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小紋師・藍田正雄~伊勢型紙・型彫師との歩み~|和織物語

真剣勝負の手仕事リレー

藍田正雄さんの手技をここまで昇華させたのは、そこに一枚の型紙があったからです。 江戸小紋の一見無地にも見える繊細な柄は、型彫師と小紋師の技術と感性の真剣勝負から生まれます。 型彫師から小紋師へとバトンタッチされる手仕事のリレー。 江戸小紋を染めるのに、無くてはならない伊勢型紙。しかし腕の良い型彫師が減りつつあるという現実。小紋師の藍田正雄さんにとって、型紙の大切さは身にしみていました。
江戸小紋を染める藍田正雄さん 江戸小紋を染める藍田正雄さん
「このままではいけない」 藍田さんが伊勢型紙の産地である鈴鹿市白子町を頻繁に訪れ、型彫師たちと伊勢型紙の技術の継承と発展を考え、本音で向き合ってきたこの10年。職人の一人として「次の世代に引き継ぐ為に、 何ができるか、何を残せるのか」と考えてのことでした。 「金は錆びない」 藍田さんは言います。『本物』は何百年経とうと変わらない。『本物』の仕事をする事こそが次に繋いでいけるんだ。その強い思いが型彫師たちの心も動かしました。 「伊勢の型彫師と歩み、作り上げてきたものを、ぜひ見ていただきたい」藍田さんは目を輝かせて言います。

伊勢型紙・型彫師の仕事とは

手前から、「変わり縞」型彫師・佐々木正明 「松葉」型彫師・宮原敏明 「七五三縞」型彫師・坂哲雄 手前から、
「変わり縞」型彫師・佐々木正明
「松葉」型彫師・宮原敏明
「七五三縞」型彫師・坂哲雄
伊勢型紙は、柿渋で貼り合わせた美濃和紙を使い、15cm×40cmほどの空間に一つひとつ彫りを施して作られます。 一つ0.3mmほどの丸を連続して彫って鮫小紋のような柄を作り出す「錐(きり)彫り」、何種類もの形をした刃を使って御召十や武田菱などを彫る「道具彫り」、毛万筋など鋭い直線が魅力の「縞彫り」、小刃を自在に動かし、柄を彫る「突き彫り」の四つの技法を使って表現されます。 どの型彫師も代々受け継がれた仕事に誇りを持ち、一つの彫りに打ち込んできました。

錐彫り

錐彫り
「彫っているのは小さな丸なのに、出来上がると一つの模様になるところが楽しい」という錐(きり)彫り54年の宮原敏明さん。「錐(きり)」と呼ばれる小刃をくるりと回転させ、一点ずつ彫りこんでいきます。一見同じ大きさに見える小さな丸も、印象の強弱をつけるため、錐を使い分けています。

道具彫り

道具彫り
「爺さんの代からのものも数えると6000本以上はあるかな」という道具を大切にしつつ、今も模様に合わせて自分で道具を作り、型を彫る兼子吉生さん。何本もの道具を使い分け一つの柄を作ります。「角通しのように単純なものほど難しいんです」と全身を使って道具を垂直に押し、彫り進めていきます。

縞彫り

縞彫り
「刃を入念に研ぎ、一度彫り始めたら、線の太さにバラつきができないよう、寝食もそこそこに、一気に彫る」 とは縞彫りの佐々木正明さんと坂哲雄さん。一つの線を彫るのに、同じところに3回刃を入れ、 1寸巾(約3cm)に30本の線を彫る型もあり、集中した作業が必要になります。

突き彫り

突き彫り
穴板といわれる小さな穴の開いた板を使い、その穴の上で刃を自在に操り、繊細な型を彫っていく突き彫りを専門にするのは内田勲さん。感性が生かされる曲線は、「川は川のように、花は花のように」彫るのが腕の見せ所。垢ぬけた印象の線を彫るため、細心の注意を払います「自分で彫った型紙の良し悪しは、自分が一番分かるんだ。だから恥ずかしい仕事はしたくない」。
どれも40年、50年と一つの仕事に打ち込んできた型彫師たちの自負が感じられる、重みのある言葉です。

染めてこそ、まとってこそ

伊勢型紙は、布を染めるために作られるもの。染めてこそ価値が生まれます。型彫師の仕事は小紋師の希望に沿い、技を駆使して型紙を彫り上げ、納めたところで終わります。 「これなら美しく染め上がるだろう」と染め上がりを想像し、染める時に狂いのないよう工夫を施し、小紋師に次を託します。 今回の作品展にあたり、型彫師が今一番挑戦したい柄を選び、 特別な思いで彫った型紙を手にしたとき、藍田さんは「染めたい色がパァーっと浮かんできた」と言います。 一柄ひと色。その柄を最も生かす色を選び、培った技と感性を注ぎ込んで染め上げる。 人から人へ、技から技へ。何世代にもわたって繰り返されてきた職人たちの手仕事リレー。そこには、まとう人を思い、存在感を際立たせるために丹精込める、『本物』だけが持つ「温かい心」があります。 このたび、型彫り師と小紋師の手仕事リレーの一員として、「銀座もとじ」が作り手の顔が見える、江戸小紋の数々を皆様にお届けします。
上:プラチナボーイ長襦袢 手前から、獅子と手毬、花いかだ、菊 下:マフラー36×155cm 表裏別柄 10枚 ※他に、半襟5柄男女各10色 鼻緒男女各5柄 上:プラチナボーイ長襦袢
手前から、獅子と手毬、花いかだ、菊
下:マフラー36×155cm 表裏別柄 10枚
※他に、半襟5柄男女各10色 鼻緒男女各5柄
着物はもちろん、長襦袢・マフラー・半襟・鼻緒といった、細部を彩り、 洒落心ある小物も特別に染めていただきました。 藍田正雄さんが伊勢の型彫師たちと作り上げた、渾身の作品群をぜひご覧ください。

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