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山岸幸一さんを迎えて|活動レポート(2006年公開)

※こちらは2006年に公開した記事です。

心惹かれるきものに出会ったとき、どのような人がつくったものなのか、「知りたい」という衝動にかられたことはありませんか。 山岸幸一さんの作品をご紹介すると必ず、「お会いしたい」「お話を伺いたい」という声が絶えません。身に纏って美しく、その風合いに感動する。山岸さんの作る紅花の鮮やかな世界を、「もとじ倶楽部」という場でご紹介できたことを大変うれしく思っています。 9月16日(土)は、秋の風が心地良い、爽やかな一日になりました。今回の「もとじ倶楽部」は、銀座2丁目にあるニューヨークスタイルのフレンチレストラン「GINTO」のバンケットルームで行われました。お申込みが殺到したため、普段より多い36名というお客様にご参加いただき、前半は、山岸先生の紅花や作品作りへの思いをお話し頂き、後半は、ビュッフェでお食事を楽しみながら自由に歓談いただくスタイルで行われました。
参加者用の椅子の上にはドライフラワーの紅花。そして、中央のテーブルには藍の生花。どちらも、この日のために、山岸さんが「ご覧いただきたい、差し上げたい」と、ご自身の畑で育てたものをお持ちいただいたものです。
フレンチレストラン「GINTO」
「365日、仕事をしない日はない」という山岸さん。この日も、早朝、赤崩の工房での仕事を終えてから、新幹線でかけつけてくださいました。
山岸幸一さん
まず、店主・泉二が、初めて山岸さんの作品に出会ったときの衝撃と感動、その作品に惚れ込み、足しげく山岸さんの工房に通ったエピソードをお話しました。今回念願だった二回目の「山岸さんの作品展」と「もとじ倶楽部」を開催できたことに、感動のあまり言葉につまる場面もありました。
続いて山岸さんがご挨拶です。「黙って何も物を言わないものと対話しながら仕事をしているので、話すことは本来苦手なのですが……」と、照れながらお話を始めた山岸さん。気さくで、暖かいお人柄に、会場内も優しい雰囲気になっていきました。 「紅花とはどういうものなのか? 実際に育ててみないと本当に理解することはできません」。と山岸さんはおっしゃいます。紅花を朝4時から摘むのも、朝露で棘が軟らかくなって摘み易いというほかに、早朝から花摘みを始めないと紅餅づくりまでの工程を1日で終えることができないという理由があることを自らの体験から感じられたそうです。山岸さんが、『素材を活かす』を原点に紅花染めに取り組んできて見えたもののひとつには、「適した環境、適切な時期・時間」があります。赤崩という土地の持つ恵み、真夏の花摘み・紅餅づくり、極寒の中の真冬の寒染め。「自然と向き合ってその素材の一番良い時期を選んで染める『自然の摂理』が紅花にはある」。紅花の魅力について、そうお話されました。
また、「寒染めは、最後に零下の戸外に出て最上川の源流を使って糸を洗うので、半端な冷たさではなく、一瞬指先が凍傷になっていることがあります。ただ、それが後遺症になってしまわないのは、一昼夜かけて紅花染めを行っているからで、紅花の『血行を良くする』という薬効性のおかげなのかもしれません」。と紅花の紅色以外の効用について教えて頂きました。 山岸さんのものづくりは、常に「自然の素材を活かす」ということが原点にあります。「素材を殺してしまうと、どこかぎこちない。
寒染
素材を最大限に引き出してこそ、良いものづくりができるのではないでしょうか。全ては素材が教えてくれます。実際に体験して、良いと思ったものを実行してみる。やってみなければその本質を理解することはできません。その結果、やってきたことが良かったんだということを後で確認します。その積み重ねです」。手のぬくもりを感じる鮮やかな澄んだ色の織物には、手仕事で作られる素晴らしさを実体験した山岸さんだからこそ見える世界が広がっています。
綿帽子
紅花の染料を最大限に使い、糸本来の良さを引き出すために、山岸さんは「生繭」を使います。繭になった蚕を生きたまま冷蔵保存し、糸を採るときに、冷蔵庫から取り出し、灰汁をつかって煮立て、清水に放った後、綿帽子と呼ばれる袋状の絹綿を作っていきます。
糸を引くときはご自身で考案した道具を使いながら糸に撚りをなるべくかけずに糸の芯を真空状にして真綿糸をつくります。たっぷり空気を含んだ糸は、軽く暖かく風合いがあります。会場のお客様には、山岸さんが工房から持ってきてくださった綿帽子を実際に触れて頂き、実感していただきました。
最後に、品種登録された新種の白い紅花についてご紹介頂きました。「12年前に赤い紅花の畑から、3本の白い花をつけた紅花が咲きました。苦労をして一生懸命やっていれば良いことってあるんですね」。
新種の白い紅花
3年間同じ花ができれば品種として安定するといわれる新種ですが、山岸さんの白い紅花は12年続きました。そして、今年、新種『葆光(ほこう)』として認定されました。「染料としてはまだ実用化されてはいないですが、いつかこれを使って染織したいと思っています」。新種の紅花を語る山岸さんは、これからの新しい可能性について、とてもわくわくされているようでした。
新種の「葆光」、山岸さんが取り組む「羅」
もとじ倶楽部が始まって1時間15分が過ぎたころ、お客様からの質問タイムになりました。 新種の「葆光」、山岸さんが取り組む「羅」、烏梅、ルーペで組織をみたときの糸の輝きについてなど、次々に質問の手が挙がりました。
その後先生を囲んでお食事・歓談を楽しんでいただいたき、午後3時半頃に「もとじ倶楽部」はお開きとなりました。
山岸幸一さんの持参品 「山岸さんてとてもきさくな方ね」「きものって高価ってすぐに思いがちだけど、これだけの手間隙がかかっていると思うと納得できるわ」「参加して本当によかった」「これから展示会で作品をみるのが楽しみです」など、うれしいお言葉を沢山頂きました。ご参加くださいました皆さま、本当にありがとうございました。
もとじ倶楽部

2006年9月16日 於:GINTO

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