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人間国宝「木版摺更紗」鈴田滋人作牛首紬絵羽 | 店主のおすすめの逸品

今回の店主のおすすめの逸品は、2008年に木版摺更紗で人間国宝に認定された鈴田滋人さんの作品です。


さらりとした牛首紬の紬地に、鮮やかに映える黄色と片身がわりの大胆な色面構成が印象的な絵羽着物のご紹介です。

上前から左後身頃

 

後身頃

 

「木版摺更紗」は、江戸時代初期より一子相伝により伝承されてきた「鍋島更紗」の技法を起源とするものです。
「木版」と「型紙」といった2種類の型を併用して染色する独特の技法から生まれる格調高い作風が特徴です。
江戸時代、佐賀鍋島藩の保護のもとに「鍋島更紗」は、参勤交代の際の献上品として制作されるようになりました。しかし、明治時代に入り廃藩の後、献上品として栄えていた鍋島更紗の状況は一変し、やがて大正時代には、一旦途絶えてしまいます。

昭和34年頃、鈴田滋人さんの父、照次さんは鍋島更紗の「秘伝書」と「見本帳」に出会います。一子相伝で伝わってきたその技法について、核となる部分は記載されていませんでした。照次さんは、研究に研究を重ねて製作技法の解明を試み、復元を果たしましたが、その後、10年足らずで急逝され、当時美大生だった鈴田滋人さんが跡を継ぐこととなったのです。

鍋島更紗の「秘伝書」と「見本帳」
鍋島更紗の「秘伝書」と「見本帳」

「木版摺更紗」は、掌大ほどの小ささの木版を用いて、1枚の反物に、2000回から多い時には3000回捺印します。ひとつひとつ身をかがめて全身の力を込めながら捺印するため、途方もない集中力と体力を要します。何種類もの木版があり、木版で捺印した後は、色ごとに紋様のパーツが切り取られた型紙で、色摺りがひとつひとつ行われます。たった一度のミスも許されない、やり直しの効かない、気の遠くなるような工程を踏んで、ようやく出来上がるのが木版摺更紗なのです。

インドの伝統染色 ブロックプリント
型紙による「色摺り」

父、照次さんの想いを継いで、木版摺更紗を制作する鈴田滋人さんは、群生する自然をモチーフに、草木が奏でるリズムをデザインに落とし込んでいきます。
版を打つ部分と打たずに残す余白から空間を創造していく「版のリズム」は、身に纏うことでより美しく奏でられます。

今回ご紹介いたしました絵羽着物は、鈴田滋人さんの作品の中でも、さらに大胆に色面が色分けされ、そこに木版摺の連なりが斜めに立ち昇り、ユニークなリズムを刻んでいるのが際立ちます。

結婚式や記念パーティーなど、お呼ばれの際の華やかな装いにいかがでしょうか。ぜひ身に纏って、鈴田さんが奏でる版のリズムを感じていただけたら幸いです。

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