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【対談】 海老ケ瀬順子さん×銀座もとじ 『海老ケ瀬順子展~記憶のかたち~』に向けて

写真左より、店主 泉二弘明、海老ケ瀬順子さん、銀座もとじ 文化企画デザイン室  續

【対談】 海老ケ瀬順子さん×銀座もとじ
『海老ケ瀬順子展~記憶のかたち~』に向けて

梅雨入り前の青天に心もかろやかになります。 間もなく、海老ケ瀬順子先生の3回目の個展催事がはじまります。
草木染めの色彩で一刻一刻と移りゆく時を織り込める。 貴女の装いをもうひとつ華やかに日本人としての五感を呼び覚ます織物です。
個展直前、先生に今のご心境をお聞きして参りました。

弊社文化企画デザイン室  續(以下 續):
今日は京都市内まで御越し下さりありがとうございます。 当初は昨年5月開催でしたので、こうして6月開催できますことを心から御礼申し上げます。
先生、「コロナ禍でのものづくり」はいかがでしたでしょうか。

海老ケ瀬順子先生(以下 海老ケ瀬):
「不要不急」とありますが、どなたかが、あなたたちの仕事は不急ではないが、 不要ではないですね。と言われて、心が救われました。
今と向き合うと自分の仕事が必要なものなのか、考えることもありましたが、 集中できることがあること、生活もあるので、ありがたいことです。

基本的にはいつもの生活とは変わらないです。
出掛けることも圧倒的に少なくなり、より制作に集中できたと思います。
今回の個展催事用にすくいの織を取り入れられた作品を2枚*作りました。
*作品名「桐壺」「糸遊(かげろう)」


(写真)穀織絵羽「糸遊(かげろう)」

去年もすくい織には取り組みましたが、思っていた以上に時間がかかってしまい。 こういう時だったからこそ、より集中することができました。
金糸も種類がありますので、草木染めに合う、しかも水に入れても大丈夫で質の良いものを選びました。諧調というか、一枚の絵羽の着物にリズムが生まれました。

續:
絵羽着物二枚の内、「桐壺」は発売中の美しいキモノ夏号の誌面、弊社のDM、HPでもご覧いただけます。そして、こちらは、見覚えのある絹の光沢と色、絣の暈しがうつくしいです。

海老ケ瀬:
そう!もとじさんは白鷹の天蚕でお着物も作られていましたよね。
こちらは穀織絵羽「糸遊(かげろう)」と題し、蜘蛛の糸が光に照らされ揺らめいている様子を表現しました。緯糸は安曇野の天蚕を使用して、絣、すくいも織り入れました。
経糸は練った糸と生糸のままの糸の二重経て、白く艶やかな絣糸はプラチナボーイの糸です。天蚕ならではの色合いを大切に、お召しになる方の着姿を一番に思い、染め織りました。
もう、このような着物は織れないかな、全神経を集中して作りましたので。

續:
先生との出会いは2012年4月、今でも、あの時の感動は鮮明に覚えています。
衣桁に飾ってあった一枚の絵羽着物に代表の泉二、二代目、和織店長 野田、私、 全員が吸い寄せられ、その織りにくぎ付けになりました。
透明感のある現代の色彩で「纏ってみたらどんなに素敵だろう」と思わせる織物でもありました。
その夏には先生の工房にお伺いさせていただき、初個展を2013年5月、2回目は2017年5月に開催させていただきました。

海老ケ瀬:
着ていただいている方と出会える機会がないので、お客様から直接お声をいただけること、着姿を拝見できることは本当にありがたいです。制作イメージがとても膨らみます。
男性のお客様がお召しになってトーク会にご参加下さったでしょう。
角帯は北村武資先生、もう嬉しくて言葉になりませんでした。
新鮮な驚きと装いの可能性を感じることができました。


(写真)平成29年 第46回日本伝統工芸近畿展 入選作品 穀織絵羽「光のパイプオルガン」

續:
先生、装いの可能性とありましたが、昨今、4月中旬には初夏の陽射しとなり、単衣の着用時期が早まっています。袷が6カ月、単衣・盛夏も6カ月と考えますと、暮らしの中でより細やかに装いのゆたかさを取り入れたいですね。

先月、北村武資先生にご挨拶にあがり、先生の個展催事のことも御報告させていただきました。
その際、北村先生が「海老ヶ瀬順子の穀織。ど根性やな。」と。 私、そのお言葉がとても嬉しかったです。

海老ケ瀬:
私は北村武資先生に3年教えをいただき、その時に北村哲郎著書「日本の織物」で「穀織(こめおり)」という織物に出会いました。
「これを織ってみたい」、そう北村先生にお伝えしました。それが全てのはじまりでしたから。

穀織は、文様が米粒を並べたように見えることからその名が付けられたと言われています。 神官装束や公家装束に用いられたという薄物の織物で「紗」の一種です。 一般には馴染みのない織物ですが、私自身はその薄絹の、そしてその文様の美しさからその技法を用い、植物染料で糸を染め、現代に合うように私自身の感覚で自由に織っています。

續:
弊社では2010年より「きものでオペラへ」という会を開催しております。第18回目の会で夏の装いとして着用させていただきました。

先生の絵羽着物は幻想的で心に響く音色で詩情あふれる織景色を奏でているかのよう、 私自身も魅了された一人です。
今日、着用しています「鈴の音に」、今夏で4回目の夏となります。
極上の上布とは異なる程よい張り感、かろやかな空気の層に包まれている感覚です。
代表の泉二が綿薩摩を大変好んで着ているように、脱ぎたくなくなる着心地の良さ。
かろやかで、涼しく、私は第二の皮膚と言っております! 本当に二枚目が欲しいです。

海老ケ瀬:
ありがとうございます。
「毎回、毎回、反省をしています。ただ、正直にそういう自分も受け入れて、今できる限りのことを一所懸命やろう。何としてでも織り上げるぞ!」という気持ちだけはあります。
とにかく好きでここまで続けてこられました。

續:
夏は汗をかくから着物は、、、という方も多いですが、この時期こそ、素材や織の風合い、彩りを存分に楽しんでいただけます。
海老ケ瀬順子先生の穀織の絵羽着物、正に、今、求められている織物だと思います。
是非、この機会に御覧いただけたらと思います。

6月5日と6日の店舗在廊、トーク会、作品解説、2日間どうぞよろしくお願いいたします。
先生、今日はありがとうございました。

2021年4月23日
聞き手:文化企画デザイン室  續久仁子


《開催終了》海老ケ瀬順子展 ~記憶のかたち~

日本人の五感を呼び覚ます織物。
北村武資氏の下で三年間の修業を経て、師の教えを心に「海老ケ瀬順子の穀織」を織り続けて四十年。
一本の糸から織り成される一枚の布は、第二の皮膚ともいえるほどの心地良さで貴女を包みます。
肌で感じる極上の質感、草木染めによる麗しい彩り、ぜひご覧ください。

会期:2021年6月4日(金)~6日(日)
場所:銀座もとじ和織、オンラインショップ
〈お問い合わせ〉
銀座もとじ女性のきもの 03-3538-7878

作品一覧はこちら

海老ケ瀬順子さんの作家ページはこちら

《インスタラブで生配信》ぎゃらりートーク

海老ケ瀬順子さんをお迎えし、ものづくりのお話を伺います。
※インスタライブでも同時配信

日 程 : 6月5日(土)
時 間 : 10:00~11:00
会 費 : 無料
定 員 : 15名様限定(要予約・先着順)【受付終了】
場 所 :銀座もとじ和織・和染
※状況によっては、中止もしくはインスタライブでの配信のみ

作家による作品解説

日 程 : 6月5日(土)6日(日)
時 間 : 両日14:30~15:00
会 費 : 無料
定 員 : 各日10名様限定(要予約・先着順)【受付終了】
場 所 :銀座もとじ和織・和染

【作家在廊】

6月5日(土)11:00~18:00
6月6日(日)11:00~16:00

《2017年の和織物語を公開中》
浮き立つ文様の詩情~海老ケ瀬順子の穀織(こめおり)~|和織物語

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