が揃ってまいりました。
寸法のことから生地の素材や柄、着付けのポイントなど自信を持って着ることのできる知識を身につけ、ワンランク上のおとなの浴衣を目指してみませんか。
目次
1.「プレタ浴衣」と「オーダー浴衣」の違いは?
①品物が手元に届くまでの期間
②着姿の完成度
−裄の重要性
−意外と知られていない?ヒップ寸法の重要性
2.シーン別浴衣えらびのポイント
①夏祭り・フェス
②会社の納涼会・屋形船
③街のおでかけ
3.浴衣を着るために必要なアイテムリスト
−気持ちよく着たい!肌着のすすめ
−着姿がグッと美しくなる!補正のすすめ
1.「プレタ浴衣」と「オーダー浴衣」の違いは?
浴衣を選ぶ際の一番はじめの選択、それはプレタ浴衣にするか、オーダー浴衣にするかです。
プレタ浴衣とオーダー浴衣の違いは大きく2つあります。
①品物が手元に届くまでの期間
②着姿の完成度
①品物が手元に届くまでの期間
浴衣をオーダーする場合、反物を選んでからお品物がお客様の手元に届くまで約1ヶ月程かかります。
オーダー浴衣の良いところは何より自分の好きな素材と柄の反物で、自分の身体に合った浴衣をつくれることです。着ていくシーンやご自身の着姿のイメージ、好みに合わせてじっくりとお選びいただけます。
自分の寸法に合わせてつくられているため、着付けがしやすく、また動いても着崩れしにくいというメリットもあります。
一方プレタ浴衣は、購入日にお持ち帰りいただくことができます。肌着や着付けに必要な小物も一緒に販売しておりますので、ご購入いただいた浴衣にその場でお召し替えいただくことも可能です。
②着姿の完成度
オーダーとプレタの着姿での違いは、自分の身体に合わせた寸法かそうでないかです。では自分の寸法でない場合、着姿の違いは具体的にどこにでてくるのでしょうか?
女性の着姿のポイント
まず第一に、浴衣をつくるときに採寸で必要となるのは下記の3点です。
①身長
②裄
③3サイズ
このうち、プレタとオーダーを比較する際に重要なのが②裄と③3サイズです。
身長は浴衣の身丈(浴衣の縦の長さ)を決めるのに必要になりますが、女性の浴衣の場合「おはしょり」という帯の下の折り返し部分で調整ができるため、フリーサイズの場合でも自分の身長+−5cm位までなら着付けでカバーが可能です。
裄の重要性
≪裄とは≫
首の骨から肩までの長さと腕の長さを足した長さのことを裄といいます。
肩の筋肉のつき具合によって裄は変化しますので、銀座もとじでは腕を45°の角度まであげた状態で測ることをおすすめしています。
身丈と違い着付けで調整することができない上に仕上がりイメージにも影響するため、最もプレタとオーダーの違いがでる部分とも言えるでしょう。
浴衣の裄の長さは着る人の好みにもよりますが、もとじでは中央の写真のように、手首関節の骨が少し見えるぐらいの丈を、軽やかさがありながらも品を損なわない長さとしておすすめしています。
同じ身長でも一人ひとり体型は異なりますので、プレタの場合、小柄な方でも裄がぴったりなこともありますし、身丈が適正のものを選んでも裄が短めになることもあります。
プレタの浴衣を選ぶ場合にも裄の表示がありますので、心配な方はまずご自身の裄丈を測られてから浴衣選びを始めることをおすすめします。
意外と知られていない?ヒップ寸法の重要性
3サイズを採寸する中で特に重要なのがヒップ寸法です。なぜなら、基本的に浴衣の幅はヒップのサイズに合わせて決定するからです。(ヒップよりもバスト・ウエストが大きい場合は、一番大きいところに合わせて寸法を調整します)
≪脇線と衽が離れ、太って見える≫
脇線と衽線が離れてしまうと、写真のように実際よりもお尻や太ももが太く見えてしまいます。
プレタ浴衣で自分のヒップサイズよりも小さいサイズをお召しになる場合には、背中心を合わせることよりも、脇線を合わせることを重視して着ることをおすすめします。
ご来店の際に着付けのご相談をいただければ、簡単な着付けレッスンもその場でさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
男性の着姿のポイント
まず第一に、浴衣を作る時に採寸で必要となるのは、
①身長(身丈)
②3サイズ
③裄(肩幅と腕の長さを足した長さ)
身丈
プレタとオーダーを比較する際に重要なのが身丈です。
女性の場合「おはしょり」という帯の下にくる折り返しの部分で調整が可能ですが、男性にはないため、着物の寸法がそのまま身丈になります。
この身丈が長すぎたり、短すぎると印象が大分変ってきます。
銀座もとじでは身長からの割り出し寸法ではなく、採寸用の着物を実際に着て頂き、そこから±を測るため、よりお客様の体型に合った浴衣を作ることが出来ます。
基準としては中央の写真のようにくるぶしが隠れる位置をおすすめしています。
身巾
3サイズを採寸する中で特に重要なのがヒップ寸法です。なぜなら、基本的に浴衣の幅はヒップのサイズに合わせて決定するからです。(ヒップよりもバスト・ウエストが大きい場合は、一番大きいところに合わせて寸法を調整します)
身巾が狭いとはだけやすく、広すぎると歩きづらくなります。
裄
裄丈とは肩幅と腕の長さを足した長さの事です。
前揚げ・後揚げ(腰の部分の縫込み)位置
写真②のように、前揚げが帯に隠れる位置に調整します。
衿先の出具合
真ん中の写真のように、帯の下に7~8cmほど出るようにします。
短すぎると着崩れやすく、長すぎるとバランスが悪くなり、見栄えにも関わる箇所です。
ご来店の際に、着付けのご相談をいただければ、簡単な着付けレッスンもその場でさせて頂きますので、
お気軽にお問い合わせください。
2.シーン別浴衣選びのポイント
※こちらは2019年に公開された記事です。
せっかく浴衣をつくるなら素材もこだわりたいところ。これぞ浴衣!という定番から、浴衣としてだけでなく、襦袢を合わせ、夏きものとしてお出かけできるものまであります。着ていくシーンや着用の時間帯などを想定して選んだ浴衣は、きっとこの夏を一層楽しく彩るはずです。
①夏祭り・フェス
夏祭りやフェスなど人が多く集うところで着る場合、人混みの中で通常よりも着崩れしやすくなるため、肌着の上にさらりと1枚まとうだけでよく、動きやすい綿コーマや綿麻の素材をおすすめします。熱気で汗もかきやすくなりますので、簡単にご自宅でお手入れできるものが良いでしょう。
このシーンにおすすめの浴衣地
②会社の納涼会・屋形船
近年、納涼会のドレスコードを浴衣にする会社が増えています。催しの会場によっておすすめする生地の素材も変わります。たとえばビアガーデンや居酒屋などであれば夏祭りなどと同様、動きやすい綿コーマや綿麻がシーンに合いますし、レストランや室内の会場を貸し切ってということであれば、長襦袢を浴衣の下に合わせ、足袋をはいて夏きもの風に着こなすのも良いででしょう。職場の会だからこそ、役職や年齢によって毎年様々なご相談をいただいています。お困りのことがございましたらいつでもご相談くださいませ。
このシーンにおすすめの浴衣地
③街のおでかけ
街のおでかけなどでは、夏きもの風にお召しになるのはいかがでしょうか。長襦袢を浴衣の下に合わせ、足袋をはき、帯も半巾帯に限らず紗献上や夏の染め帯などを合わせればより一層お出かけの幅が広がります。夏きものであればアフターヌーンティーなども気兼ねなく楽しめます。綿コーマ以外は浴衣としても、夏きものとしてもお楽しみいただけます。
このシーンにおすすめの浴衣地
素材の種類
綿コーマ
浴衣に最もよく使われるのが、「コーマ生地」と呼ばれるシンプルな木綿です。
コーマという呼び名は、コーマ通し(combing=櫛通し)という工程からきています。繊維の方向をそろえるカード(カーディング)という工程の後に、更に短繊維を取り除いて長い繊維のみを平行に揃えるため、ケバも少なく、太さのムラのない強い糸となります。
肌触りがよく、やわらかさや艶があることが特長ですが、一方でシワになりやすいということもあり、着こなすのが難しい「高度な浴衣」とも言われています。
さらりとコーマを着こなす女性は、思わず振り返ってしまうような格好良さがあります。
綿絽
絽目を織り出した透け感のある木綿生地です。絽とは「平織」と「捩(もじ)り織」を併用して織られた素材で、捩り織の部分がレース状に透けて風を通します。綿絽はコーマ地よりも軽く、より涼やかにお召しいただけます。
日中にお出かけをするなら足袋を履き、長襦袢を下に合わせて夏きもの風に着こなすことも可能です。夏きもの風にすることでちょっとしたパーティにも着ていくことができます。
綿紬
紬織と同じような、節のある木綿糸を使ったハリのある手触りの木綿生地。経糸で手織り紬のような雰囲気を織りだした独特の風合いを持つ綿生地に「引き染め」で文様を染め出した、近年人気の素材です。奥州小紋も綿紬の一種です。
紅梅
紅梅とは高級浴衣の一種で、薄手の地の中に格子状に太い綿糸を織り込んだ生地に型染めした染物です。薄手の地も太い糸も綿のものは綿紅梅(綿100%)、薄手の地が絹のものは絹紅梅(絹85%、綿15%)、地が綿麻のものは綿麻紅梅(麻75%、綿25%)とそれぞれ呼ばれます。
異なる太さの糸を組み合わせて格子状に織ることにより、生地の表面に高低の「勾配」ができることから、「紅梅」という名がつけられたといいます。
薄手の地に太糸による格子があるおかげで、生地が肌に張り付かず、涼しさを感じさせてくれる綿織物です。
綿紅梅は半襟をつけることで、浴衣としてではなく夏きものとしての着用が可能です。
綿麻
名前の通り、綿と麻の交織生地です。綿と麻の割合は様々あり、麻が多くなるとシャリ感のある風合いに、綿が多くなると、ふんわりとしたやさしい風合いになります。コーマ地よりもハリ感があり、サラっとしています。
3.浴衣を着るために必要なアイテムリスト
浴衣をお召しいただく際に最低限必要になるのが、以下の7点です。
①浴衣
②半巾帯・夏なごや帯
③肌着
④タオル(補正用)
⑤腰紐2本
⑥伊達締め
⑦帯板
⑧下駄
気持ちよく着たい!肌着のすすめ
銀座もとじには長年きものを楽しまれているベテランの方から「これからきものを始めたい!」「きものは着ないけど浴衣は着たい」という初心者の方まで、様々な方がご来店されます。
とくに浴衣はじめのお客様からは、「肌着は何を着たら良いのか」という質問を多くいただきます。
透けにくい濃い地色の綿コーマをお召しになる方の中には和装用の肌着ではなくキャミソールとペチコートの組み合わせで肌着にするというお話も伺いますが、その際にもパットやワイヤー等で強調するものを下に着用することはあまりおすすめしません。帯の上にバストがのると着姿がだらしなく、老けて見えやすいからです。
今回ここでは和装用の下着についてご紹介します。
和装用下着の形には大きく2種類ある
- ワンピース式
ワンピース式は袖は肘、裾は膝あたりまでの丈で白色のものです。ウエストについている紐で調整します。
サイズはM、Lの2サイズで、細身の方もふくよかな方も体型に合わせて調整できるようになっています。
一枚でさらりと着ることができ、とても簡単です。
- 上下に分かれたツーピースタイプ
上着:袖は肘までの丈で、紐はついていません。
下着:腰巻とも言われる、ウエストに紐がついていて、巻きスカートのように腰に巻きつけるタイプと、ズボンのように履くステテコタイプとがあります。ふくらはぎ位までの丈のものが着やすいでしょう。脚に汗をかきやすい方はステテコタイプが快適です。
汗をかく季節ですので、素材は汗を吸いやすくかつ速乾性のあるのものをおすすめします。
一手間で着ている時間が快適に!補正のすすめ
肌着と浴衣の間にはタオルで補正を行うことをおすすめします。腰のくびれをタオルで抑えることは浴衣の着崩れ防止や汗でむれることを抑止する効果や腰紐の食い込みを軽減し、浴衣を着ている時間を少しでも快適に過ごすための一手間になります。
体型は人によって異なりますので補正の量は一概に言えませんが、くびれなど体の曲線が出る部分に、できるだけラインの凹凸がなくなるようにタオルを巻き、それを腰紐で固定するのがもっとも簡易な方法です。
浴衣を腰紐で固定する位置に一枚タオルを噛ませるイメージです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
一つでも多くの知識、選択肢をもって、今夏の浴衣選びをお楽しみください。