岩井香楠子型絵染 – 春爛漫2005展|和織物語

岩井香楠子型絵染 - 春爛漫!2005展|和織物語

岩井香楠子の型絵染展。
2年ぶりに開催される「岩井香楠子さんの型絵染」展(2月19日~27日開催)
前回の展示会以後、海外へ何度も足を運び、美術館を巡り、各地の風景をスケッチし、新たな刺激を受け、一方で、ご本人の作家活動の基礎となった紅型を人間国宝の玉那覇有公氏に師事して再度勉強し直し、今回の展示会への作品作りに向かいました。

今回の題は「春爛漫 2005年」

色々とつらく苦しいことの有った時ほど春が待ち遠しいものです。
2004年は全国各地で自然災害が沢山ありました。それでも、春になれば花が咲き、鳥が鳴き、蝶が舞う。 何があろうとこの自然の営みは続き私達を励ましてくれます。
日本のシンボルである美しい桜はもとより道端に咲くタンポポ、菜の花、スミレ、カラスのエンドウなどなど。花々がそれぞれに生きている喜びを身体一杯に溢れさせるこの季節に、「花々の気を貰った着物を是非身にまとって元気に成って貰いたい」との思いで今回の企画が完成しました。
花々が活き活きと生命を光り輝かせるこの春。
その浮き立つような気持ちが随所に感じられ、見ているだけで「ウキウキ・ワクワク」と幸せな気分に成れる新しい作品が一堂に揃いました。
「たんぽぽ」に始まり「パンジー」「ミモザ」・・・・・
特に色使いでは「ミモザイエロー」「ペパーミントグリーン」「ルビン(冷たい感じの紫系のピンク)」などを使い「自立した大人の女性の春色」を意識しました。
「花々が持つ生命力と華やかさ」に、岩井さんが作品づくりに注ぎ込む「情熱」が共鳴し合って作り出される新たな世界。
和染のドアを開けていただくと一瞬のうちに、「春爛漫の世界」が目の前に広がります。一足早い春を目と肌で感じに是非ご来店ください。

岩井香楠子さんの歩み

さて、岩井さんの歩みを紐解いて見ましょう。
父親が彫刻家、母親はその影響もあって「漆塗り」を得意とする芸術一家でしたので、岩井さんにも自然と子供の頃から絵心が芽生えました。長じるに従ってその才能を認められ、日本画を小倉遊亀女史に師事します。将来は東京芸大へ進学か?と周りが思っていた矢先、なぜか岩井さんは「化学や数学が出来る人間になりたい」と方向転換をします。そして横浜国立大学の生物学科に入学。
岩井香楠子さん 作品

しかし・・・やはり「蛙の子は蛙」。実験やら研究やらで難しい記号を並べているよりも、顕微鏡で覗いた世界を写生するのが得意。
結局、4年間大学に通い卒業はしたものの、再度東京芸術大学美術学部の日本画専攻に入学し卒業しました。

着物との出会い

芸大卒業後、旦那様の仕事で米国へ赴任。一ドル360円の時代に様々な体験をしました。その折に日本の着物の良さを認識します。 「身にまとう一枚の布がその女性の全人格を表してしまうと気付いたのは30歳の時、米国で過ごした経験からでした。それまで殆ど着物を着たことが無かった私も着物を纏うことで世界各国の人々が集う中に居ても臆することなく立ち居振舞える不思議さを感じました。日本女性を一番美しく見せる着物、その美しさを再認識しました。」 そして帰国後、着物に関わる世界へと足を踏み入れます

型絵染との出会い

父親が彫刻の仕事をしていましたから、子供の頃から小刀が上手に使える少女で版画が得意でした。 着物のデザインの仕事をしているうちに、縁あって紅型染の人間国宝、鎌倉芳太郎先生(当時79歳)と巡り逢いました。 (鎌倉先生は戦時下に東京芸大の地下防空壕に紅型の型紙を残し戦禍を逃れさせ、戦後は奥様と二人で復興に力を注ぎ、 83歳でお亡くなりになられるまでの23年間紅型の復興に力を注がれた方です。) 鎌倉先生の下で4年間、紅型を学び、その折に「日本画を学んで絵が描けるのだから、 紅型だけに固執せず型絵染をした方が良い」と薦めていただき現在の型絵染の基礎が出来ました。

自分で刃は作る

岩井さんが鎌倉先生の下で勉強して以来ずっと守っていること。 それは「型紙を彫る刃を自分で作ること」です。
「刃が研げないと思い通りの型は決して彫れない」と実体験からも痛感し、 岩井さんの工房では「刃が作れて初めて細かい型を彫ることが出来る」と指導し、実践しています。

岩井さんの作品の特徴は

1、作品デザインは必ず写生から始める。

遊んでいる子供の様子を写生したり、庭の隅に咲いている花々を写生したり。
そして「自然のものを写生してそれを活かしながらその中に敢えてパターン化したものを入れる」とおっしゃいます。 理由は「その方が着た人が浮き立つ着物が作れるから」だそうです。

2、何度も染を繰り返す。

絶対に妥協はせず、手を抜かず、自分の納得のいくまで染を繰り返します。
そしてたとえ同じ型を使っても、同じものは決して作らない。色の挿し方を変え、地色を変えと工夫を繰り返すのです。 それゆえ、岩井さんの作品はいつも「初対面」。どの作品を見ても驚きと輝きがあります。

3、見せるだけ、飾るだけの着物は作らない。

『着物は人間がまとうものであって、着た人をとにかく“美しく”また“可愛らしく”するものでなくてはならない』 と岩井さんは考えています。 今回の作品は、出来ることなら『着物はとてもとても・・』と敬遠していた方たちにも 『この着物なら着てみたいな~』と手を出していただけるようなものを作ろうと心掛けて製作しています。
また、『仕事に生きている女性(確固たる自分と言うものを持っている人)』や 『今の自分を変えたいと願っている人』にも何かを感じて、そして身に着けてみたくなるような、 様々な工夫が凝らされています。(こちらは見て感じていただいてのお楽しみです)

今回の展示会で力を入れていること

今回の作品は特に、「仕事にも人生にも頑張っている女性にひとときのやすらぎを感じながら、 またひとつ活き活きキラキラして欲しい」と言う願いも込めて作られています。
また、展示した作品をたたき台にしてお一人お一人のお客様と岩井さんが話し合いながら、 その人にあった帯や着物を作るコーナーも設けています。(色の挿し方ひとつでも変えて作れます)
貴女だけのオンリーワンを作るチャンスでもありますので是非ご活用ください。

「現代のエスプリ」を感じていただける着物や帯が、一つ一つ心を込めて今日も作り出されつつあります。
是非お早めに春を感じにいらっしゃいませんか