染色家・荒木節子さん|泉二の一口対談

第16回:荒木 節子さん (染色家)

<荒木 節子 プロフィール>

立教大学文学部卒。学生時代からカメラマンの中村正也氏のアシスタントとして13年間活躍。その後、着物と出会い改めて、安藤宏子先生に師事。その後大塚テキスタイルに3年間通う。シルクスクリーンの技法を駆使して、5年前に作家としてデビュー。7回個展を開催。帯1本をタブローのように考えて全体の印象を大事にしその作風は個性的でファンが多い。

今回の催事は

泉二:

荒木さん、こんにちは。今回、初めて私どもの店舗で個展を開いて頂くわけですが、今のお気持ちは?

荒木 節子さん

荒木:

すっごく緊張しています。自分の作品が着物好きの方々にどれほど受け入れて貰えるのか? とってもどきどきです。今までも勿論着物の世界でものづくりをしていましたが、どちらかと言うとタブローのように考えて全体の印象を大事にして作ってきましたし、帯の形で最初から見せると言うよりも全体の印象から帯の形に切り取った部分での個性を見ていただいていましたので、今回のように『帯の形』から『全体の印象へ』と言うのは、初の試みです。なので、ちょっと不安があります。でもこれを第一歩として自分の世界を銀座もとじさんで作って行きたいので、成功させたい。そんな思いで今一杯です。

泉二:

そうですか。そんなに緊張せずにいつもの荒木さんの世界を作ってくださいよ。

荒木:

ありがとうございます。そう思うんですけどやっぱり肩に力が入りますよ。良い物を作りたいし、お客様にも泉二さんにも喜んでもらいたい。きっと個展催事の前は眠れないと思います。

泉二:

ありがとうございます。そう言っていただくと嬉しいですし、こっちもとても緊張しますよ。スタッフひとりひとりが荒木さんの思いをちゃんと理解してお客様に伝えられるか? 既に先日、勉強会をしていただきましたが、果たして大丈夫かな? (笑)

荒木:

みなさん熱心に聞いてくださって、こっちも『頑張らなくちゃ』って改めて思いました。

色を使う

泉二:

荒木さんの作品は色使いがとっても個性的で、絵画をみているようですよね。全体は抽象的に見えるんですがちゃんとテーマがあって。帯で切り取るとその大胆さがすごく紬に合う。

荒木 節子さん対談

荒木:

そうですか? ! 嬉しいです。自分自身「色を使いこなしたい」って思って今まで来ましたので、そう言う感想を着物のプロに言っていただくと自信が沸きます。

今年は春に「白」をテーマに作品作りをしたんですけど、私の中でもちゃんとテーマがあって「新雪」「初冬の雪景色」「真冬の雪景色」「春の雪景色」とそれぞれに具体性を持たせいているんですね。抽象的に見られがちなのですが、私の中では具体的なテーマがあるんです。

泉二:

いつも個展を覗かせて頂くとその作品の迫力に圧倒されそうになるんですよ。荒木さんはディスプレイも素晴らしい。感性が良いんでしょうね。

荒木:

うわああ~。恥ずかしい。でもそう言っていただくと嬉しいです。
着物に入ったきっかけは?

泉二:

ところで荒木さんはどういうきっかけで着物作りに入られたんですか?

荒木:

うふふ・・・凄くきっかけはたわいないことなんですけどね。私はずーっと陰で支えるアシスタント業務が自分にあっていると思ってきたんです。だから写真家のアシスタントや陶芸家である主人のアシスタントをずっとしてきました。でもあるとき自分の世界が欲しくなった。それは最初「書道」の世界だったんです。そのうち着物を着る機会が出来て着物が好きになった。で、最初は古着屋で着物を買って、呉服屋さんでは眺めるだけ。そんな生活を続けていました。主人の関係で、お茶や邦楽の世界にいる方ともお近づきになって。そんなときに知人達から「無地の着物の手軽な値段のいいものが無いねえ」って言う話を聞いて、それなら親戚の丹後縮緬を取り寄せてみようかって言う話しになった。数反買っては知人に分けてなんてしているうちに、ある日ちょっとした手違いで、帯揚げの無地が10枚も手元に届いてしまった(笑)。
「これは使い道に困ったぞ! 返す訳には行かないし」って途方に暮れて。そうなったら試しに「“家庭で出来る染”を勉強して10枚を好きな色に染めてみちゃえ! 」って、絞染めとか色々チャレンジしてみちゃったんです。そしたら結構綺麗に出来て、1人で10枚も持っていても仕方ないし、「よおーし、お友達にあげて見よう」って差し上げたら、本当に喜んで頂いて。

泉二:

ええ・・そう言うきっかけだったのですか?

荒木:

そうなんです。

荒木 節子さん対談

帯揚げが始まりで、やってみたら染色って面白くて、その後はどんどんのめり込んで丹後縮緬のB反を買い込んで切って染めてってやっていました。そのうちに、家庭の染ではつまらなくなって、NHKの講座をしていた安藤宏子先生に師事して。その後、大塚テキスタイルの夜間に通って「シルクスクリーン」を学んだんですよ。

泉二:

凄いですね。勉強を始めたら凄い勢いで修得していったんですね。

荒木:

そうですね。のめり込んだらあっという間でした。一生懸命やっているうちに月日が過ぎて気が付いたらこれが自分の道に成っていました。

泉二:

僕が荒木さんを知ったのは、朝日新聞の記事で「遅咲きの作家、今が旬」みたいなお話で凄く興味が沸いたんですね。そしたらタイミングよく知り合いが荒木さんと知り合いで、それでワコールでなさっていた個展に伺うことが出来てねえ。きっかけって不思議ですね。

荒木:

本当にそう思います。私も帯揚げが無かったらこの道に進んでいなかったかもしれませんもの。

これからのものづくりは

泉二:

これからの荒木さんのものづくりはどんな方向へ進もうと考えていますか?

荒木:

そうですねえ。まだまだ自分の道は模索中ですが、「銀座もとじに行けば荒木の新作に逢える」って言われるようなものづくりがしたいです。

泉二:

ありがとうございます。そう言うのはうちも願ったり叶ったりですよ。やっぱりこれからのものづくりは「オンリーワン」だと思うんですね。荒木さんみたいに一反一反手作りしていると心も手も込んでいて凄く魅力がある。「銀座もとじ」も「これはもとじにしかない」って言う商品を置きたいですし、それがお客様の希望でもあるので、何処にでもある商品と言うのはなるべく扱いたくないんです。荒木さんの進もうとしている世界は私が求めている世界でも有るから、本当に嬉しいです。
一緒に頑張りましょうよ。

荒木:

ありがとうございます。ものづくりはやっぱり自己満足に陥りがちなんですよ。ですからお客様の厳しい眼があってこそ自分の力も磨かれると思いますし、作った求めてくださる人が居るというのは自分自身のやりがいにもなりますから、励みになって嬉しいですね。

泉二:

是非今回の個展は成功させたいですね。

荒木:

はい。私自身も精一杯頑張って作品作りをします。またお店に1週間居させていただいてお客様から色々学びたいと思っていますので是非宜しくお願いします。

泉二:

こちらこそ、宜しくお願いします。
荒木さんの個性が光り輝く個展にしていきたいと思っていますから是非お力を貸してくださいね。

[対談日:2005/06/25 筆:荒井博子]