四季を着る
最近は冷暖房が整い、真冬でもコートの下は半袖という人もいるくらいですが、日本には季節があります。せっかく四季のある日本に生まれたからには、季節の変化とともに衣服の変化も楽しみたいものです。着物は、季節を感じ、春夏秋冬を楽しむにはぴったりです。 以前は季節に先駆けて素材や色を選ぶのがおしゃれとされていましたが、まだ寒い時期から無理をして薄い春物を着たりすることはないと、私自身は思っております。そのときの気候に一番合ったものをお召しになるのがいいでしょう。 着物には仕立ての違いによって、裏の付いた「袷(あわせ)仕立」と、裏の付いていない「単衣(ひとえ)仕立」とがあります。春秋冬には袷を、6月と9月は単衣を着ます。 そして、7月や8月は絽(ろ)や紗(しゃ)、麻などの涼しげな薄物を選びます。墨や濃紺などの濃い色の着物の下から白い長襦袢が透けて見える様子は、何とも涼し気で、まわりの人まで心地よい気分を味合わせてもらえます。 帯や半襟も、季節によって素材を使い分けます。「素材と季節」を五感で楽しむ
一見、難しそうですが、素材の違いを味わえるのは洋服以上です。着物というと、見た目がシンプルな分、素材が豊富で、そのおもしろさにとりつかれる方も少なくありません。現に、私もその一人です。 「春の大島、冬の結城」という言葉があります。薄手でさらさらした風合いの大島紬は春に、冬には真綿でふっくらと織られた、温かい結城紬が適しているという意味です。 着物好きの方たちは、「シュッシュッ」という大島紬独特の衣擦(きぬず)れの音を耳にすると、「春がやって来た」と感じます。このように、着物が季節を表すのです。 着物というと、夏は暑くないのか、冬は寒くないのかといった質問をよく受けます。しかし、そこは四季の国日本の「衣」です。夏は涼しく、冬暖かなのは、実際、お召しになれば、本当だったとお分かりいただけるはずです。 文化もさることながら、こうした、現代では忘れがちな季節感を五感で味わえるというのは、なんと贅沢なことでしょう。*大島紬・・・・・鹿児島県奄美大島を中心に織られる。泥染めが特徴。 *結城紬・・・・・茨城県結城市を中心に織られ、真綿から紡ぐ紬糸を使っている。
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