歩き方と着崩れ
着物を着てあちこちを歩くと申しますと、どうしても「着崩れ」を心配される方が多いでしょう。 皆が着物を着ていた明治時代以前は、日本人の歩き方が現在と違っていたという話しを聞いたことがあります。何でも、あまり手を振らずに歩くのが普通で、振った場合には、手と足が同時に出るような歩き方だったと聞きます。この歩き方の場合、身体をねじることが少ないため、着物もあまり着崩れなかったそうです。 しかし現代でも着物を着たときにだけ、そのような歩き方をするというわけにもいきません。現代ならではの歩き方を身に付けていかれればいいと思います。裾さばきをよくする「股割またわり」
着物の着付けが終わったら、「股割り」をしておかれると、歩きやすくなります。相撲で言う「股割り」とは少し違いますが、両足を外股に広げて、一度軽くしゃがみ込むことです。こうしておくことで、左右に打合せた裾除けや長襦袢、着物の裾が適度に広がり、裾捌きがよくなります。鼻緒の調整で歩きやすく
次に確かめていただきたいのが、履き物の鼻緒の具合です。履いていて足の指や甲が痛くなるのは鼻緒がきつ過ぎる証拠ですし、逆に、鼻緒に指がするりと入るようでは、緩過ぎます。このような場合は、履き物店で鼻緒の調整をしていただくといいと思います。 また、最初に草履をお履きになるときは、鼻緒を引っ張って柔らかくしておくと、歩きやすくなります。下駄は滑らないように、濡れたタオルで拭くといいでしょう。背筋を伸ばして歩く
歩くときは、つま先に力を入れ、やや外股加減にし、背筋を伸ばして歩くようにすると、草履が滑りにくく、歩きやすいはずです。また、このような姿勢で歩けば、いかにも着物を着慣れた人のように見えます。自然な身のこなしで優雅に振舞う
一旦着物を着て外にお出になったら、細かな着崩れをいちいち気にしないことです。男子たるもの、多少の着崩れも気にせず、どーんと落ち着いた様子が、一段と男っぷりを上げるでしょう。 ただし、着物姿はそれだけで周囲の注目を集めているということをお忘れなく。電車の中で足を組んで座ったりすれば、長襦袢や肌着などが丸見えになりますし、洋服のとき以上に、マナー違反が強調されてしまいます。 身のこなしにも配慮が行き届いてこそ、着物姿が周囲の羨望を集めるのです。男の着物人生、始めませんか 一覧