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銀座もとじスタッフの研修レポート【紅花摘み】(2006年公開)

※こちらは2006年に公開した記事です。

銀座もとじでは、作品に込められた作り手の思いをお客様に伝えるために、スタッフの勉強会を行っています。
赤崩の朝顔
その中でも、店主・泉二に同行し、全国の作り手の元を訪れる「産地研修」は、販売スタッフにとって大変貴重な体験になっています。 作り手の生き方や人柄に直接触れることで、本や資料だけではわからないエピソードを直接伺うことができます。 作品作りを実際に見て得てきたことは、お客様に作品をおすすめする上での自信にもなります。 「お客様に、より深い作品のメッセージを伝えたい!」銀座もとじでは、作り手とお客様の架け橋になることを常に目指しています。 さて、去る8月13日、紅花染織作家、山岸幸一さんの「紅花摘み」にスタッフが伺いました。その研修レポートを一部ご紹介させていただきます。山岸さんのこだわりの作品は、9月15日(金)からぎゃらりー泉で開催される「山岸幸一展」でご覧いただくことができます。

山岸幸一先生を訪ねて  『紅花摘み~紅餅作り』

山形県米沢市大字赤崩の風景

紅花摘み~紅餅作りを体験して

一年前「山岸幸一氏の勉強会」に参加した時、今の世の中で、このような物づくりをする人が本当にいるのだろうかと衝撃を受けましたが、その一年後、実際に自分の目で見て体験することができたことは、大変感慨深かったです。
山岸先生の仕事は、「こだわり」というだけではなく、蚕や紅花という素材の声を聞いて、一番良い状態、一番輝く状態を自然に作ってあげるという、自然界の命への感謝なのではないかと思いました。
花搗き
山岸先生の織物への思いは、人生や物事の本質に通じることばとして、よりあたたかく心に響きます。 「技術ではなく、ロマンを伝えてください。」 山岸さんの言葉は、忘れられないものになりました。 今回私が体験したのは、山岸先生の長い仕事の中のごく一部分ですが、私が実際に「自分の目で見たこと」「耳で聞いたこと」「手で触れたこと」から感じた山岸先生の心を、私の言葉で、お客様に伝えていきたいと思います。 山岸さんの工房で体験した紅花摘みの工程をご紹介します。

紅花摘みを体験

花摘み
夏の早朝・・・午前4時!朝露を含んで紅花の棘が柔らかくなっている間に摘む。 <摘み時は?> 黄色~オレンジに色づいた紅花の花びら数枚が、下に垂れ下がってきた頃。 <紅の色素はどこにあるのか?> 色素が一番多くとれるのは、色がついている部分ではなく、隠れている白い部分。 (これを上手に摘むのが、なかなか難しい・・・)
紅花の花摘み
花洗い
摘んだ紅花山形県米沢市大字赤崩
摘んだ紅花を、山岸先生の家の裏の澄んだ流水の小川で綺麗に洗う。 <なぜ流水で洗うのか?> 豊富な酸素と流水の摩擦で、紅花に抵抗を与えることなく、不純物を取り除くことが可能。 (洗うときは、水の流れに逆らわずに・・・)
花踏み・花蒸し 流水で洗った紅花をゴザの上に敷き、足で踏む。今回は紅花の量が少ないので、手揉み。 「手で揉む → 霧吹きで水分を加える → 陰干し」の工程を繰り返すと、紅花が発効して真っ赤になる。 花踏み・花蒸し 花搗き 真っ赤になった紅花を、臼に入れて杵で搗く。途中、水を加えながらペースト状になるまで搗く。 花搗き 花餅作り 搗いた紅花を、丸めて煎餅状にし、天日でしっかり乾燥させて完成。 花餅作り 紅餅は、次の寒染めまで大切に保管されます。

絹綿帽子作りも体験しました!

素材を生かし、糸のつやを出すために、蚕を生きたまま冷蔵庫で保存する。生繭を煮立てた後、水につけて繭の中の蚕を取り出し、繭を均一に伸ばし台に張りつける。30個分を重ねたら、台からはずし乾燥させ、糸を引く。 絹綿帽子作り

天蚕を見つけました!

天蚕は、クヌギやナラ、樫などの木の葉を食べて、大型の繭を作るのが特徴。山繭ともいう。天蚕から紡いだ糸は、光沢があって非常に強い。染まりにくいので、後染めの場合は、天蚕糸の部分だけ薄く染め上がる。希少価値があり、紬の一部に天蚕糸を加えて織ることが多い。
天蚕(てんさん)

印象に残る山岸先生のことば

着物は素材が命

「着物は着る時だけでなく、何を着ていこうか選ぶ時、脱いでたたむ時にも、肌触りで素材の心地よさを感じ楽しむことができます。そして、その楽しみは親から子へと長く続くものであり、着物は時間とともに成長し、『生きている衣服』と言えるでしょう。素材よりもデザイン性を重視し、仕上がった時が最高の状態で、その後老朽化していく洋服とは反対の概念と言えるかもしれません。」 「人間の都合で近代化された機械織りは、短時間で正確かつ大量に織ることができますが、その結果として素材を殺してしまいます。素材を殺しては、着物の意味がない。手織りによって素材が生かされ、風合いや肌触りをいつまでも楽しむことができる。私はそんな作品づくりを心がけています。」

手仕事とはリズムとバランスが大切です

「手仕事とは、リズムとバランスが大切です。道具は手助けするという気持ちで、機を織っています。 結果だけを先に考えるのではなく、一つ一つを確実に続けること。そのプロセスをいかに楽しむかが重要と考えています。結果は自然についてくるものです。手仕事は頭で考えるより、まず、手足を動かす。理屈じゃないんです。」 2006年8月13日 山形県米沢市大字赤崩にて    男のきもの店 井波仁美 銀座もとじでは、作り手を大切にしています。スタッフの研修レポートを通し、作り手の”作品に込める思い”を少しでもお伝えすることができましたら大変うれしく思います。作品展にぜひ足をお運びください。店主・泉二、スタッフ一同、こころよりお待ちしております。

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