ご注文・お問い合わせはこちら(11:00〜19:00) 03-5524-3222
銀座もとじ
EN

読みもの

  • プラチナボーイが糸を吐き始めました

プラチナボーイが糸を吐き始めました

プラチナボーイが糸を吐き始めますよ!」 2008年9月、店主:泉二(もとじ)とスタッフたちは急いで現地へ向かいました。 2007の春、世界で初めて製品化された雄だけの蚕品種『プラチナボーイ』。 その第三弾である蚕たちが今年も糸を吐き始めたのです。 案内してくれたのはJAの生天目勲(なばためいさお)さん。 養蚕農家、石川浩(こう)さんを訪ねました。
「この人の養蚕はピカイチなんですよ!」生天目さんが太鼓判を押す石川さんは、 なんと農水祭天皇杯(農林水産祭の最高の栄誉)を受賞したこともある超エリート養蚕農家なのです。
店主・もとじと養蚕農家の石川さん
桑畑
石川さんの養蚕農家のすぐ横には、JAの稚蚕飼育所があります。ここでこの管轄地域の全稚蚕を飼育しているのですが、その数なんと360万頭!プラチナボーイの稚蚕も孵化するとまずここで 1〜2令まで育てられます。この稚蚕の飼育をしているのが生天目さんです。 温度29〜30度、湿度85〜90%が保たれた無菌室。
餌は羊羹のような固形を、チーズおろしのような金目で手作業ですりおろしてあたえるというとても大変な作業です。稚蚕はここで5〜7日間、 2令幼虫の後、脱皮(=2眠)して3令となると、石川さんの手に渡ります。 3〜4令まで育てる密封されたテント小屋の中は温度27度前後。 この時の蚕は淡いグレーで、本当に小さく、まるでちりめんじゃこのような形状です。
「キザミ」といわれる桑を刻んだものを食べて、4令になるまでに、体重は孵化したときと比べると なんと1万倍にまで増えているのだそう。 ここに9日間ほどいて、2回脱皮(3眠、4眠)すると、やっといわゆる“蚕”らしい白い幼虫になります。
桑の葉を食べる蚕
蚕の飼育場
5令となった蚕はいよいよ糸を吐く場所へ。 蚕座(さんざ)という、25m×2mほどの箱の中に、およそ3万頭の蚕が入り、糸吐きに備えて桑の葉をもりもり食べます。 桑は1日1回ですが、一番多い時には4回あたえないとなくなってしまうくらい、すごい勢いで食べるそうです。
1週間ほど猛烈に桑を食べた後、ぴたりと食べなくなり、頭を上げてS字にゆらしはじめたら、そろそろ糸を 吐く合図。吐きはじめるのは孵化してから約25日後です そうなると蚕座に、蔟(まぶし)という、格子状の枠を置いて、自然に上に上がるのを待ちます。 この格子状のひと枠が、糸を吐いて繭を作る蚕たちの住処となるのです。 だんだんと上に上ってくるのですが、蚕たちは上が好きなので、どうしても上ばかり集まってしまいます。 時には天井まで登ってしまう元気な蚕も。でもまんべんなく住処を見つけてほしい。 そこで登場するのが回転蔟です。
蔟の中心にポールが通してあって、上にたまって重くなると くるりと回転する仕組みになっています。 落ち着く時期はみな少しずつ違うので、くるくる回ることで、みな自分は上にいるのだと感じながら住処を 決めるようになるのです。
蚕が繭をつくる装置
回転まぶし
この回転蔟がある上蔟室(じょうぞくしつ)の適温は23〜24度、室温は60〜70%に保つのが良いとされています。 温度が16〜18度になってしまうと、蚕は糸を吐くのを一時的にでも止めてしまい、それから温度を上げれば また糸を吐き始めるので繭にはなるのですが、その後の糸取りの時に糸が切れてしまったりするとのこと。
でも適温だと、夜通し止まらず2〜3日できれいに吐くことができるのできれいな糸ができるのだそうです。 だから、このときの温度と湿度、さまざまな環境が、いい糸を作り出すのに最も重要な影響を持っているのです。 「石川さんのとこはとにかくきれい。清潔であるということは良い糸を取るためにとても重要なんです。」 と生天目さん。 石川さんが良い糸を作れるのは飼育条件が良いから。
石川さんの養蚕農家は本当に広い。一面に広がる桑畑だけでも3〜4町歩(3万〜4万平方メートル)。 この規模を奥様とたった二人でまかなっています。 このゆったりとした敷地内だからこそ、良い環境を作り出すことができ、 風も通る、清潔な飼育所ができるのです。
蚕の餌になる桑の葉
石灰を引いて予防
5令の時、蚕座が置いてある場所は乾燥が大事。地面に 石灰を敷いて乾燥と蚕の病気予防をしているのですが、石灰を使ってまでするのは石川さんだけだそう。 また上蔟室はさらに一番大切な工程。
石川さんは温度・湿度を最適に保ち、風通しを良くし、また蚕が 糸を吐く前にすべて出しきる体内の水分が含まれる新聞もすぐに替えて水分(=湿気)がたまらないように するなど、細心の注意をそそいで育てているのです。 この飼育条件を誠実に守っているからこそ、最高とされる上質な糸がとれるのです。 2008年9月に取れたこの繭は、秋繭。これから糸が紡がれ、染色、製織などさまざまな工程を経て 作品として出来上がるのは来年です。 「自分が育てた蚕のきものを見てみたいなぁ」と石川さん。 これまで養蚕はどこの農家の繭も一緒くたにされ、目方で売買されてきました。 だから、自分の蚕のきものがどれかなんてわかりませんでした。 でも、プラチナボーイは「履歴のわかる、正真正銘の純国産の絹」。
どの農家のものがどの作り手に渡り、どのような作品となったかまで、すべて履歴を残し、 すべての人の名前がわかります。 はじめて、石川さんは自分の手がかかわったきものを見ることができるのです。
糸を吐いて繭を作る蚕
手の上のプラチナボーイ蚕
「必ず持ってきますからね。」泉二は約束しました。 石川さんも生天目さんも泉二も、そして作り手たちの想いをお客様に伝える私たちスタッフも、 さらに実際お召しになるお客様まで、ひとつのバトンでつながっています。 でも、第一走者は蚕たち。あの小さな体から美しい糸を作り出してくれる。 そのバトンをしっかりとつなげていきたい。
まだまだ年間生産反数も限られていますが、 ぜひこの、世界が待ち焦がれた夢の生糸を体験してください。

商品を探す Search
Products