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  • 《継承されるその魅力を解説》「山崎家の草木染」について ~一緒に育つ色、一緒に生きていく着物。~

《継承されるその魅力を解説》「山崎家の草木染」について ~一緒に育つ色、一緒に生きていく着物。~

2020年10月23日(金)〜25日(日)に「草木染の継承展〜山崎青樹・和樹・広樹」を開催。
今回は故・山崎青樹さんのコレクションからも多数ご紹介させていただけることとなり、時を重ね深みと柔らかさが生まれた、草木染ならではの色彩をご堪能いただけるまたとない機会です。

写真左より二代目泉二啓太、山崎和樹さん、広樹さん。「作品を通し草木の生命力を感じていただきたい」
 

 

作品展を待ちながら、染織界では少し特別な存在である「山崎家の草木染」について、継承されるその魅力について解説いたします。

  • 第1章-「草木染」という言葉の生みの親
  • 第2章- 山崎青樹さんは“色に憑かれた男”
  • 第3章- 山崎家ならではの草木染料の「型染」

第1章-「草木染」という言葉の生みの親

普段何気なく使っている「草木染」という言葉。この言葉を生み出したのが、山崎和樹さんの祖父であり、青樹さんの父・山崎斌(あきら)さんです。
昭和初期、世界大恐慌のあおりを受けた故郷・長野の経済不況を救済するために、斌さんは植物染料による織物や手漉き和紙を復興する運動に取り組みます。

山崎斌さんが昭和8年に著した「日本固有草木染色譜」。添えられた染糸は今なお鮮やかで美しい。

化学染料と区別するために昭和5年に「草木染」と命名し、昭和7年には商標登録を取得。「草木染」の三文字は、明治時代に海外から流入した化学染料が席巻する中で、多くの染織家に勇気を与えたといいます。

 
 
農村で講習会を開く山崎斌さん。復興運動を「月明運動」と名付け人々へ呼びかけた。

文芸家でもあった山崎斌さんは多くの文化人の賛同も得て活動を広め、昭和5年に初の草木染の展覧会を銀座「資生堂ギャラリー」で開催した時は、陶芸家・富本憲吉、画家・竹久夢二ら錚々たる面々が発起人として名を連ねました。
また、生涯にわたり師と仰いだ島崎藤村氏は斌さんの著書の序文に寄せて、草木染は「生活と芸術と労働とが一体となる」仕事であるとウィリアム・モリスの思想との共通点について触れています。

やがて「草木染」という言葉は広辞苑にも収録され、後継者・青樹さんは商標権を放棄。草木染が日本の伝統文化として根付き継承されていくことを願い、青樹さんは同様に、自らの草木染の研究成果も惜しみなく公開し、書籍に著しています。

工房の脇には四季の草花に囲まれて、斌さんの生涯の友・若山牧水の歌碑が建てられている。斌さんは牧水の臨終にも立ち合った。

第2章-山崎青樹さんは“色に憑かれた男”

山崎和樹さんの工房で保管される染糸。色が力強い。

今回の作品展では、山崎和樹さん、広樹さんの作品とともに、青樹さんの生前のコレクションからも多数ご紹介させていただきます。そめのいも、うしのしっぺい、くらら・・・反物の証紙に手書きされた染料には、耳慣れない植物名もたくさん並んでいます。

「父は、おそらく世界で一番多く、草木染をした人間です。
生涯をかけて植物の可能性を探り続けました。」

自然と向き合い、来る日も来る日も草木染をし、青樹さんが染色の道に入られてからの約70年間で染めた色は1000色とも2000色ともいわれています。和樹さんによれば、青樹さんは自らを “色に憑かれた男” と称されていたそうです。

力強いけれど柔らかい、心落ち着く草木染の色。

青樹さんは、もともとは日本画家を志していました。子どもの頃から絵心があり12歳にして日本版画協会展に初入選、14歳で横山大観に出会い、中学校卒業後は画塾に通うなどしていましたが、東京国立博物館の正倉院展で目にした千年以上も前の染め物の、時を超えて鮮やかな色の美しさに感動し、草木染の道へ進むことを決意されたといいます。

山崎青樹作 縞着尺 「薄茜地五色ぼかし織」 

草木の生命を移しとった色は力強く、あたたかく、包容力があり、無地染めであっても無限の色彩を感じるようです。

草木染は「色が生きている」と表現されることがあります。年月を経て徐々に色が浸透し、熟成した色へと変化していく様子は「経年美化」という言葉がぴったりかもしれません。

草木染に生涯を捧げた青樹さんは、昭和52年に「群馬県指定重要無形文化財保持者」に認定され、平成17年「旭日双光章」を受賞。その5年後に逝去されました。

第3章-山崎家ならではの草木染料の「型染」

丁寧な写生から生まれる型紙。

今回の作品展で特に注目いただきたいのが「型染」です。これほどたくさんの山崎家の型染作品を一堂にご紹介できる機会はなかなかございません。型染は通常「顔料」または「化学染料」を用いて染められ、草木染料を用いた型染作品は世界的に見ても大変珍しいそうです。

戦後、父・斌さんと共に新しい染料の研究・開発に精力的に取り組みながら、昭和33年、青樹さんが30代半ばの頃からは型染めも手がけられるようになります。日本画家を志していた青樹さんならではの、写生を基調とした創作型紙が彫られ、より絵画的な作品へと挑まれていきます。

山崎青樹作 型染絵羽 草木染 「橘花譜」 

現在は、斌さん・青樹さんの思いを受け継いで、山崎和樹さんと、ご子息の広樹さんが神奈川県川崎市の緑に囲まれた工房で草木染の研究と作品制作をされています。

山崎和樹作 九寸名古屋帯 「香椿(ちゃんちん)」

「色から草木の生命力を、型染の型からは作者の思いを感じていただけたら」

和樹さんはまた、草木染を通じて、平安時代の人々が持っていたような季節を繊細に感じる心を味わってほしいとも仰います。

山崎広樹作 九寸名古屋帯 「こゆるぎ」

「植物に限らず、僕の場合は人工物も自然の一部ととらえているんです。」

広樹さんにデザインの着想について伺うと、このような答えが返ってきました。四季の草花、光、風、暮らしの中で見つけた小さな美がすべて、創作の源になっています。

23日からの開催を前に、青樹さん、和樹さん、広樹さんの作品はオンラインショップでもご紹介をはじめました。
そして、今週日曜日18日の夜には、山崎和樹さんの工房からインスタライブで「生中継」いたします!ぜひご期待ください。

 


【開催終了】草木染の継承展 山崎青樹・和樹・広樹

会期:2020年10月23日(金)~25日(日)
場所:銀座もとじ和織、男のきもの、オンラインショップ
作家在廊:山崎和樹氏・広樹氏 全日11:00~18:00

山崎青樹氏は父・斌氏から受け継いだ草木染の研究開発を進めながら、自らも型染、蝋染、絞り染、墨書きなど多様な技を用いる染色工芸家であり、更には、日本画家としても活躍されました。
草木染がもたらす心の豊かさ、ものを創ることにより生まれるしなやかで美しい思想は、青樹氏の長男・和樹氏からご子息の広樹氏へと脈々と受け継がれています。
自然と共生し、時代と向き合いながら暮らしの中の草木染を提唱し続ける山崎家。
親子三代に渡り継承してきた「草木染」の世界をぜひ、ご覧ください。

【開催終了】インスタグラム ライブ配信

川崎市にある「草木工房」から生中継にて、ものづくりのお話を配信いたします。
配信日時:10月18日(日) 20:00~20:30

【開催終了】ぎゃらりートーク《インスタライブで同時配信》

山崎和樹氏と広樹氏をお招きし、草木染やものづくりのお話を伺います。
※インスタライブでも同時配信。状況によっては、無観客でのライブ配信のみとなる場合もございます

 

日 程 : 10月24日(土)【開催終了】
時 間 : 10:00〜10:45
場 所 : 銀座もとじ 和織
会 費 : 無料
定 員 : 15名様限定(要予約・先着順)
お問い合わせ:
03-3538-7878(銀座もとじ和織)
03-5524-7472(銀座もとじ 男のきもの)
メールでのお問い合わせ:
info@motoji.co.jp

※23(金)~25日(日)開催の「草木染ワークショップ」はお申込み受付を終了いたしました。

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