デザイナー・植田いつ子さん|泉二の一口対談

第22回:デザイナー 植田いつ子(うえだいつこ)さん

<植田 いつ子さん プロフィール>

オートクチュールを中心に、プレタポルテ、ジュエリーのデザイン、舞台衣装と幅広い活躍を続けている。毎年、「植田いつ子コレクション」を販売し、格調高く、シンプルなデザインと色調による優雅な服作りには定評がある。1976年から皇太子妃殿下(現皇后陛下)のデザイナーを勤め現在に至る。

植田いつ子さん
植田いつ子さん

服作りに祈りをこめて

泉二:

先生お久しぶりです。いつお目にかかっても先生の凛としたお姿、本当に素敵ですね。

植田:

ありがとうございます。泉ニさんこそ、多忙な毎日をお過ごしなのにいつも颯爽と着物を着こなされておられ感心しております。

泉二:

先生と最初にお仕事をさせて頂いたのは、和織が誕生した時ですからもう6年になりますね。「(きものの)紬地で洋服を作りたいので」 とお話を聞いた時は大変驚きました。

植田:

泉二さんの(きものの)素材へのこだわりは並々なりませんもの。泉ニさんは、産地をご自身の足で訪ね歩いていらっしゃる。そこには産地のみなさんとの出会いがあるでしょう。私の泉ニさんへの信頼はそこにあります。

泉二:

とても嬉しいです。ありがとうございます。先生の望まれる反物の素材、用途などのお話を伺い、ともに探していく中で、私は「装う」という考え方を教えてもらいました。

植田:

服は人間が着るものですから、心を忘れてしまった服は美しいとはいえません。日本人特有の繊細で優しい体つきやしぐさ、その心を読み取り、それを形や色に託して服作りをするデザイナーでありたいといつも思っております。日本各地で生まれた反物には日本の心が宿っていると思います。だからこそ、その反物の表情を読み取り、その声に耳をかたむけ、和の心を秘めた服作りに励んで参りました。

日本人への衣への思い

泉二:

先生は常に「国際的な立場からみた日本人」を意識され、それを形や色に託してこられてきましたね

植田:

昔から日本人は自然ととともに生き、情緒や余情を大切にする豊かな心を受け継いできました。しかしながら、それも急速な時代の流れによって蝕まれてきました。私は、その失われつつある日本の心、魂の美しさを呼び戻したいと思っています。

友禅・すすき
友禅・すすき

泉二:

日本人だからこそ感じる情緒・・・。心に響きますね。

植田:

でも最近は、着物を着るかたが増えてきたように思いますね。

泉二:

私も銀座という土地で、時代の流れを肌に感じながらきもの店を営ませてもらっておりますので、ここ最近、「生活の中のゆとり」を大切にされていらっしゃるお客様が多くなったきたように思います。そのひとつが「日本人としてきものを身に纏う」ということに表れてきたように感じています。

植田:

それは、本当に素晴らしいことですね。私も最近、洋服と着物がずいぶん歩みよってきたような気が致します。こんな時代だからこそ、日本人のやわらな感情を一人一人が育み、平衡感覚を大切にしていきたいものですね。

感動する心、そして志

泉二:

先生は、日々多忙にお過ごしですね。先生から生み出される品格あふれるデザインや色の根源などはどのように吸収されているのでしょうか?

植田:

私は忙しい時ほど静謐な時間を大切にするよう心掛けております。コンサートや美術館に出かけるのもそのひとつです。コンサートの美しい音色に心を癒され、エネルギーみなぎる芸術作品の美を肌で感じる。美しい作品との出会いはもちろんですが、素晴らしい人との出会いに心がふるえる時もあります。私にとって日常生活で出会う全てがとても大切な刺激です。

泉二:

先生はデザイナーは黒衣の存在と仰いますが。

植田:

はい。私はいつも着る人のことを考えて、服作りをしております。それは、自分がもっとも美しいと思うものを真摯に求める気持ちのあらわれかもしれません。衣は人間を通して作られ、人間を通して着こなされる。だから、人に対する愛情が大切なのです。

和の心・和の心を纏う

朽葉色地蔦刺繍
朽葉色地蔦刺繍

泉二:

今回、銀座もとじで先生のきものをご紹介する貴重な機会を頂きました。ありがとうございます。展示会を前に、ご心境など聞かせて頂けますか?

植田:

私は服作りを通して、常に日本人であることを自覚し、人の姿と心をひたすら訪ねてきました。素材に反物を使用して40年が経ちますが、きものに宿るその深い精神性と合理性の限りない畏れ、そして誇りを感じておりましたので、今日(こんにち)まで手がけることができませんでした。

泉二:

そこまでの先生のご心境、感慨深いです。同時に、先生がデザインされた今回の作品を拝見し、気品の中にもその斬新さに感動いたしました。まさに今の時代の日本人女性が求めているデザインであり、繊細な配色ですね。

植田:

現代女性の衣装として、きものは微妙に様式を変える時がきているようにも思います。継承された良き伝統は、尊敬し大切に生かし、その上で現代という社会背景になじむように時代感覚反映させることで、着る人を際立たせることができるのではないでしょうか。

泉二:

私もその思いに共鳴致します。街並みに合うきもの姿は本当に素敵な景色となりますね。

竹笹金刺繍
竹笹金刺繍

植田:

女性のきもの姿は艶やかで優雅なもの。その姿を現代により一層輝かせるために知恵と愛情を織り込むお手伝いをさせて頂きたいと思います。

泉二:

そんな先生の心が宿ったきもの、私も多くの人にご覧頂きたいと思っております。

植田:

私のデザインしたきものに生きた美しさを宿してくれるのは着る方です。私もその出会いが生まれるのを楽しみにしております。

泉二:

まだまだお話を尽きませんが、この続きは、11月11日の「もとじ倶楽部」でお伺いしたいと思います。今回は先生の30年来のご親友でもある、詩人・高橋睦郎氏にも聞き手としてご参加頂けることになり本当にうれしく思っています。どうぞよろしくお願い致します。

ぼかし刺繍
ぼかし刺繍

植田:

こちらこそよろしくお願い致します。その日はお客様にお会いしたいので、ぎゃらりー泉にも参りますね。

泉二:

ありがとうございます、本当に嬉しいです。お客様も喜ばれます。どうぞよろしくお願い致します。

[対談日:2006/10/18 筆:續久仁子]