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  • 藍田正雄作 江戸小紋 縮緬(松岡姫)「毛万二割(けまんふたつわり)」型紙は、伊勢型紙 縞彫り 人間国宝 故 児玉博氏|創業者 泉二弘明のおすすめの逸品

藍田正雄作 江戸小紋 縮緬(松岡姫)「毛万二割(けまんふたつわり)」型紙は、伊勢型紙 縞彫り 人間国宝 故 児玉博氏|創業者 泉二弘明のおすすめの逸品

創業者 泉二弘明のおすすめの逸品 藍田正雄作 江戸小紋 縮緬(松岡姫)「毛万二割(けまんふたつわり)」 型紙は、伊勢型紙 縞彫り 人間国宝 故 児玉博氏

今月の泉二弘明のおすすめの逸品は、江戸小紋師 藍田正雄さんの手による細微な美の世界から、極細の縞紋様による「毛万二割(けまんふたつわり)」の作品をご紹介いたします。
藍田正雄作 江戸小紋 縮緬(松岡姫)「毛万二割(けまんふたつわり)」
極細い、精緻な美を映し出す、藍田正雄さんの「毛万二割(けまんふたつわり)」は、伊勢型紙の人間国宝・故 児玉博さんによる「縞彫り」の型紙を使用して染められました。 「縞」と一口に言っても、日本の伝統紋様である縞柄には、数えきれないほどの種類があります。太縞、細縞、子持ち縞、よろけ縞、鰹縞、矢鱈縞、刷毛目縞、千筋、万筋などなど・・・。
その中でも、細い縞を表す「細縞」より、さらに細い縞を「万筋」といい、柄の細かさを競った江戸小紋の染め柄の世界では、さらに「極万筋」「毛万筋」といった人間技とは思えない、精緻な縞の世界を極めていきました。 「毛万筋」とは、文字通り、髪の毛ほどの細さを表し、一寸巾に20本以上の縞がある縞柄をさしますが、「毛万二割」は髪の毛ほどの細さのものをさらに二つに割ったほど、といった細さを表し、江戸の粋と職人魂の極致を表現したような、究極の縞柄です。
その「毛万二割」の型紙を彫った、人間国宝・故 児玉博氏は、藍田正雄さんが惚れ込んだ伊勢型紙の職人でした。かつて、藍田正雄さんは、なんども児玉さんに、自分の希望する型を彫って欲しいと頼み込んだのですが、最初は全く相手にはしてもらえなかったそうです。何度目かの訪問で、「そんなに俺の型紙が欲しいのか。これならやるわ!」と一枚の型紙をもらったのです。藍田さんは、すぐさま工房のある群馬県の高崎に戻り、その型紙で一反の白生地を一週間で染め上げて、児玉さんに見てもらいに再び出向いたそうです。それを見て、今度は、児玉さんが藍田さんの腕に惚れ込んだのです。「いい仕事をする。どんな型紙が欲しいんじゃ」と。それが縁で藍田さんは、児玉さんが亡くなるまで型を彫って貰っていました。
藍田正雄さん

この「毛万二割」の型紙は、そんな藍田正雄さんと児玉さんとの出会いがあり、今でも大切に保管されている貴重なものです。児玉さんの職人魂と情熱が、型紙となり、藍田さんの手により、布に染め上げられることで、作品の中にいつまでも息づき、身に纏う喜びを与えてくれます。 こちらの逸品でご紹介する作品は、上品な肌触りとしなやかな風合いの松岡姫の絹布を用いた、ほとんどシボのないさらりとした縮緬地に染め上げられました。縞と直角に入れた“糸入れ”の表情もしっかりと感じられ、「毛万二割」の極細の型紙を使用した本物の作品であることがおわかりいただける確かな作品です。

藍田正雄作 江戸小紋 縮緬(松岡姫)「毛万二割(けまんふたつわり)」

※糸入れ…縞の型は彫ったそのままだと縞がひらひらと揺れてしまうため、一度型紙を2枚に剥がし(縞型は美濃和紙が2枚重なって1つの型紙となっています)、その中に糸を縞の方向と直角に多数入れて、また型紙を重ねて元に戻します。こうすることで左右上下に縞がぴしっと整ったままに、型紙として使用することができます。その“糸入れ”した糸の表情がほんのりと浮かび上がって感じられるのが、手仕事の本物の型紙で染めた万筋の醍醐味です。

藍田正雄さん 工房風景
また、藍田正雄さんは、後継者育成にも確実な結果を残していらっしゃいます。匠の技術と感性の素晴らしさもさることながらその温かなお人柄も魅力的な藍田さんを慕い、藍田さんのもとで育った後継者は、現在本当に素晴らしいご活躍をされていらっしゃいます。 藍田愛郎さんもそのおひとり。藍田正雄さんの最初のお弟子さんであった田中正子さんは、息子の成人式に自分が染めた藍染めの着物を着せたいと願って、それを目標として藍田正雄さんの元で励み、息子の成人式用の着物を作り上げました。そして、お母さんが自ら作った、藍染めの着物を成人式に着た息子さんが、田中愛郎さん、その後、「藍田」の名前をもらうこととなる、現在の藍田愛郎さんです。
愛郎さんは、成人式に着た藍染めの着物が忘れられず、大学を卒業した後、藍田正雄さんに弟子入りを請い、入門したのです。愛郎さんは、日本工芸会新人賞、東日本伝統工芸展の川徳賞を受賞するなど、現在、素晴らしいご活躍を続けていらっしゃいます。 9月17日(木)から銀座もとじにて開催の「江戸小紋 藍田正雄 展 ~極小の美~」では、藍田愛郎さんの作品もご紹介いたします。
藍田愛郎さんが、「毛万二割」の伊勢型紙の糊置きを見せて下さいました。 藍田愛郎さんが、「毛万二割」の伊勢型紙の糊置きを見せて下さいました。
親方の藍田正雄さんから、最初の藍田さんの弟子となられたお母さんの想いを通して、受け継いできたものの大きさと確かさは計り知れず、また愛郎さんご自身が、親方の教えを人生を掛けて自分のものとし、磨き上げてきた技と感性の素晴らしさは、その手を通して、生まれた作品の中に確かに込められていきます。
左が「毛万二割」の伊勢型紙、右は愛郎さんが白生地に糊置きをしたもの
左が「毛万二割」の伊勢型紙、右は愛郎さんが白生地に糊置きをしたもの
最後の渡り職人と言われ、江戸小紋に人生を掛け、江戸小紋を後世に受け継ぐこと、同時に伊勢型紙を守ること、江戸小紋のために全てを投げ打っても構わないと思うほど江戸小紋に魅せられ、江戸小紋を愛し続けてきた藍田正雄さんの作品とともに、その魂を受け継ぐ愛郎さんの作品をご覧いただける、またとない展示会です。ぜひ、この機会に足をお運びください。

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