「版のリズムで空間を創造する」
群生する自然を見て、その花や草木のリズムをつかみ、デザインに落とし込んでいく、という鈴田滋人さん。
自然の摂理によって、それらのリズムは、繰り返しになっているということに気づかされるのだそうです。何度もスケッチを重ね、つかんだリズムを形にし、アクセントを加えていくという作業、面で捉え、色で分け、空間を取り入れていく、バランス感覚の必要な仕事は、一朝一夕には成しえません。
鈴田滋人さんは、武蔵野美術大学 日本画学科をご卒業されています。同じ木版摺更紗の技法によっても、父 照次さんと滋人さんの表現には、それぞれ異なる明確な個の作家性がおありです。
鈴田照次氏の作業風景と屏風作品
下記、絵羽作品、「木版摺更紗着物 儚花樹(ぼうかじゅ)」の設計図
また、この度の個展では、初めて銀座もとじがプロデュースする「プラチナボーイ」の白生地に作品を手掛けていただきました。「プラチナボーイ」は、雄の蚕のみの糸を使って織り上げた布。今回の個展に向けて、2点のプラチナボーイ作品を絵羽着物でお作りいただきました。初めてプラチナボーイの白生地を手にされた鈴田さん、伸び縮みが少なく大変良い生地で、木版摺更紗に適した布であること、希少なプラチナボーイの白生地での制作過程は大変慎重になり、その緊張感で良い作品に仕上がりました、とご感想をお伝えくださいました。
鈴田滋人さんは、作品に「ひと色を足す」ことへの慎重さ、こだわりを強くもち、また、版を打つ位置と打たずに残す余白との関係性、"空間を築く"方法を吟味して作品に反映されていらっしゃいます。空間を創造していく「版のリズム」の響きは、身に纏われることでさらなる美しい音楽を奏ではじめます。
第58回日本伝統工芸展出品作 「木版摺更紗着物 儚花樹(ぼうかじゅ)」
プラチナボーイ作品 「木版摺更紗着物 松景」