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染織作家・佐藤竜子展|和織物語

身の回りにある草木を使って糸を染め、自分自身が身に着けたいと思う着物を織る。 着物自体が主張するのではなく、着まわしの利く着物、帯によって、また小物によって、表情が変わる着物を作る。 控えめでありながら存在感のあるもの。小物と調和が取れハーモニーを醸し出すもの。そんな帯や着物を作る。 それが染織作家として歩き始めた佐藤竜子の確たる一本の道です。 1年に10反~12反。ひとつひとつ大切に作り上げる。 今回の和織での催事が「初個展」となる佐藤竜子さんの作品は、草木の温もりと作者本人の優しさに包まれたほっこりした織物作品が特徴です。 着尺が18点、帯が5点。 和織の2005年はこの「お竜さんの織ものがたり」で始まります。

お竜さんって?

「佐藤竜子」と書いて「さとうりょうこ」と読む。 第一印象は、ほわっとした温かな雰囲気で、触れたら折れてしまいそうなほど華奢な人でした。 「作品が作る人を語る」と言いますが、今まで目にした柔らかい草木染めの作品は佐藤さんそのものでした。 が……話しているうちにこのお竜さんは、やっぱりただ者じゃ無かった。 辰年生まれで、坂本竜馬にちなんで「竜子」とついたと言うお竜さん。 語る言葉の端々には意思がきちんと備わっている。 そういえば「坂本竜馬の最愛の人もしっかり者で“お竜ちゃん”って言いましたよね。佐藤さんもやはり芯は強い方ですか? 」と言う問いかけに、「う~ん。自分ではそう思ってはいないのです。ただ、周りの人からは芯が強いと言われることはよくありますね。」と。 華奢な身体に自分で織った「やぶまお染め」の着物を身に付け、黒の羽織に自分で刺繍したと言う紫の竜の紋。 「はまりすぎです! 」と訴えたくなる私の前をすっすっと歩く姿は「いよ! お竜さん! 」でした。

お竜さんと織の出会い

このお竜さんどこで生まれたかと言うと、里は福島県。 「やっぱり! 糸の産地ですね。それで織物に? 」と言う問いかけに首をやんわり横に振り「いえいえ。近くには糸も蚕もありませんでしたよ。そう言えば小学校に行く途中に製糸工場が一軒ありました。 そこの前を通る時、繭を煮ているにおいを何の匂いか知らずにただ『臭い臭い』と鼻を摘んで歩く子供でした。」
佐藤竜子さん 作品
さてそんなお竜さんも成長するに従って「染織をしてみたい」と言う気持ちが芽生え、とうとう高校卒業後は京都の染織科のある短大へ進学。染織の「いろは」を学んだ後、帯屋さんへ織修行に入りました。 最初に就職した京都の帯屋さんが普通の西陣織とは違う織の帯を扱うところで、入社して暫くした頃から、草木染の糸を使って帯を作ることになりました。気が付くと身の回りには草木染めの糸が山ほど。それがお竜さんの眠っていた感覚を起こしました。 「草木染めのなんとなくほんのりとした、あたたかい色の中にいると気持ちが落ち着きました。すごく幸せでした。」 そんな日々を暮らしたお竜さんは、新たな帯屋さんで仕事を開始します。今度の職場は、化学染料のパキッとした色をしっかり使って鮮やかな帯を作ることが主の仕事でした。内心は「自分はやっぱり化学染料の色より草木染めの色のほうが好きかな。」と思っていたお竜さんですが、仕事には全力投球する姿勢を崩さず、帯作りに懸けていました。 帯作りをしながら、徐々に自分の感性にあった着物探しが始まります。「自分の収入で買える、気に入った着物」を探し回れど、気に入ったものは高価すぎて手に入らない。「ならいっそ自分で作ってしまおうかな」と思ったのがお竜さんの着物作りの始まりでした。 最初は「自分で着られる着物が作れれば」と言う軽い気持ちでしたが、知人の紹介で福岡で染織をしている甲木恵都子先生に出会い考えが変わりました。2003年、甲木先生の元から戻り、大津に工房兼自宅を構え、染織活動に入りました。

今一番作りたいもの

「自分が着たいと思う着物、自分自身が着たときに落ち着く着物、触れていて気持ちの良い着物そういうものを作りたいんです。染めた糸を見ていると無性に無地が織りたくなります。」 「無地は織りにくいという方もいらっしゃいますが。」 「私は特にそうは思いません。まだまだ無地の難しさを感じるほど織っていないのだと思います。」 と謙虚なお竜さん。 経糸に座繰り玉糸を使い、緯糸に紡ぎ糸を使ったり、時には紡ぎ糸に生糸を沿わせて撚糸した糸で織ったりしています。また経糸を生繭の座繰り生糸に変えてみたりなど、一つ一つに工夫が凝らされています。 今まで作ってきた中で、途中で失敗と言うのは無いとのこと。思わず「凄いですね」と言う私に「違うんです。織の途中で失敗と分かれば解いて戻ることが出来ます。が、私の場合はそういうところの失敗じゃなくて全部織り上げて仕上げた後で分かることがあるんです。」。 その失敗で自分用の着物になったものが2反あるとか。「失敗は怖いです。でも肩に力を入れないで自然に仕事をしていきたいんです。」と仰るお竜さん。

一昔前だったら・・・

一昔前だったら・・・ 歯を食いしばって唇を噛んで「何がなんでも食べるために頑張るぞ」と言うスタイルが一般的であったかもしれない。 でも今回のお竜さんはそういうところを少しも見せないまた感じさせない人でした。 肩に力をいれず、植物が出す色を信じ、その色を活かして作る。 「植物が出した色を眺めていると、私が思い描いた色よりずっとずっと素晴らしい色に見えてきます。 その色を見て、活かすために、無地の着物にしたり縞の着物にしたりと考えて作るのが楽しいです。」 「今一番作ってみたいのは」との問いに 「実は……黄変を覚悟で、生糸をそのまま使って白い着物を作ってみたいんです。糸そのものが綺麗だからかな。」と。 いつまでも少女のように飽くことの無い探究心を持ち続けるお竜さん。 今回の初個展も是非皆さんに見て感じてファンになって頂いて、そして成功させたいですね! お竜さん!!

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