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「プラチナボーイ展〜銀座のものがたり〜」〜ぎゃらりートーク〜

2008年10月5日(日)〜13日(月)まで、銀座もとじ【和染】【和織】【男のきもの】にて開催される 「プラチナボーイ展〜銀座のものがたり〜」。 10月5日(日)には養蚕・製糸・製織の専門家の方を お呼びして、蚕と繭の特徴や糸と織を通して見えてくる『プラチナボーイ』の素晴らしさについて お話いただく「ぎゃらりートーク」が催されました。 今回お話をお願いいたしましたのは、財団法人 大日本蚕糸会 蚕業技術研究所 所長 井上元様と、 江口機業株式会社 代表取締役社長 江口英治様です。
長年の研究のもと、これまで数え切れないほどさまざまな 蚕や繭、糸を手で触れ、目で見てきた、養蚕・製糸業の専門家です。 世界で初めて製品化された、オスだけの国産新蚕品種「プラチナボーイ」は、プロの目にどのように映ったのでしょう。 飼育や糸づくりにおける特徴をお伺いしました。
ぎゃらりートークの様子
プラチナボーイの繭
まずはじめに、日本の養蚕製糸業を支える大日本蚕糸会の井上所長さんにお伺いしました。 オスの蚕の特徴はどのようなものなのでしょうか。 「一般的にメスよりもオスの方が卵を産まないぶん、体が小さく、よって吐口が小さくなり糸も細くなります。
製品にするには、糸は細い方がしわになりにくく、しなやかな生地を作ることができるので、世界中の 養蚕業の研究者が長年、オスだけの蚕を選び出す技術を夢見てきたんですよ。」 現在、流通しているシルク製品はすべてメスとオスの糸が混合されています。 しかし卵を産まないオスの蚕は、メスよりも20%ほどの多くの絹を生産し、 身体にあるたんぱく質をすべて糸に吐き出すことができるため、メスの蚕が作り出す糸に比べて、 艶も丈夫さも糸の長さもそして細さも特別と言われてきました。 よりクオリティの高いシルク製品を目指して、遺伝子レベルの手法で研究に成功し生み出された新蚕品種 「プラチナボーイ」は、養蚕研究にたずさわる世界の誰もが待ち焦がれていた画期的な成功だったのです。 「昭和23年頃から、日本の養蚕を良くしたいと、大日本蚕糸会でも新しい蚕品種の研究が進められてきました。 オスだけの蚕の研究もこの頃から。「プラチナボーイ」を生み出した、大日本蚕糸会 大沼昭夫博士は 37年という年月をこの研究に注がれたんです。研究者たちからも難しいといわれた遺伝子学の「平衡到死」という工法を用い、 オスだけを孵化させる技術が出来ました。大沼博士のご苦労は本当に、想像を超えることでしょう。 そうして生み出された「プラチナボーイ」は、期待していた以上に、好条件を併せ持つ蚕品種でした。 飼育でも、オスだけで統一されているので発育のそろえが良く、またオスの方が丈夫という特徴があります。 糸の質も抜群でした。日本が世界へ自信を持って誇れる蚕品種でした。 外国産の絹糸が輸入されている現在、最高級のクオリティを誇る純国産絹糸として期待しています。」
プラチナボーイの糸
次に、新潟県五泉市でプラチナボーイの糸で塩瀬地を織り上げていただいている江口英治さんにお伺いしました。 「糸を見た瞬間、あっこれだ!と思いました。本当に久しぶりにいい糸に出会いました。飴色がかったというか、 なんともいえないふんわりとした絹色だったんです。
40年前、会社に入ったばかりの頃の糸の色、 丁寧に糸を作っていた農家からもらった、あの時代の糸に似ていたんです。」また、一般的に織機にかけるとき、 たて糸が強く張られている方が良いとされているのですが「プラチナボーイ」の糸はとても丈夫であることが すぐにわかった。だから通常より1割5分増しでたて糸張力を強くしてみたんです。そうしたら予想通り、 十分に耐えられる糸だった。丈夫だし、節も本当に少ないし、ムラもない。久しぶりに達成感のある糸 に出会えて嬉しくなりましたよ。」
純国産絹マーク使用許諾(表示者登録番号011)
「プラチナボーイ」の糸は国も太鼓判を押してくれました。 2008年7月18日、銀座もとじは「プラチナボーイ」に対して、社団法人日本絹業協会より 『純国産絹マーク使用許諾(表示者登録番号011)』を取得しました。 純国産絹マークは、国産の繭から繰糸した生糸等を用いて国内で、製織、染織、 加工及び縫製された純国産絹製品であることを一般の消費者が容易に識別できるようにするためのマークです。
厳しい審査のもと、初回は全国で11団体に許可がおりました。 そのひとつに「プラチナボーイ」は選ばれたのです。 さらに、プラチナボーイは「履歴のわかる、顔の見えるものづくり」に取り組んでいます。 養蚕農家、糸屋、織屋、染屋、など、作品づくりに携わったすべての人の名前を証紙に記載しているのです。 店主:泉二(もとじ)は、 「銀座もとじのスローガンは「一本の糸から」。糸にこだわり、最高の素材を追求したい。その思いは、 14年前の出来事からはじまりました。当時、小学5年生だった息子が言った『着物は何からできるの?』という ひと言にはっとしたんです。2週間、店を休んで、着物をすべて片付けて、蚕を飼いました。 毎日のように桑の葉を取りにいきました。お客様はもちろんのこと、スタッフや家族にも、着物のもととなる 蚕を見てもらったんです。その頃から“桑の葉、種、繭からかかわって着物をつくりたい”というのが ずっと夢でした。今回、プラチナボーイを繭からプロデュースする機会をいただき、 私の長年の夢もやっと叶いました。感謝の気持ちでいっぱいです。」
プラチナボーイの三眠蚕
店舗には今回、生きているプラチナボーイの蚕を展示しました。これは普通のプラチナボーイの蚕 ではなく「プラチナボーイの三眠蚕」。プラチナボーイ生産の第二弾の新しい試みとして育てられた、 通常の4眠(=4回脱皮、5令)ではなく、3眠(=3回脱皮、4令)の蚕です。
泉二は数頭を手にとり、「もう我が子のように可愛く思います。この子たちが一生懸命美しい糸を生み出して くれているんです。私たちも一生懸命美しい着物を作らなければいけない。がんばらないとなりませんね。」 会場には、プラチナボーイの作品を手掛けてくださった3人の作家さんもお集まりくださいました。
紅花染めをされたプラチナボーイ
山形県米沢市で紅花染めをはじめとする草木染めをされている山岸幸一さんは、「プラチナボーイは糸に 粘りがあった。私は真綿を作っているので繭を引いたときにその糸の質を手で感じる。
染め付けもよく、 重ねて染めても艶が良くて、発色がとてもきれいに仕上がっている。これからまだ3年くらい染め重ねて、 寝かせてから、私は作品づくりに取り掛かりますが、今から出来上がりが本当に楽しみです。」
プラチナボーイ大島紬
鹿児島県で大島紬をつくられている田畑安之助さんは、「糸に張りがあって、節も本当になかった。大島紬は さまざまな工程で糸を酷使するけれど、プラチナボーイの糸は丈夫だった。
通常、薄色を染めるとムラになりやすいの だけど、節がないからとてもきれいに染まった。自慢話になるけれど、すごく良い作品が出来たと思っています。」
益田勇吉によるプラチナボーイ大島紬
同じく鹿児島で大島紬をつくられている益田勇吉さんは、「整経の糸のさばきがしやすかった。様々な工程において 毛羽も立たなかったし、出来上がりの手触りや、見た目の光沢が本当に完成度が高い。作っていて楽しかった。」 やはり、糸質の違いをすぐに感じられたそうです。
卵からかかわるから、想い入れが違う。 プラチナボーイにかかわったすべての人が言いました。ひとつの作品が出来上がるまでのすべての工程の 人々とのつながりを実感できたことは初めてだと。これまで、自分の仕事が何につながるか、追うことはできません でしたし、そうすることもありませんでした。 でも、「プラチナボーイ」は「履歴のわかる、顔の見えるものづくり」。作り手をつなげることができるのです。 今回、会場には、蚕の研究者、製糸の専門家、繭や糸から作品を作り上げる作家、お客様にお届けする私たち、 そして何よりも、糸を生み出す蚕たち、その一同が集うことができました。 これはとても画期的な、大変嬉しいことです。 これからも銀座もとじは、それぞれの分野を支えてくれる人々を結び、さまざまな工程の 人々に出来上がった作品を見せ、喜びをわかちあい、さらに品質の良い製品を作っていきたい、 ひとつのチームとして「プラチナボーイ」に取り組んでまいります。 純国産生糸の国内需給率が5%未満という現状に向い打つべく生まれた、価値のある純国産生糸。 日本養蚕業界の期待の星です。 まだ生産数も限られていますが、 ぜひ、究極の美しい絹布を目で見て、手で触れ、感じてください。

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