京都・西陣~銀座もとじオリジナル風通お召~工房見学レポート

2011年秋、【銀座もとじ 男のきもの】では、極上の糸、精緻でモダンなデザイン、絶妙なニュアンスカラーにこだわったオリジナルの風通お召着尺を制作しました。
2011年8月、その制作工程を拝見するため、京都・西陣を訪れました。制作をお願いしたのは、1720(享保5)年創業、京都の機屋・矢代仁です。昨年2010年に創業290周年を迎えられた老舗の機屋さんです。今回【銀座もとじオリジナル】の風通お召を実際に制作くださったのは、矢代仁と“トラスト制度”を交わしている機屋さんのひとつ、真下織物。 “トラスト制度”とは、「外に商品を出さない」「技術を秘蔵にする」などの約束を交わしている制度のことです。
銀座もとじオリジナル 風通お召
銀座もとじオリジナル 風通お召

真下織物は“秘蔵”のお召技術を持った西陣の機屋。その“門外不出”の技術があふれる大切な機場を今回、拝見させていただくことができました。

制作をお願いした「風通お召」って何?

さらりとしてハリのある質感と品の良い柄行きが、男性、女性ともに絶えず人気のお召素材。 名前の由来は「徳川11代将軍家斉が好んだから」というのはご存知の方も多いかもしれません。 でもこのお召素材、「縞お召」「紋お召」「上代お召」そして「風通お召」など、以外と名前が多くてその違いがわかりにくいもの。そこで極簡単にすっきりまとめてみますと、

■「縞お召」…その名の通り、2色以上の経糸で縞柄を織り出したもの。
■「紋お召」…基本的に1色で、紋意匠が織り出されたもの。
■「上代お召」…緯糸にお召緯と紬糸の2種を使い織り出したもの。(表面に紬の節糸が出ています)
■「絣お召」…絣糸で柄を織り出したもの。
■「縫い取りお召」…柄行の部分を金銀糸や色糸で刺繍のように織り上げたもの。

※経糸…縦糸のこと。「たていと」と読みます。
※緯糸…横糸のこと。「ぬきいと」と読みます。

と、名前はたくさんですが、内容の違いは意外と簡単です。

でも今回制作をお願いした「風通お召」は、、、ちょっと難しいのですが、

■「風通お召」…経糸・緯糸とも表・裏で異なった色糸を使い、風通織りという特殊な二重組織で織ったもの

とちょっと複雑です。でも機屋で聞いたご説明はとてもわかりやすく簡単でした。

銀座もとじオリジナル 風通お召
銀座もとじオリジナル 風通お召
「風通お召」
機にかかっている糸でイメージすると、経糸が上下に分けられてピンと張られているところを、 【地緯(じぬき)】と呼ばれるベースとなる緯糸が、経糸の上辺の孤をぐるりと渡り→下辺の孤をぐるりと渡り、 つまり、生地巾いっぱいにぐるぐると大きな円を描くように糸が渡りながら生地が織りあげられていきます。 そうすると生地が袋状になるイメージ、わかりますでしょうか?(端口を縫い閉じていない袋帯のイメージです)。

ここに実際は【絵緯(えぬき)】と呼ばれる、柄行きを作るための色糸の緯糸を一緒に加えて織るのですが、 この【絵緯】が、袋状の生地の上下の糸をつなぎ合わせることで一枚の布になります。

地となる糸たちだけで織り上げると、袋状になるだけで、一枚の布にならない、という不思議な組織。
⇒このため、袋状の中を“風が通る組織”であることから「風通」と呼ばれます。

「お召」、そして「風通お召」の特長は?

小紋と紬の中間のような素材と言われる「お召」。そう聞くとなんだか難しそうですが、 実はとても頼りになり、しかも“スマート”に見えるきものなんです。 見た目にも手触りも上品な素材感は、カジュアルにもきちんとした印象にも着こなせる、着るシーンの幅広さも魅力です。

【お召のここが良い!】
シボの凹凸があるから…
【1】肌に張り付きすぎず、さらりとしている ⇒単衣にも人気の理由
【2】細かな柄行でも、陰影が出て、深みが出る
適度なハリがあるから…
【3】身体のラインが出にくく、スマートに見える

「風通お召」はさらに…
【4】袋状組織のため、空気を含む ⇒空気を含んだ生地ということは、軽い!
という特長もあります。

【銀座もとじオリジナル】の風通お召は何が“特別”なの?

新開発!“まるねり”の極細糸で織った「風通お召」⇒さらに軽く!細かく!やわらかく!

今回、【銀座もとじオリジナル】でお願いしたデザインはとても精緻な意匠。真下織物さんでも、 今までの糸では、これほどの細かな柄裄は作ることができず、とても悩まれたそう。 そこで新しく開発されたのが“まるねり”の糸。 “まるねり”とは、絹糸のすべてのセリシンを落としてしまう精錬方法のこと。

銀座もとじオリジナル風通お召
銀座もとじオリジナル風通お召

通常は“半ねり”と言って、セリシンは半分残したままの糸を使用するのですが、 すべて落としてしまうことで、糸がより細く、やわらかく、そして染料が入りやすくなるのです。
糸が細くなっても、反物の幅は変わらない。ということはつまり、同じ幅を作るのに 通常より多くの経糸が必要になります。
【銀座もとじオリジナル】のお召には一般のお召の約2倍となる、8000本の経糸が使用されています!

特別仕上げの極細の最上質の糸だから・・・
【1】細い糸がたくさん織り込まれる = 丈夫!
【2】細い糸で袋状の風通織 = 軽い!
【3】細い糸の撚り合わせ = シワになりにくい!
【4】細い糸で表現する = 精緻なデザインができる!

精緻な柄行きが実現、そして滑らかな風合い、さらには空気がより含まれて軽い着心地がお楽しみいただけます。
銀座もとじの自信作!ぜひお楽しみください。

真下織物の工房の様子
真下織物の工房の様子

(文/写真:伊崎智子)

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