久保原由佳理さんは、同じ長野県松本市でご活躍されていた国画会会員の染織作家 本郷孝文さんがご近所だったことから、幼い頃から本郷さんのお宅を出入りし、身近でその仕事振りを見ながら育ちました。そういった幼少時代の貴重な環境やご経験があったことがきっかけとなって、染織の世界にご興味を持たれました。


「でもずっと“何かものを作りたい”という気持ちはありました。洋服にも興味はあって服飾の道も考えたけど、どうも“流行を追う仕事”は自分に向かないと感じてしまって。それで手仕事でじっくりとものを作っていける着物の染織の道へ進むことにしたんです。」
染織の道へと歩むことを決意した久保原さんは、大学を卒業後、本郷孝文さんの師でもあった、東京の染織作家 柳悦博さん、崇さん父子※の元で3年間修業を積みます。
※柳悦博氏・崇氏……日本の芸術運動の推進者であり、「民藝」の創始者 柳宗悦氏の甥であり、日本の染織界を牽引してきた染織家 柳悦博氏とその息子で同じく染織家の柳崇氏ご主人である同じ染織作家の大月俊幸さんとも本郷さんの工房にて出会われ、その後ご結婚されます。現在の久保原さんの工房でお二人が使っている機も本郷さんから譲られたものだそう。本郷さんは、幼いころから現在に至るまで、久保原さんの人生のさまざまな出逢い生んでくれた大切な方なのだそうです。

久保原さんの緻密で繊細で確かな織り、そして自然の恵みいっぱいの配色バランス見事な色彩には、久保原さんの真面目でひたむきで純粋な、優しいお人柄が表れ、本当に美しく、作品の完成度の高さには、感動を覚えます。
