小橋健太さん|泉二の一口対談

第4回:小橋 健太さん (プロレスラー)

今回のお客様は、プロレス界のキング・オブ・キング、小橋健太さん。
勝負をかけたリングの上の厳しい表情とはうってかわって、素顔の小橋さんは笑顔が素敵なジェントルマンでした。

<小橋 健太氏プロフィール>

京都府福知山市出身。 PRO-WRESTLING NOAH所属。
中学、高校時代は柔道選手として国体などで活躍。1988年プロレス界にデビュー。
1993年12月、最強タッグ決定リーグ戦の決勝で世界タッグ王座を獲得。
1996年7月3冠ヘビー級王座を獲得。プロレス界で最も権威ある東京スポーツ制定のプロレス大賞で ベストバウト、MVPを何度も獲得。現在、NOAH GHCヘビー級王者。8度の防衛に成功している。
「崇高なる王者」として名実共にプロレス界を背負って立つ。

プロレスラー初めて着物を着る

小橋:

この間作っていただいたこの着物、今日初めて着てみたんですけれどかっこいいですね。

泉二:

良くお似合いになってますよ。さすがに身体が大きくていらっしゃるから見栄えがしますね。
今回のこのお着物は小橋さんからプロレス大賞の授賞式にお召しに成りたいと伺っていたので、羽二重という、上質の白生地を誂え染めしたんですよ。小橋さんは、上背もあるし、プロレスで鍛えていらっしゃるから肩幅も広いし、胸板も厚いでしょう。

小橋 健太さんと店主もとじ

だから着物も並巾だと間に合わないので広巾(1尺2寸)のものをご用意しました。それに晴れの舞台でお召しに成ると伺っていたので、生地は着易くて正装感のある、上質の「白羽二重」。染めは、シックでシャープな、着映えのする明るい銀鼠色にね・・・

小橋:

いやあ~、こんなに綺麗な色に仕上がるとは思いもよりませんでした。着物っていいですね。あらためて良さを実感しました。

泉二:

色がとっても上品に仕上がっているので本当にお似合いです。小橋さんが「色にこだわりたい」って仰っていたから、私なりにいろいろと考えましてね。凝った甲斐がありました。

小橋:

そうですね。似合うって言われるととっても嬉しいですね。出身が京都ですから、何だか血が騒ぎますよ。(笑)

泉二:

私がそうなんですけど、着物に袖を通すと今までと違った自分になれる気がするんですよ。
世界観が変わるって言うのかな。だから、小橋さんにもぜひこれを機会にどんどん着物を着ていただきたいですね。

小橋:

実は、私の京都での同級生が「授賞式には着物をプレゼントするよ」って言ってくれましてね。
で、まずは京都で探そうかって言うことになったのですが、彼曰く「『男の着物』なら東京、銀座のもとじさんが品揃えが凝っていて豊富だし、色々と相談にのってくれるから良いよ」って言い出したんですよ。で、こちらに伺うことになったんです。

泉二:

それはありがたいお話ですね。京都から東京まで何十軒、いや何百軒の呉服屋さんがあると思うのですが、そこを通り越して私どもの「男のきもの」店までいらしてくださった、本当に感謝です。

小橋:

最初は着物に袴と羽織って決めていたのですが、泉二さんの姿をみて「袖無し羽織」ですか、これが格好良く見えましてね。あわせて作って頂きまして。

泉二:

墨暈しの洒落た雰囲気の袖無羽織になりましたね。こちらは、授賞式などの正式な席ではお召しになれませんが、普段ちょっとお洒落に装いたいときに、重宝しますよ。

小橋:

そうですね。肩の辺りがもたつかなくて着易いですね。それにこの銀鼠色の着物ともとてもよく合いますし、また違った雰囲気が楽しめますね。いやぁ、着物って楽しいですね。気に入りました。

泉二:

そういって頂けると嬉しいです。

柔道からプロレスへ

泉二:

ところで、お聞きしたところ、小橋さんは柔道で京都の国体強化選手だったそうですね。

小橋:

そうなんです。最初は国体の柔道重量級の強化選手でした。
その後プロレスに入ったんですよ。その後、2000年に運悪く両膝を怪我してしまいまして、結局手術をする羽目になったんですね。結果的に1年間休みました。その後必死でリハビリして治して、復帰戦に出たら、また怪我をしてしまってね。半年間休みました。去年は大分良くなって、調子も出て来た感じがしてきて、「何か賞を貰うことになったら、授賞式には着物を着て行く」と思っていたんです。友人にも薦められていましたし。(笑)

泉二:

大変でしたね。さぞかし心身ともにきつい状況だったのでしょうね。でも、こうして復調されて、小橋さんのお着物をお召しになっている姿を拝見していますと、嬉しいですね。小橋さんのように、自由な発想で着物を着る機会を広げてくれる人がもっといらっしゃると着物人口も増えてくれるんじゃないかと思うんですよ。しかし、とてもよくお似合いですよね。 普段から着なれていらっしゃるように見えますよ。

小橋:

そうですか! ! それは嬉しい! !
実を言うと着物ってこんなに良いものだとは思わなかったんですよね。怪我の功名かな。怪我して休まなかったら、着物に出会うこともなかったかも知れない。

泉二:

私は出身が奄美大島だったのに着物にはなかなか縁が無くてね。
学生時代、陸上の選手だったのもですから、着物より体操着でしょ。最初は本当に着物がとっつき難くてね。でも、着物っていうのは、袖を通したときに洋服の時とは違う自分が出て来るんですよ。背筋がピッシっと伸びて気持ちが良いですよね。

小橋:

本当に着物を着ると一本筋が通ったようなぴしっとした感じになりますよね。普段の自分とは違った感じで気持ちが良い。(笑)

いつかは着物で海外のリングに!

泉二:

海外に行ったときなど、私が実際体験した事なのですが、着物を着ているとやっぱり格好が良いし、お店の対応もランクアップするんですよね。
小橋さんもリングに上がるときに着物で登場というのはどうですか?

小橋:

それは面白いですね! アメリカでの興行の時には、リングに上がるまで着物で登場するというのも良いかもしれませんね。リングに上がって、着物をパーッと脱いでプロレスを始めたら、目立ちますよね。ラストサムライじゃないけど、観客にも「カッコイイ」と思ってもらえるかもしれませんね。着物は脱ぐ姿も絵になりますからね。

泉二:

是非、挑戦してみて下さい。プロレスファンも喜ぶと思いますよ。

賞をとったら着物を着て授賞式に!

小橋:

折角着物を着るんだったら格好良く素敵に着たいですね。特にプロレスの世界では目立った者が勝ちですからね(笑)。

泉二:

プロレス界の先陣を切って、是非お召しになって下さいよ。
小橋さんは初めてとは思えないほど着物姿が似合っていて決まっていますよ。日本人の身体には、やはり日本人のDNAが備わっているから今まで着物を着たことがなくても自然に着こなせるんですよね。

小橋:

今思えばもっと前から着物を着れば良かったと思いますよ。 過去に、授賞式に紋付き、羽織、袴を着た人は一人いたんですよ。で、よくよく聞いてみたら、レンタルしたらしいんです。 まだ自前の着物を着て、という のは前例がないんですね。だから、今度なにか賞を貰うことになったら、是非、もとじさんで誂えてもらったこの自分の着物を着たい。

泉二:

ありがとうございます。そう言っていただけると本当に嬉しいですよ。

小橋:

実は、今回、「MVP(最高殊勲選手)以外の受賞だったら着物は着ない! 」と宣言してしまったんですよ。そうしたら実際に連絡があったのはMVPではなくてベスト・バウト ※ だったんです。主催者からは「予定通り、是非着物を着て下さい」と言われたんですが、「MVPだったら着ます」と言った手前、意地を通してしまいました。
(※ベストバウト = 「年間最高試合」。 第30回プロレス大賞(2003年度)では、ベストバウト、及び殊勲賞授賞。惜しくもMVPを逃した。)

泉二:

それは残念。是非拝見したかったですね。でも小橋さんのその意地を張り通す所が次のバネに繋がるんでしょうね。

小橋:

そうなのかもしれません。(笑)

一番大切なのは、ファンの皆さん

泉二:

ところで、小橋さんがプロレスラーとして、一番大切にしていることって何ですか。

小橋:

そうですね。やっぱり支えてくれているファンの方たちですね。
プロレスは、観てくれるお客さんがいて初めて成り立つわけですから、やはり、ファンの方が一番大切です。だからどんなに疲れていても、サインや写真撮影は必ず受けますし、どうしたらファンの皆さんに楽しんでもらえるか、をいつも考えながらやっているつもりです。

泉二:

さすがですね。小橋さんのそうした心遣いが、ファンの方にも伝わるんでしょうね。レスラーとしての強さだけではなく、小橋さんのそうした人となりが、人気の秘密なんですね。
お客様を大切に思う心、どうしたら喜んで頂けるか、満足して頂けるかを常に考え、心ある対応をしていくこと。実は、これは私ども「銀座もとじ」が最も大切にしていることでもあるんですよ。

小橋:

僕は常に稲穂のようにありたい、と思っているんですよ。チャンピオンであるからこそ、腰は低くあるべきだと、思うんです。「稲穂は実る程、頭を垂れる」というようにね。 麦は実る程、頭を上げてしまいますけれど。偉くなると、麦になってしまう人も見受けられますよね。 残念ですね。

泉二:

本当ですね。仰る通り、稲穂のように常に謙虚な気持ちをもって人に相対したいですね。

着物のおかげで故郷京都が身近に

泉二:

ところで小橋さん、ご出身は京都でしたよね。

小橋:

そうなんです。今もお袋が太秦の近くに住んでいるんですけどね。 今までは京都といってもなんとなく縁遠かったんですが、こうして着物に出会うことによって、この歳になって京都に近づいたって言う感じがして嬉しいですね。

泉二:

太秦といえば、映画村がありますよね。

小橋:

そうなんです。僕にとってスターといえば「杉 良太郎」とか、「萬屋錦之助」だったんですね。よく映画や、テレビを見てましたよ。

泉二:

故郷を思う心っていいですよね。私も故郷の奄美大島は忘れた事がないですよ。話は変わりますが、小橋さん、お忙しいようですがお休みはあるんですか?

小橋:

えぇ。シリーズとシリーズの間が休みなんですよ。
3月は6日と13日に試合がありましたから、4月は休みとなります。で、その間に、取材を受けたりしてプロレスと違う仕事をしています。シリーズに入ると体力づくり、身体づくりで取材などは一切受け付けられないんです。

泉二:

やっぱり勝負の世界は厳しいですからね。己との戦いですよね。
今後の更なるご活躍、陰ながら応援しております。そして、着物もとてもお似合いになるのでお時間が出来たらまた是非お店にも遊びにいらしてください。今日は本当に貴重なお時間を頂戴致しましてありがとうございました。

[対談日:2004/03/17 筆:瀧]