自分に似合う、顔色を際立たせてくれる色をご存知ですか?
ふわりと羽織ると顔映りが良く、体になじみ、優しい気持ちになる紬。
山岸幸一さんの作る着物や帯は、その人本来のもつ力や美しさを内側から引き出してくれる、不思議な力があります。

“人が身にまとうための衣”として着心地が良く、着ている人が引き立つような物を作りたい、という強い思いから行き着いたものづくり。その厳しい姿勢と温かい思いから、次々に生み出される作品は、すべての工程を終えて反物となるまでに4年から5年もの歳月がかかります。植物染をした糸は、一色の中にも光によってさまざまな色が見え、どの色にも、“色の精(魂)”が宿っています。その色の精を最大限に引き出す。山岸さんの作る一反の長方形の世界には、たくさんの美しい自然の色があふれ、それぞれが響きあい、見事なハーモニーを生み出しています。

糸を生かす。素材を生かす。そのために、糸や色と真摯に向き合い、対話する。染めを毎年繰り返した糸や、出来上がったばかりの反物は、山岸さんが“今だ”と思える時を迎えるまで、眠りにつきます。生きて、呼吸している糸が、棚や引き出しのなかでより柔らかく、その色本来の美しさを発揮するまで待つのです。

このたびは、『寒染(かんぞめ)』と名づけられた紅花染め、日本で初めて黄繭(おうけん)の色素で染められた紬糸を使った『春来夢(しゅんらいむ)』の着尺や帯の他、強撚糸を使って織られる単衣向きの『うすはた』を、初めてご紹介いたします。
“羽根のように軽くて着ていても涼しい”風合いにこだわり、タテ糸ヨコ糸ともに強撚糸を使い真綿糸を織り込んで作る、山岸さんオリジナルの『うすはた』が生まれました。高い技術と手間をかけた、渾身の逸品です。
素材と色にこだわり、自然と向合う山岸幸一さんのものづくりの世界をぜひご覧下さい。