18歳のとき東京へ出て、呉服会社のデザイン部に所属。茶席関係のきものを扱う取引先が多く、 「侘び寂び」の表現力を鍛えられたそう。仕事をしながら、絵の基礎は東京の武蔵野美術大学の夜間授業で学びました。
生駒さんは、図案から友禅まで室内でできる作業すべてをこの場で行う、自社工房での一環制作を基本としています。 たてにつづく畳3部屋でもくもくと作業をするお弟子さんたち。声をかけあえるほどよい大きさの空間だからこそ、 気持ちのかよったたったひとつの作品がつくり上げられるのです。
「まずは自分が楽しくなくては楽しいものができない。」 生駒さんの作風の多様さにはいつも驚かされます。 東京友禅の色味を抑えた美しい季節の花草が描かれたと思えば、 虫や動物などストーリー性のあるユーモアたっぷりの作品が出来上がります。 「とにかくやってみようと思うんです。」 想像力が泉のようにわきあがります。
「制作時期は、夏柄は夏に作る。春柄は春に作る。その季節じゃないとイメージがわかない。 出来上がるとその季節は終わっているけれど、来年見ていただければいいんです。」 心で感じたことが、自然なかたちで作品となる。その自然な流れを大切にしている生駒さん。 生駒さんの作品からはいつも楽しい心の響きが伝わってきます。
京友禅・加賀友禅は明るい多彩な仕上がりであるのに対し、東京友禅は一見シックでシンプルで深みのある印象。 しかし、制作現場で使われる染料の色数はほとんど変わらないのだそう。同系色の濃淡が多いので 色数が少ないように感じられますが、実はその中に非常に凝った職人芸の世界が繰り広げられています。
東京友禅の洗練された「粋な感覚」。都会派感覚の知的ニーズに応え、品格を大切にし、 着る人を引き立てる着物を追求される生駒暉夫さん。自然を愛でる素直な心と、職人の粋。 今、一番充実した時代を迎える制作活動。 ぜひ美しい粋の世界をご覧くださいませ。