織楽浅野・浅野裕尚氏~秘蔵コレクションとともに~|活動レポート

織楽浅野・浅野裕尚氏~秘蔵コレクションとともに~|活動レポート

「織を楽しむこころ」をものづくりの原点とする京都西陣の機屋「織楽浅野」。
今回のもとじ倶楽部は、代表の浅野裕尚さんに、織楽浅野の秘蔵コレクションとともに、 日本の染色・織物文化、また織楽浅野のものづくり精神についてお話しいただきました。

まずはじめに取り出されたのは、ペーズリー柄の3枚の布です。同じ布でも趣が異なるのは、200年前、100年前、40年前と違う時代に創られたものだから。インドで製織された200年前のものには当時の人々の、いいものを創りたい、というひたむきな仕事でしか創りえない生命力が込められている。一方、100年前のものはイギリスで製織され、それはインドで作られた現物を見た上で、できる力の中で 似たものを作るという姿勢により色数や柄のボリュームも少なくなる。さらに40年前のものは、イギリスで 製織されましたが、現物を見るのではなくペーズリーをひとつのデザインとして認識し、古いものを真似るのだからとそこへ古色性をこめている、と浅野さん。

しかし実際の3枚の布は、200年前に作られたものが一番鮮やかで、感覚に新しく、魅力的に見えました。浅野さんが伝えたかったのは、素敵なものの外面のコピーではなく、本物をつくりたいという想いです。200年後にもいいと感じてもらえるもの。“時を越える”美しさが重要であり、長く余韻が残る楽しみがものづくりのベースとなっていると言います。
秘蔵コレクション.1
織楽浅野・浅野裕尚 秘蔵コレクション.2
次に皆様に配られていた和紙を取り上げられました。雁皮、楮、三椏、そして洋紙があわせられたものです。今となっては生成りといわれる色ですが、日本の和紙の色名ではこれを「白」というとのこと。織楽浅野の「白」はこの和紙でいう「白」であり、現代の真っ白ではないのだそうです。 黒もまた、真っ黒ではありません。その対比によって生成りがかった白がより白く見えるように演出するために、明るさのある黒を用いています。また、糸は撚りを多くかけることによって強くなりますが、ねじれによって影もできるとのこと。そう言って配られた白と黒の糸の束は、なるほど、同じ色なのにねじりや太さによって色や艶、またやわらかさも全然違うのです。

限られた色の中で奥行きを表現する。今の織楽浅野がある根本となった大きな出会いは、12年前に読んだ谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」だったとのこと。「光と闇があやなす陰翳の微妙な濃淡を無限の色彩と捉える。美しさはものにあるのではなく、ものとものとが互いに生み出すあやにある。」この精神に出会い、自分のものづくりの軸ができ、ぶれなくなったそうです。

さらなる浅野さんの原点はお母様のきものとのこと。先代のお父様が創られた数十年前のきもの、またそれを着こなせたお母様。 会場に飾られた秘蔵コレクションとも呼べるきものたちは、水玉、格子、また斬新な黄緑など、今見ても新しい感覚に映るものばかりでした。
織楽浅野・浅野裕尚 秘蔵コレクション.3

それに刺激を受け、現在創られている作品も、モダンの一言で片付けられるものではありません。チェックやストライプではなく、あくまでも 格子、縞、という日本の情緒を残すことを大切にしたい。また、そのもの一つが主張するのではなく「ものとものとのあや」、帯と着物、また小物を合わせて1+1=3にも4にもなるものを創りたい。こだわりを語られる姿にぶれはなく、強く信じている、心の奥底にある感覚があふれだすように伝わりました。

今回の展示会の名ともなっている「不易 BASIC」、 浅野さんはこの「BASIC」に、beautiful,artistic,style,intelligence, creativeと当てています。それをあわせもつものが織楽浅野にとっての「不易」であると。 変るべきものが何であり、変るべからざるものは何か。200年後にもお洒落に見えるものを創りたい。流行に流されず、それだけのものを創るには、自分にどれだけの先見性が必要とされるのか。

織楽浅野・浅野裕尚 秘蔵コレクション.4
強い意志を持って、知的であり、創造性をあわせもつ。そして美しく芸術的な自分自身のスタイルを求める。織楽浅野が提案する、時を越えるスタイルが100年後どう受け入れられるのか、見届けたいと感じた方は少なくないことでしょう。

会場に飾られたきものを包むのに、200年前のペーズリーの生地を惜しげもなく使ってしまう浅野さん。その個性的な感性が織楽浅野のおもしろさを生み出しているのだと、大変納得させられました。長時間にわたり熱心にお話くださった浅野裕尚さんに心より感謝申し上げます。