染め織り人・山岸幸一~紅花の精・大地の精を魂で染める~|和織物語

染め織り人・山岸幸一~紅花の精・大地の精を魂で染める~|和織物語

自分に似合う、顔色を際立たせてくれる色をご存知ですか?
ふわりと羽織ると顔映りが良く、体になじみ、優しい気持ちになる紬。
山岸幸一さんの作る着物や帯は、その人本来のもつ力や美しさを内側から引き出してくれる、不思議な力があります。

山岸幸一さん 作品
山岸さんは、山形・米沢の赤崩に工房を構える草木染織作家です。自ら蚕や染料となる植物を育て、真綿から糸を紡ぎ、紅花をはじめ50種類もの草木で色を染め、手機にかける。 自然豊かな山間の工房での創作活動ですが、ほとんどを一人で手がけているため、一日中休む暇も無く作業している様子に驚かされます。「自然に甘えて流されてしまってはだめだ。自然のリズムに自分の感覚を合わせながら、世の中の動きを見据え、対比するからこそ、ものづくりができる」と言います。

“人が身にまとうための衣”として着心地が良く、着ている人が引き立つような物を作りたい、という強い思いから行き着いたものづくり。その厳しい姿勢と温かい思いから、次々に生み出される作品は、すべての工程を終えて反物となるまでに4年から5年もの歳月がかかります。植物染をした糸は、一色の中にも光によってさまざまな色が見え、どの色にも、“色の精(魂)”が宿っています。その色の精を最大限に引き出す。山岸さんの作る一反の長方形の世界には、たくさんの美しい自然の色があふれ、それぞれが響きあい、見事なハーモニーを生み出しています。

生繭から真綿を掛け、一日も休むことなく紡がれる糸。糸巻き機を使い、ふわりと押さえるように紡ぐことで光り輝く繊細な糸が生まれます。その糸をさまざまな植物で染め、数年寝かせた後、機に掛け、織っていきます。「空気が入っている糸だから、こうして筬(おさ)でしっかり打ち込んでも、反物になったときに軽く、着物や帯にしたときに、人の体に沿うような自在さがある」という言葉通り、真綿の風合いをそのまま生かした糸の輝きは、淡い光の中でも際立つ存在感となります。
山岸幸一さん 作品

糸を生かす。素材を生かす。そのために、糸や色と真摯に向き合い、対話する。染めを毎年繰り返した糸や、出来上がったばかりの反物は、山岸さんが“今だ”と思える時を迎えるまで、眠りにつきます。生きて、呼吸している糸が、棚や引き出しのなかでより柔らかく、その色本来の美しさを発揮するまで待つのです。

山岸幸一さん 作品
反物が着物になって、まとった人との『気』が合い、本当にその人らしく、内側から美しく輝いた時、山岸さんの作品は完成します。

このたびは、『寒染(かんぞめ)』と名づけられた紅花染め、日本で初めて黄繭(おうけん)の色素で染められた紬糸を使った『春来夢(しゅんらいむ)』の着尺や帯の他、強撚糸を使って織られる単衣向きの『うすはた』を、初めてご紹介いたします。

“羽根のように軽くて着ていても涼しい”風合いにこだわり、タテ糸ヨコ糸ともに強撚糸を使い真綿糸を織り込んで作る、山岸さんオリジナルの『うすはた』が生まれました。高い技術と手間をかけた、渾身の逸品です。

素材と色にこだわり、自然と向合う山岸幸一さんのものづくりの世界をぜひご覧下さい。

山岸さんの工房案内図

山岸さんの工房案内図