植田いつ子さんに聴く「着物賛歌」|活動レポート

植田いつ子さんに聴く「着物賛歌」|活動レポート

日本を代表するデザイナー植田いつ子さんをゲストに迎えての今回のもとじ倶楽部。詩人の高橋睦郎さんを聞き手に資生堂パーラー本店のサロンにて開催されました。

11月11日は、あいにくの雨模様となりましたが、植田いつ子さんと高橋睦郎さんのこの日の対談を楽しみに30名を超えるお客様にお集まり頂きました。

資生堂パーラー本店サロン
植田いつ子さんは、やわらかなドレープが美しい黒のシックなドレスで登場されました。光の角度によってきらきらと煌くドレスの黒の素材は華やかな上に上品で、衿元にさりげなく留めたブローチが更にエレガントさを増していらっしゃいました。

植田いつ子さんは、「作品が全てなので、(作品に対する)コメントは控えたい」という考えをお持ちですので、普段多くを語ることはありません。それゆえ、私達が先生の作品を目の当たりにした時に感じる美しさの秘密を伺ってみたいという願いは尽きないものです。そこを今回は、植田先生と親交深い高橋睦郎さんという強力なお力をお借りして、植田さんの心の世界を、植田さん自らの言葉で伺うことができました。

高橋さんは、植田いつ子さんがデザイナーを志すことになった原風景をお尋ねになり、お話をスタートさせました。戦前戦後の「色無き世界」、美しいものに飢えていた時代の飢餓感が出発点となったそうです。「美しいものを作りたい」「人のお役に立ちたい」という想いが「デザイナー植田いつ子」を誕生させるきっかけとなったのです。

高橋さんの軽快でユーモア溢れるお話の運びに、優しい表情で微笑んでいらっしゃる植田さんが印象的でした。そしてゆっくりと丁寧にお応えになられる植田さんの言葉には、穏やかな中に揺ぎ無い志が表れていらっしゃいました。独立するまでの桑原デザイン研究所、銀座レインボーでの貴重な経験と恩師への今もやまない尊敬と感謝。それは日本人の奥ゆかしさそのものでした。

植田さんは、「洋の外来文化をどうやって日本人に取り入れるか」「日本人女性が最も美しくあるためにはどうあるべきか」絶えず心においていらっしゃいます。それは、西洋、東洋の文化それぞれの本質をとらえ和の文化に融合すること、「形は精神の表れ」と称する植田さんの真っ直ぐな心に他ならないのです。

私達がきものを装う上で大切なメッセージも多く頂きました。色数を抑えた余韻を残したコーディネート、衿元を美しく、腰をきりりと締め重心を落とした着物の着こなし、装う場を心得、物を選ぶといった意思、ゆとりを持ったバランス感覚。「自分には、この色は似合わない。と最初から決め付けないでください。
植田いつ子さん

似合わないと思った色は、その(色の)分量がどのくらいだったか、どんなデザインだっだのかをもう一度考慮することです」。しなやかな心でおしゃれを楽しむことの大切さも教えて頂きました。
「服は着る人が生かすもの」どんなに美しい服であっても、服のみが目立つものは、装ったときに美しいとは必ずしもいえないとおっしゃいます。和服はそれが顕著に表れるものとも付け加えられました。着こなし方、佇まい、雰囲気、しぐさといった最後の仕上げが、調和のとれた美しい装いとなるのだそうです。「内面の美しさ」それは、日本の文化の礎かもしれません。

日本人の自然観、そこに見出す色彩感覚は、日本人の大切にしてきた「抑制の美学」が根底にあったとおっしゃいます。主張することだけでは得られない、シンプルで抑えた内面の美しさが装いにも反映してくる。装いは心を包み込むものという植田さんの昔からの思いにも映し出される言葉です。

どんなに忙しい中にあっても、ほんのわずかな時間をみつけては、美術館、音楽会、展示会など、興味のある全てのものに幅広く足を運ぶという植田さん。それは、今もなお変わらない「美しいものをつくりたい」という植田さんの情熱にほかならないように感じました。

予定された時間を越えて対談は終了しました。ご参加頂いたお客様から、「日本女性として、エレガントな衣の装い方というものをこれほどまでに考えさせられたことはありません」とのご感想を頂きました。この言葉が全てを物語るように、植田さんの生き方、美しいものへのこだわり、そして美しく装うことへの心に触れる素敵な会となりました。最後になりましたが、聞き手をつとめてくださった高橋先生に深く御礼申し上げます。

資生堂パーラー本店サロン

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