銀座で唯一の小学校「泰明小学校」にて、 毎年、店主の泉二(もとじ)は小学校5年生の課外授業『銀座の柳染め体験授業』の一日先生になります。 ことの始まりは、店主・泉二弘明の長男がこの小学校に通っていた時のこと。 「絹がどうして出来るのかを息子や友達が知らなかった」ことに驚き、店を2週間休んで、 店内に蚕棚を作り、蚕を育て、絹が出来るまでを実際に見せたのがきっかけでした。 その後は「銀座の柳」を使った『柳染めの体験学習』が中心となりました。 今年は5月19日に柳の剪定をしました。五月晴れの爽やかな日に、 店主泉二とスタッフ総勢10名で泰明小学校に出向きました。
まずは、生徒60人あまりとスタッフが講堂に集合して、泉二による剪定時の注意に耳を傾けます。「君たちが5年生になるまで柳は毎日見守ってくれた。今日はその命をもらう。葉一枚も大切に使おう。一生懸命素晴らしい思い出を作ろう。」
今年は泉二の長男も参加することができご挨拶。卒業生でありこの授業のきっかけとなった人の登場に、 生徒たちも嬉しそうに驚いていました。
わくわくした笑顔で校庭へ。泰明小学校には二つの柳があります。これが、銀座の「2世柳」「3世柳」です。 校門の横にある「2世柳」の背は、 校舎の3階部分まで届くほど。 スタッフが教室の窓や校門の上から長いハサミでざっくり切ると、 下で待ち受けていた生徒たちが わーっと一斉に駆け寄ってきて、次々と葉を持っていってくれます。
上から降ってくる柳をつかむのがおもしろくて、 大きな枝を手にすると嬉しそうに高く掲げながら校庭を元気に走り回っていました。 校庭の職員室前にある「3世柳」はちょっと小ぶりのサイズ。
校門の柳を挿し木にして育てた柳の木です。 こちらは生徒たちが手が届きやすいので、一列に並んで順番に刈っていきます。 スタッフがちょっと引っ張って、その先を生徒たちがチョキチョキ。 自分の手で刈れる柳が1本だけなので、みんなで少しずつ分け合います。
切った柳は煮出すために長さ10cmくらいにカットします。 太陽がさんさんと降りそそぐ校庭。キラキラ輝く柳をチョキンチョキン。 みるみる内に袋がいっぱいに。新鮮な草のいい香りがします。 心地よい風が吹き抜けて、校庭に葉が散りばめられてしまったけれど、最後の一枚まできちんと集めました。 太陽の恵みをたっぷり浴びてすくすく育った命をいただいたということ。 自分の手で刈って、集めて、私たちもあらためて自然への感謝の気持ちを思いました。生徒たちの本日の 授業はここで終了です。 午後はスタッフたちで、柳の煮出し作業です。大きな寸胴鍋を4つ。その中に さきほど刈った柳の葉をこぼれんばかりに入れてひたひたの水で煮ること約2時間。
途中何度か蓋をあげておたまでかきまぜると、その度に色が濃くなっていきます。 黄色がかったような透明な茶色。この作業を2回分、寸胴鍋8つ分、約18ℓの染液が出来上がりました。 これを使って「銀座の柳染め」実習をします。